食欲の秋、と言いますが……私は毎年、秋になると無性にフレンチが食べたくなります。
9月に入った頃から少しずつ都内の星付きフレンチを食べ歩いていましたが、ついに先日「珠玉のフレンチを食べるためだけに」京都に行ってまいりました!
リッツ・パリで副料理長を務めた、浅野哲也シェフの手で
10月1日から「HOTEL THE MITSUI KYOTO」のシグネチャーレストラン「都季(TOKI)」がリニューアル。
「都季」の料理長を務めるのは、かのリッツ・パリで日本人初の統括副料理長を務めたというキャリアを持つ浅野哲也さん。そしてリニューアルのコンセプトは、浅野さんによる「フォン(出汁)」だそう。京都ならではの軟水で作るフォンを中心に、京都ならではの豊かな食材を主役にしたフレンチとはいかに……? もう、いてもたってもいられず10月に入るなりすぐに京都へ向かいました。
シグネチャーとなる新コースのスタートは、京都の伏水のお白湯から。
このまろみと甘みのある軟水。この京都ならではのお水の個性こそが、このコースが生まれたきっかけであり、はじまりなのですね。(と同時に、浅野シェフが修行してきたパリの硬水とのあまりの違いに、きっとご苦労もあったのではと想像が膨らみます)
コースは野菜出汁、魚出汁、肉(鴨)出汁を感じるための3種のスナックからスタート。まさに「挨拶がわりに」、それぞれの出汁の個性がキラリと。
こちらは前菜の「鮭と西京味噌、いくら」。出汁のソースの存在感を、はじめの一皿で強烈に印象付けます。
続く「向井酒造の酒粕とフォアグラ」は、まさにこのコースのストーリーテリングの核となるもの。
シェフいわく「初めて向井酒造さんの酒粕を口にしたときまるでカカオのような風合いを感じて、カカオと相性のよいフォアグラであればきっと合うはず、とアイデアが浮かんだ」のだそう。
赤みを帯びた酒粕は、向井酒造の名酒「伊根満開」の酒粕。この酒粕を熟成させて生まれた「なれ」をソースに見立て、フォアグラとともに田楽風に。「伊根満開」は甘酒のようなにごり酒で、こちらとのペアリングも最高。
続く「丹波大黒本しめじ 蓮根」は、リッツ・パリの伝統のあのコンソメを思わせる風味豊かな味わい。
いかにもフレンチらしい、目にも楽しいお皿も続々。こちらの「伝助穴子 蕪 百合根」は昔から縁起物とされてきた「白くて丸いもの」にちなんだビジュアル。
お肉のメインは「七谷鴨 カシス 玉葱」。このエリアらしい王道の食材を、目の前で。ペアリングのワインもまた、王道のジュヴレシャンベルタンでした。
カシスのパウダーが鴨をバイカラーに。お味も2WAYです。最後までサプライズとウィットに富んだアイデアがたくさん!
そのユニークな発想はもちろんデザートにも。「鉋屑のブランマンジェ」は、檜の香り高い木屑からその香りを抽出して融合させたもの。
お皿のひとつひとつに真率なストーリーテリングがあり、京都とこの周辺のエリアの食材を大切に、そしてリスペクトしたいというシェフの想いが深く伝わってきたすばらしいコースでした。
「都季」のある「HOTEL THE MITSUI KYOTO」は2020年秋にオープンしたばかりのホテル。敷地内に湧き上がる天然温泉が楽しめるスパや二条城の真向かいという絶好のアクセスで知られる新名所ですが、今後はこのお料理を第一の目的に訪れる人も多くなるはず。
カウンターの前が厨房。さらに窓の外にはお庭の水盤が。
私も、浅野シェフのお料理と京都の秋を感じに、この秋もう一度伺う予定です。
