VOGUE CHANGEでは2020年3月のローンチ以来、記事制作の参考にするため、環境問題や働き方、性暴力など、毎月テーマを変えて読者アンケートを行っている。毎回、数千人を超える参加者があり、回答から浮かび上がるオーディエンスの課題意識の高さに勇気づけられるとともに、寄せられた意見から、新たな気づきや重要な視点、学びを得ている。この場を借りて、貴重な時間を割いてアンケートに回答し、パーソナルな声を寄せてくれたオーディエンスのみなさんに、心からお礼申し上げたい。そして、このプロジェクトから得たインサイトをより多くの人にシェアし、社会課題を可視化したいという想いから、今後、定期的にレポートとして発表していくことにする。
レポート初回のテーマは、ジェンダーとセクシュアリティ。世界のプライド月間に合わせて5月と6月にかけて行ったアンケートでは、合計8000人を超える読者の声が集まった。しかし日本では、世論の高まりに反してLGBT法案の国会提出が見送られ、最高裁での夫婦別姓訴訟で原告が敗訴、ソーシャルメディア上では、激しいプッシュバックに苛立ちと反発の声が多く上がっている。2020年12月に実施したVOGUE CHANGEの別のアンケートでは、選択的夫婦別姓の導入に対しては93%以上(4146人中3867人)、また同性婚の合法化には約96%(4146人中3981人)が賛成している。
まず、最初の質問である「日本にジェンダー差別があると思いますか」という質問に対して、参加者の96%が「あると思う」と回答。続く「どんな場面でそのジェンダー差別があると思いますか」という問い(複数回答可)には、過半数が職場、広告・メディアの表現、制服やドレスコード、教育現場(教科書、授業内容、受験システムなど)を選択。加えて自由回答の中でもっとも多かったのが「家庭」(17%)であり、そこには「育児や介護などのケアワークに対する根強い性別役割分業意識がある」ことや「夫婦別姓の選択肢がない」ことが加えられた。その他、「職場での賃金格差や雇用形態、昇進機会」「婚姻制度」「女性に対するルッキズムやエイジズム」が続き、多くが日常生活のあらゆるシーンで深刻なジェンダー差別を感じながら生きている実態が明らかになった。
また82%が、性的指向・性自認について、職場や学校は安心してカミングアウトできる環境だと「思わない」とし、「偏見や差別がある」「好奇の目に晒される」「保守的/閉塞的」であることがその最たる理由に挙げられた。さらに、「少数派の人間に対して、多数派に合わせるべきという同調圧力が強い」「本来であれば自分の性的指向や性自認は個人の問題だが、それを他者に打ち明けることで、間違った認識を持つ人の攻撃の材料となりうる」という指摘や懸念が多く上がった。一方で、「外資系企業で働いており、多様性を受け入れるオープンな風土ができている」「職場にLGBTQ+のロールモデルがいる」との理由から、「思う」を選んだのは2割弱。日本企業や学校等の組織において、インクルーシブな文化形成と環境整備が喫緊の課題であることがわかった。
こうした課題意識のもと、「ジェンダー差別解消に取り組んでいる企業や組織、商品に好感を持ちますか」という質問に対しては90%が「はい」と答えた。さらに、「ジェンダー差別解消のために個人で取り組んでいること」として、2割以上が先に挙げたような企業の商品を積極的に選んでいるほか、半数以上がジェンダー差別やマイクロアグレッションを生まないよう「言葉遣い(職業の呼び方含む)に気を付けている」と回答。その他、「自分に内在するアンコンシャスバイアスを自覚する」「固定観念や先入観で人を決めつけない」「書籍やメディアなどで学ぶ」「友人や家族などと会話する」など、日々の生活の中で差別解消のためのさまざまな具体的アクションや工夫を心がけている人が多いことに励まされる。
ジェンダーレスをコンセプトに掲げるコスメやファッション、ランジェリーなどの選択肢の増加を象徴するように、世の中の「ジェンダーレス化の動きに賛成ですか」という問いに対しては回答者の93%が賛成の意向を示した。その理由として、「そうなることで誰もが生きやすくなる」「性別にかかわらず個人として尊重される社会にするために必要」「ジェンダーで区別する必要性も合理性もない」といった意見が多く寄せられた。
一方で、「ジェンダーにもとづく区別や差別には反対だが、行き過ぎたジェンダーレス化には違和感を覚える」という声も。また、「生物学的な男女の違いをどう捉えるべきか」という点を指摘する読者も少なくなかったが、「ジェンダーではなく個々の身体的差異を十分に考慮すべき」という見解もあった。今後、VOGUE CHANGEとしても、身体とジェンダーについてはさらに議論を深めていきたい。
Text: Maya Nago