ここ数シーズン、メンズコレクションはますます実験的になってきている。ハリー・スタイルズやリル・ナズ・Xといったスターたちのおかげで、ポップカルチャーにおいてジェンダーフルイドやクィアネスがトレンドトピックスになるとともに、ランウェイでもノンバイナリーやトランスのモデルたちが多くキャスティングされるように。デザイナーたちは、メンズウェアを再定義しているのだ。
スーツスタイルはアップデートされ、カジュアルなシャツやメッシュトップ、エアリーなセーターが主流に。また、クロップド丈トップやローライズパンツだけでなく、トップまたはパンツを纏わないルックまで登場。 "肌見せ "が来春のトレンドになることは間違いない。
ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)とプラダ(PRADA)は、子どものような無邪気さをアピール。前者は愚かさと遊び心に、後者は少年のようなプロポーションに焦点を当てた。またフェンディ(FENDI)やアリクス(ALYX)は、90年代のカリフォルニアキッズのようなクールさを表現するために、ジーンズはバギーに、ショートパンツはロングに仕上げている。加えて、ジャケットの上にジャケット、パンツの上にパンツを重ねるというテクも新鮮だった。
スポーティーなスタイルも健在だ。マーティン・ローズ(MARTINE ROSE)やエンポリオ アルマーニ(EMPORIO ARMANI)はトラックスーツを発表し、マリーン・セル(MARINE SERRE)はフィットネス系アイテムを多く打ち出した。バスケットボール選手のラッセル・ウェストブルックやカイル・クーズマといった人気アスリートたちがフロントローに座っていたことも特筆すべき点。“男らしさ”の新しい定義は、一部の人にフォーカスするのではなく、あらゆる人を巻き込んで進化しているのだ。
では、2023年春夏のトップトレンド10を紐解きながら、メンズウェアの具体的な新しい形を探っていこう。
1 懐かしき少年時代。
今の世の中、誰もが若い頃を懐かしんでいるようだ。ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON) は自転車のハンドルや壊れたスケートボードを服にあしらうという斬新なアプローチを。プラダ(PRADA)はギンガムチェックに懐かしい波の刺繍で三角ロゴをあしらった。他にもサカイ(SACAI)やポールスミス(PAUL SMITH)といったブランドでは、学校の制服を彷彿させるルックを発表。子どもたちの声に耳を傾けるだけでなく、子どもたちのように自身が着こなす時代が来たのだ。
2 スーツにはシャツを着ない、という選択。
フォーマルウェアの必需品、ネクタイは今シーズンのサプライズアクセのひとつだった。だが、決して父親の通勤着スタイルではない。エムエスジーエム(MSGM)のハーフパンツ丈の白スーツに合わせたダブル使いが、その好例だ。ケンゾー(KENZO)はソックスと同柄のボーダーをカジュアルにコーディネート。ドリス ヴァン ノッテンの、シャツと水玉ネクタイの上にタンクトップを重ねた技も見事だった。
4 90sスケーター的バギーデニム。
コロナ禍で自宅でのワークアウトが当たり前となったが、明らかにジムに戻るべき時が来たようだ。マーティン・ローズ(MARTINE ROZE)のトラックスーツやマリーン セル(MARINE SERRE)のボクシングパンツなど、もはや本格的なスポーツブランドのようなアイテムが多数登場。この春はアスリートになった気分で、本気のアスレジャーを楽しもう。
6 気分を一新するメッシュトップ。
ニットウェアで目立っていたのは、ハイゲージよりローゲージ。さらにイットアイテムに躍り出たのが、エアリーなメッシュニットだ。ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)はタンクトップと重ねてロックに昇華。一方のアクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)は、同じ白でもロマンティックな雰囲気に。上品ながらボタンを大胆に開けてセクシーさをほんのりと見せたのは、エルメス(HERMÈS)。
7 肌見せブームがメンズにも!
レディースの肌見せブームが、メンズ界にも本格的に到来。トップの丈はより短く、そしてボトムのウェストはより低くなった。それだけではない、もはや裸に近いスタイルまで多く打ち出されているのだ。トップを着ずにニットを斜め掛けしたディースクエアード(DSQUARED2)から、女性のようにブラやショーツを大胆に見せたトム ブラウン(THOM BROWNE)まで。まさに男らしさを問うルックが勢ぞろいしている。
8 新しさを紡ぐ、パッチワーク。
サステナビリティを意識したパッチワークは、ランウェイでもそれ以外でも、もはやベーシックアイテムになりつつある。最新ランウェイでもその傾向は強く見られた。例えば日本からは、コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)やヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)。アーカイブや残布を使用して新しく蘇らせたり、色柄を巧みに変えてエッジを効かせたりと、手法もさまざまだ。
9 同じアイテムをダブルで自在に重ねる。
秋冬に続き、デニムの勢いが止まらない。引き続きデニム・オン・デニムのコーディネートは人気だが、春夏はさらにリズムを感じるミックス系が台頭する様子。大きくダメージを施したり、大胆にカットオフしたりと、ワイルドな方向でトライして。
Photos: Gorunway.com Text: Jose Criales-Unzueta
From: VOGUE.COM