FASHION / TREND & STORY

2023年春夏メンズコレクション、トレンドTOP10──“男らしさの再定義”がメイントピックスに。

2023年春夏メンズコレクションのトレンドTOP10を発表。驚くほどの肌見せや、子ども時代を彷彿とさせるボーイッシュなルックなど、全体的にメンズウェアを再構築するような流れに。ジェンダーフルイドな装いとともに、現代の男らしさとは何かを改めて考えるコレクションとなった。
Image may contain Human Person Clothing Apparel Arshdeep Dosanjh Fashion Skin and Giacomo Ferrara

ここ数シーズン、メンズコレクションはますます実験的になってきている。ハリー・スタイルズリル・ナズ・Xといったスターたちのおかげで、ポップカルチャーにおいてジェンダーフルイドやクィアネスがトレンドトピックスになるとともに、ランウェイでもノンバイナリーやトランスのモデルたちが多くキャスティングされるように。デザイナーたちは、メンズウェアを再定義しているのだ。

スーツスタイルはアップデートされ、カジュアルなシャツやメッシュトップ、エアリーなセーターが主流に。また、クロップド丈トップやローライズパンツだけでなく、トップまたはパンツを纏わないルックまで登場。 "肌見せ "が来春のトレンドになることは間違いない。

ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)プラダPRADA)は、子どものような無邪気さをアピール。前者は愚かさと遊び心に、後者は少年のようなプロポーションに焦点を当てた。またフェンディFENDI)やアリクスALYX)は、90年代のカリフォルニアキッズのようなクールさを表現するために、ジーンズはバギーに、ショートパンツはロングに仕上げている。加えて、ジャケットの上にジャケット、パンツの上にパンツを重ねるというテクも新鮮だった。

スポーティーなスタイルも健在だ。マーティン・ローズMARTINE ROSE)やエンポリオ アルマーニEMPORIO ARMANI)はトラックスーツを発表し、マリーン・セルMARINE SERRE)はフィットネス系アイテムを多く打ち出した。バスケットボール選手のラッセル・ウェストブルックやカイル・クーズマといった人気アスリートたちがフロントローに座っていたことも特筆すべき点。“男らしさ”の新しい定義は、一部の人にフォーカスするのではなく、あらゆる人を巻き込んで進化しているのだ。

では、2023年春夏のトップトレンド10を紐解きながら、メンズウェアの具体的な新しい形を探っていこう。

1 懐かしき少年時代。

プラダ 2023年春夏メンズコレクション。

ポール・スミス  2023年春夏メンズコレクション。

J.W. アンダーソン 2023年春夏メンズコレクション。

今の世の中、誰もが若い頃を懐かしんでいるようだ。ジェイ ダブリュー アンダーソン(JW ANDERSON)自転車のハンドルや壊れたスケートボードを服にあしらうという斬新なアプローチを。プラダ(PRADA)はギンガムチェックに懐かしい波の刺繍で三角ロゴをあしらった。他にもサカイSACAI)やポールスミス(PAUL SMITH)といったブランドでは、学校の制服を彷彿させるルックを発表。子どもたちの声に耳を傾けるだけでなく、子どもたちのように自身が着こなす時代が来たのだ。

2 スーツにはシャツを着ない、という選択。

アルワリア 2023年春夏メンズコレクション。

ディオール  2023年春夏メンズコレクション。

 ヴェルサーチェ  2023年春夏メンズコレクション。

シーズン毎に、デザイナーはスーツを改革しようする。2022-23年秋冬は、肩の膨らみとウエストのくびれがトレンドだったが、次はシャツを脱ぐのがポイントのようだ。ヴェルサーチェVERSACE)やアルワリアAHLUWALIA)などを見るに、スーツ自体はリラックス感のあるゆったりとしたボクシーシルエットやダブルブレストジャケットが主流。インナーは何も着ないで、デコルテを見せよう。

3 脱クラシカルなネクタイ。

ケンゾー  2023年春夏メンズコレクション。

MSGM  2023年春夏メンズコレクション。

 ドリス ヴァン ノッテン  2023年春夏メンズコレクション。

フォーマルウェアの必需品、ネクタイは今シーズンのサプライズアクセのひとつだった。だが、決して父親の通勤着スタイルではない。エムエスジーエムMSGM)のハーフパンツ丈の白スーツに合わせたダブル使いが、その好例だ。ケンゾーKENZO)はソックスと同柄のボーダーをカジュアルにコーディネート。ドリス ヴァン ノッテンの、シャツと水玉ネクタイの上にタンクトップを重ねた技も見事だった。

4 90sスケーター的バギーデニム。

 ロエベ 2023年春夏メンズコレクション。

ルイ・ヴィトン  2023年春夏メンズコレクション。

アリクス  2023年春夏メンズコレクション。

ルイ・ヴィトンLOUIS VUITTON)やアリクス(ALYX)、ロエベLOEWE)など。多くのブランドがバギーデニムを打ち出した。どれもイメージは、90年代のカリフォルニアのスケーターキッズたち。キャップを目深に被り、トップはラフなTシャツニットを合わせて。このスケータースタイルの流れで、バミューダショーツやカーゴパンツも同様に流行の兆しだ。

5 本格アスリートのように。

ヴェトモン 2023年春夏メンズコレクション。

マーティン・ローズ  2023年春夏メンズコレクション。

マリーン セル  2023年春夏メンズコレクション。

コロナ禍で自宅でのワークアウトが当たり前となったが、明らかにジムに戻るべき時が来たようだ。マーティン・ローズ(MARTINE ROZE)のトラックスーツやマリーン セル(MARINE SERRE)のボクシングパンツなど、もはや本格的なスポーツブランドのようなアイテムが多数登場。この春はアスリートになった気分で、本気のアスレジャーを楽しもう。

6 気分を一新するメッシュトップ。

 ドルチェ&ガッバーナー  2023年春夏メンズコレクション。

アクネ ストゥディオズ 2023年春夏メンズコレクション。

エルメス 2023年春夏メンズコレクション。

ニットウェアで目立っていたのは、ハイゲージよりローゲージ。さらにイットアイテムに躍り出たのが、エアリーなメッシュニットだ。ドルチェ&ガッバーナ(DOLCE&GABBANA)はタンクトップと重ねてロックに昇華。一方のアクネ ストゥディオズ(ACNE STUDIOS)は、同じ白でもロマンティックな雰囲気に。上品ながらボタンを大胆に開けてセクシーさをほんのりと見せたのは、エルメスHERMÈS)。

7 肌見せブームがメンズにも!

ディースクエアード 2023年春夏メンズコレクション。

ウェールズ ボナー 2023年春夏メンズコレクション。

トム ブラウン 2023年春夏メンズコレクション。

レディースの肌見せブームが、メンズ界にも本格的に到来。トップの丈はより短く、そしてボトムのウェストはより低くなった。それだけではない、もはや裸に近いスタイルまで多く打ち出されているのだ。トップを着ずにニットを斜め掛けしたディースクエアードDSQUARED2)から、女性のようにブラやショーツを大胆に見せたトム ブラウンTHOM BROWNE)まで。まさに男らしさを問うルックが勢ぞろいしている。

8  新しさを紡ぐ、パッチワーク。

ヨウジヤマモト 2023年春夏メンズコレクション。

コム デ ギャルソン・オム プリュス 2023年春夏メンズコレクション。

キコ・コスタディノフ  2023年春夏メンズコレクション。

サステナビリティを意識したパッチワークは、ランウェイでもそれ以外でも、もはやベーシックアイテムになりつつある。最新ランウェイでもその傾向は強く見られた。例えば日本からは、コム デ ギャルソン・オム プリュス(COMME des GARÇONS HOMME PLUS)ヨウジヤマモト(YOHJI YAMAMOTO)。アーカイブや残布を使用して新しく蘇らせたり、色柄を巧みに変えてエッジを効かせたりと、手法もさまざまだ。

9 同じアイテムをダブルで自在に重ねる。

Y/プロジェクト  2023年春夏メンズコレクション。

ディオール  2023年春夏メンズコレクション。

エルメス  2023年春夏メンズコレクション。

ジャケットやパンツを迷う日は、誰にでもあるかもしれない。だが、もうその必要はない? Y/プロジェクトY/PROJECT)やディオールDIOR)などで、それぞれを2枚重ねたスタイリングを発表したからだ。ハーフレギンスの上からショートパンツを、アノラックの上からジャケットを。はたまた、スラックスに色違いのスラックをレイヤードするルックまで。自由な発想で重ね技を楽しみたい。

10 エッジを効かせたデニムの威力。

 プラダ 2023年春夏メンズコレクション。

ジバンシィ 2023年春夏メンズコレクション。

J.W.アンダーソン 2023年春夏メンズコレクション。

秋冬に続き、デニムの勢いが止まらない。引き続きデニム・オン・デニムのコーディネートは人気だが、春夏はさらにリズムを感じるミックス系が台頭する様子。大きくダメージを施したり、大胆にカットオフしたりと、ワイルドな方向でトライして。

Photos: Gorunway.com  Text:  Jose Criales-Unzueta 
From: VOGUE.COM