2020年、一発目の映画鑑賞は『新感染半島 ファイナル・ステージ』、お正月からハマったのはNetflixドラマ「Sweet Home -俺と世界の絶望-」と、“韓国ゾンビ”にどっぷり浸って開始した新年。
『新感染 ファイナル・ステージ』は、韓国のゾンビブームの火付け役の『新感染 ファイナル・エクスプレス』(2016)の続編だが、列車という限られた空間での緊迫感や人間の愛情の織り交ぜ方が非常に秀逸だった『新感染〜』に対して、最新作『新感染半島〜』は、カーチェイスあり格闘ありで、ゾンビと「マッドマックス」を掛け合わせたようなもの。ここ10年のゾンビの根源になっている「ウォーキング・デッド」(2010〜)を彷彿とする“森の中でバイバイ”や“隔離中に誰かがゾンビ化! ”など、既視感ある描写も。とにかくその掛け合わせを含め、ド派手だ。ちなみに、ゾンビの走るスピードも格段に上がっていた(怖い)。
「Sweet Home -俺と世界の絶望-」に関しても新しい仕掛けが満載だ。グリーンホームというマンションで繰り広げられるパンデミック劇なのだが、まず、ゾンビになるまでの過程が“噛まれる”だけじゃない点。厳密に言えば、シーズン1だけではまだ解明されていない。さらに、ゾンビには、人間だった時の生前の願望が反映されるという斬新な設定。人間に危害を加えないケースもある。今作も『新感染半島〜』と同様にアクションシーンが目立ち、まるでゲームを観ているような感覚で、まったく眠くならない。
映画『ミスト』(2007)をオマージュしたようなシーンがあったり、ドラマ「あなたの番です」的な住民たちの謎解き要素があったりと、斬新な掛け算の元に新しいゾンビ像を華麗に描いている。とある人物のゾンビとの体内共存を見て、話題の「呪術廻戦」を思い出す人も多いはずだ。
映画『#生きている』(2020)もマンション内で繰り広げられるという点で、「Sweet Home〜」とシチュエーションは同じだ。タイトルのハッシュタグが示すように、今作はスマホやWiFiの有無、ドローンといった現代性が“ゾンビ”と深く関わっており、そこが新しい。当たり前になったツールが使えなくなった時の恐怖も伝わってくる。Netflixドラマ「キングダム」(シーズン1 2019、シーズン2 2020)は韓国時代劇にゾンビを大胆に当て込んだ、これまた派手なシリーズ。時代設定もよくわからないし、権力争いに疫病としての“ゾンビ”を組み合わせた展開が非常に面白い。
ヒョンビン主演の映画『王宮の夜鬼』(2018)も時代劇×ゾンビの掛け合わせで話題となったし、映画『感染家族』(2019)は極貧の家族がゾンビで商売をするというコメディで、今作はスマッシュヒットとなっている。
こうして挙げてみると、韓国のゾンビエンタメ“Kゾンビ”には、組み合わせの妙がある。「ウォーキング・デッド」シリーズのヒットでソンビに着手したのだとは思うが、火付け役の『新感染〜』の列車といい、シチュエーションや時代設定に奇想天外なものをぶつけるのが本当に上手い。“噛まれたら感染してゾンビになる”という“型”があるからこそ、“型破り”なものが誕生しているのだ。
単純なエンターテインメントとして楽しめることと別に、この“ゾンビ”がコロナ禍において、共感を生む要素が多いという事実があることも忘れてはならない。昨年9月、ようやく現実と向き合い始めた頃にNetflixで配信が始まった前出の『#生きている』は、全世界35カ国で1位を記録したが、これも得体の知れぬ恐怖感とシンクロしたからに違いない。さらに、日常が急変する様やゾンビにならないために外出できないという状況は、まさにウィズ・コロナ時代そのもの。
ゾンビエンタメの源流とも言われる、「ウォーキング・デッド」は世界観が大規模になりすぎてもはや現実味が無いが、このシリーズを経て誕生したここ数年のゾンビエンタメには日常とリンクするリアルさが詰まっている。だから、怖い。
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1月スタートのテレビドラマ「世界と君が終わる日に」にも、そのエッセンスが詰まっている。噛まれた人間が隔離されたり、不当な扱いを受けるシーンはコロナが始まった頃の世界の状況を思い出し、中条あやみ演じる医師のたまごが懸命に人を救う姿を見ると、今もこうして医療従者の方々がコロナウイルスと戦ってくださっている事実を意識させられた(第2話まで鑑賞)。今作に関しては、そこに“恋”を串刺しにしているのが新しい。きちんと新しいゾンビ掛け算も合わせも忘れていない。
ステイホーム、感染、人とのつながり──さまざまな共感ポイントのあるゾンビエンタメ。今後はザック・スナイダー監督による映画『アーミー・オブ・ザ・デッド』がNetflixで配信予定だ。過去作から最新作まで、しばらく“#ゾンビデミック”は止まらなそうである。