FASHION / TREND & STORY

2022年ベストヒットをプレイバック! 6人のエキスパートが、最も反響のあったトレンドを徹底解説

セルフリッジやマイテレサなど、世界各国のeコマース&百貨店のプロたちが、今年反響のあったアイテムとトレンドを振り返る。ヴァレンティノ(VALENTINO)のピンクアイテムから、ザ・ロウ(THE ROW)のバッグ「マルゴー」、ディーゼル(DIESEL)のデニムまで。2022年、多くの人々の心に響いたファッションの潮流とは?
2022年ベストヒットをプレイバック! 6人のエキスパートが、最も反響のあったトレンドを徹底解説

2022年のベストヒットとは? 世界中の小売業者6社の反応を見る限り、顕著だったのが外出する機会が増えたことによる、ドレスアップアイテムやハイヒールのトレンド復権だ。ジャンポール・ゴルチエ(JEAN PAUL GAULTIER)ミュグレー(MUGLER)ブルマリン(BLUMARINE)ヴィンテージグッチ(GUCCI)といった90年代のムードを放つアイテムに人気が集まる一方、プレイフルな視点で新風を巻き起こしたグレン・マーティンスによるディーゼル(DIESEL)のクリエイションも、多くの人々の心に響いたことだろう。

その他に特筆すべきトレンドを総括してみよう。カラーでまず思い浮かぶのは、ピエールパオロ・ピッチョーリによるヴァレンティノ(VALENTINO)のホットピンク(ピンク PP)。アイテムでは、ディーゼルのデニムルックや、フランス人デザイナーのギャエル・ドレヴェが手がけるNYブランド、ザ フランキー ショップ(THE FRANKIE SHOP)に代表されるオーバーサイズかつリラックスした、アンドロジナスなテーラリングも注目された。

思い切って投資するなら、強いスタイルのあるブランドを。マリア・グラツィア・キウリによるディオール(DIOR)か、はたまたリック オウエンス(RICK OWENS)か、もしくはアントニー・ヴァカレロによるサンローラン(SAINT LAURENT)のパワーショルダーも捨てがたい。これらに共通するのは、非日常と日常が共存しているということ。思いきりドレスアップして外に出ることと、家でゆっくり過ごすことが同等に大切であるということを物語っている。

スタイルの面では、ソーシャルメディアの影響は依然強く、まるでスマートフォンの画面をスワイプ&スクロールするような軽やかさで限界に挑戦したクリエイションも目立った。布の面積はより小さく、よりシアーに。これには、多くの人が自身の身体に自信を持つことの大切さに気づき始めたということが関係してる。キム・カーダシアンによるスキムズ(SKIMS)の成功が、その象徴だろう。かたや、ビルケンシュトック(BIRKENSTOCK)の「ボストン」のような、ロングセラーアイテムに再び注目が集まっているというのも、ソーシャルメディア世代ならではの傾向だ。昔から馴染み深い世代にとっては、久々に参加した同窓会でロマンスに花を咲かせるような感覚だろう。

では、世界各国では何が実際に売れたのだろうか?──eコマースと百貨店のプロたちに、2022年の流れを振り返ってもらった。

ティファニー・スー(Mytheresa ファッションバイイング・ディレクター)

サンローラン 2022-23年秋冬コレクションより。

Photo: Courtesy of Saint Laurent

ヴァレンティノ 2022-23年秋冬コレクションより。

Photo: Courtesy of Valentino

ロエベ 2022年春夏コレクションより。

Photo: Filippo Fior / Gorunway.com

今年好調だったのは、ミュグレーとジャンポール・ゴルチエのカプセルコレクション。どちらもスタイリングがとても強烈でした。この反響を受け、奇抜でセクシー、そしてアヴァンギャルドなファッションへの需要を見出しました。例えばそれは、ロエベ(LOEWE)の薔薇の花を象ったヒールであったり、リック・オウエンスのランウェイルックであったり。総じてシュールレアリスティックなデザインが高い注目を集めたといえるでしょう。

華やかなドレスは、2022年を通して人気を博しました。自粛ムードからの揺り戻しで、イベントやパーティー、ウェディングに出かけるようなスタイリングが復権したように感じます。ヴァレンティノのピンクのアイテムは、クリステン・マクメナミーが着用したステートメントルックなど、高価格帯のものを含め軒並みソールドアウト。盛夏には例年、セクシーなスタイルが主流になる傾向にありますが、今年は若手デザイナーだけでなくラグジュアリー市場全体で、より短い丈や、大胆にデコルテを見せたネックラインが人気でした。

購買パターンとして、セールの時期は例外として、新しいものにを求める傾向は常に見られます。ケンダル・ジェンナーヘイリー・ビーバーエルザ・ホスクなどがこぞって着用したボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)のゴールドのイヤリングが飛ぶように売れるのを見ると、依然ソーシャルメディアの影響が強いことも見逃せません。デュア・リパが着用したミュグレーのレギンス、そしてキム・カーダシアンが着用したジャンポール・ゴルチエのアーカイブも同様のことが言えるでしょう。

ヘリテージブランドのリバイバルにも引き続き注目しています。80年代であれ、90年代であれ、過去を“ディグる”カルチャーは若い世代の間で浸透しています。例えば、ヴィヴィアン・ウエストウッド(VIVIENNE WESTWOOD)。イヴニングウェアにはじまり、今ではデイウェアまで幅広く取り扱っています。アイコニックなコルセットをはじめ、彼女の伝説のクリエイションは今の若い世代にとっても魅力的に映るようです。

一方で、コートに関してはクラシカルなものがよく売れました。ザ・ロウ(THE ROW)のカシミアなどが好例です。サンローランのビッグショルダーもインパクトがありました。肌見せのトレンドとは逆説的ですが、隠しながらもステートメントを演出するルックに注目が集まっています。サンローランは、この数シーズン個人的なフェイバリットブランドです。

アクセサリーで注目は、ロゴベルト。中でもサンローランが売れ筋です。バッグでいえば、ここでもサンローランの「イカール」。ヘイリー・ビーバーやゾーイ・クラヴィッツが愛用したことも追い風となり、多くの人のウィッシュリストに入りました。バッグで注目は、断然トート。ザ・ロウの「マルゴー」は、4,000ドル(約528,000円)という高額にも関わらず、ベストセラーの地位を揺るぎないものにしました。この数シーズントレンドだったマイクロミニバッグから、より実用的なトートや、小ぶりであってもサンローランの「ジェイミー」のような実用性の高いクロスボディが人気を集めています。

ボッセ・マイヤー(Selfridges メンズ&レディースウェア・ディレクター )

アライア 2022年春夏コレクションより。

Photo: Courtesy of Alaïa

ジャックムス 2022-23年秋冬コレクションより。

Photo: Alessandro Lucioni / Gorunway.com

ルイ・ヴィトン 2022年リゾートコレクションより。

Photo: Filippo Fior / Gorunway

外に出かけるムードは、間違いなく戻ってきています。入荷しても即完してしまうデザイナーの筆頭といえば、ネンシ ドジョカ(NENSI DOJAKA)デヴィッド・コーマ(DAVID KOMA)。デヴィッドはベテランではあるものの、昨今のトレンドの影響もあり改めてそのクリエイションが注目されています。ケーシー・カドウォールダーによるミュグレーは、セルフリッジのセレクトに、セクシーなムードをもたらしてくれました。ピーター・ミュリエによるアライア(ALAÏA)は、何度入荷しても、その度に売り切れてしまうほどの人気ぶり。総じて、セクシーなドレスが今年の一番のヒットだと言えるでしょう。

その傍らで、ブラッド・ピットが共同経営するLAのユニセックスブランド、ゴッズ・トゥルー・カシミヤ(GOD'S TRUE CASHMIRE)をはじめとする、ラウンジウェアの人気も見逃せません。今年一気に注目が集まったブランドといえば、カサブランカ(CASABLANCA)でしょう。元々メンズで人気だったのですが、ウィメンズの取り扱いも開始し、売れ行きは好調です。カサブランカのポジティブなムードは、人生を謳歌したいという現代の女性の欲求に寄り添っています。依然としてシリアスな話題が多かった2022年。だからこそ、ファッションにジョイフルな要素を求める人が多かったのではないでしょうか。

大きな話題を集めたという意味では、グッチとアディダス(ADIDAS)のコラボレーション。ランウェイで登場したルック以外にも、様々なバリエーションで展開されたという点もセールスに大きく貢献していたと思います。ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)はコラボレーションをはじめ、絶えずトレンドを発信し続け、トレンドセッターとしての地位を揺るぎないものにしました。

ルイ・ヴィトンやエルメス(HERMÈS)といった、普遍的な価値を持ったインベストメントバッグもかつてないほどの人気です。それ以外にも、2022年は独創性溢れるバッグが豊作でした。中でもヒットだったのは、鮮烈なピンクのクリエイションで話題をさらったヴァレンティノ、そしてジャックムス(JACQUEMUS)。特にジャックムスは「バンビーノ」や「ビズゥ」など、アイコンのポテンシャルを秘めたタイプが目白押しです。

スキムズはセルフリッジにおいて、キーブランドのひとつ。その人気ぶりは、全くのネクストレベル。キム・カーダシアンが打ち出す、インクルーシブなメッセージはこれ以上なく明瞭で、その点が支持されているのでしょう。スイムウェアも同様に好調でした。一応、イギリスにもビーチはあるので(笑)。フンザ・ジー(HUNZA G)は、ワンサイズであるだけでなく、カーボンニュートラルを達成するなど、環境への配慮でも評価されています。90年代スタイルのリバイバルは、リアルタイムで経験していないジェンレーションZにとって非常に新鮮に映るのか、売り上げにも大きく結びついています。ジャンポール・ゴルチエは、Y/プロジェクト(Y/PROJECT)とコラボレーションした「ネイキッド」ドレスのヒットに加え、ヴィンテージも非常に反応が良かったですね。同じく、90年代のトム・フォード(TOM FORD)期のグッチのヴィンテージも非常に好評で完売を記録しました。

ブリジット・ヴィールズ(David Jones  ウィメンズウェア、フットウェア、アクセサリー部門ジェネラルマネージャー )

ジマーマン 2022-23年秋冬コレクションより。

Photo: Courtesy of Zimmermann

ディオール 2022-23年秋冬コレクションで登場した「ブック トート」。

Photo: Armando Grillo / Gorunway.com

ネンシ ドジョカ 2023年春夏コレクションより。

Isidore Montag / Gorunway.com

レジャーウェアにさよなら!めいっぱいドレスアップして、外に出かけよう!そんなムードが感じられた一年でした。パンデミック以前に購入したきり、着る機会に恵まれなかった箪笥の肥やしを引っ張り出してきたのでしょうか。いや、どうやらその限りではないようです。天候に恵まれたオーストラリアでは、メルボルンに行けば多種多様なレストランが軒を連ね、シドニーに行けば海岸がある。出かける機会や場所に応じて、ファッションを存分に謳歌している人が多く見受けられました。

オーストラリア発のブランド、ジマーマン(ZIMMERMANN)、アレメ(ALEMAIS)、カミラアンドマーク(CAMILLA AND MARC)の3ブランドは、全体の売り上げの45%を占めるほどで、中でも華やかな色づかいやプリントに人気が集中しています。長らく続いたフラットシューズのトレンドから一転、10cm以上のハイヒールが好調だったことは大きな驚きでした。特に人気はアクアズーラ(AQUAZZURA)、レネ カオヴィラ(RENE CAOVILLA)、マチ&マチ(MACH & MACH)。年間を通してサンダルが売れるのは、オーストラリアならではかもしれません。

バッグでは、ベネデッタ ブルッツィケス(BENEDETTA BRUZZICHES)などの華やかなクリスタルのものと、トートバッグが人気を二分している印象を受けました。全体を通して言えることは、セクシーなスタイルが戻ってきたということ。身体のラインに沿ったシルエットや、ディオン リー(DION LEE)に代表されるようなカットアウトディテール。シアーな素材使いも注目していて、今シーズンから取り扱いを始めたネンシ ドジョカも反響が大きかったです。

今一番ホットなブランドといえば、ディオールをおいて他にないでしょう。その人気ぶりといったら、驚異的の一言に尽きます。マリア・グラツィア・キウリが作り出す、フェミニンで、美しく、それでいてクールでもあり、カジュアルさも兼ね備えたコレクションは、まさに現代の女性が求める理想像。服だけでなく、アクセサリーも素晴らしく、アイコニックな「ブックトート」は、他の追随を許さないベストセラーです。もはや、ディオールの向かうところに敵なし、といったところでしょう。

若手デザイナーで注目は、オーバーサイズのテーラリングを得意とするザ フランキー ショップ。パリのマレ地区に構えるショップに初めて訪れたのは3年前。当時はほんの小さなスペースだったのですが、今やストリートを席巻する勢いです。このブランドの魅力は、なんと言っても合わせやすさ。どんなスタイルに合わせても、エフォートレスなムードを演出してくれます。前述のアレメも、2020年デビューという若手ながら破竹の勢いです。彼女自身が非常に魅力的であると同時に、ハンドクラフトやローカルコミュニティを大切にし、デッドストックの素材を多く用いています。アレメの他にも、マトー(MATTEAU)やスカンラン セオドラ(SCANLAN THEODORE)、カーラ ザンパッティ(CARLA ZAMPATTI)、ビアパーク(BEARE PARK)など、オーストラリア発の素晴らしいブランドの数々からは目が離せません!

ジョセフ・タン(Holt Renfrew ファッション・ディレクター )

プラダ 2022-23年秋冬コレクションより。

Photo: Alessandro Lucioni / Gorunway.com

ヴァレンティノ 2022年春夏コレクションより。

Photo: Alessandro Viero / Gorunway.com

ディーゼル 2022-23年秋冬コレクションより。

Filippo Fior / Gorunway.com

グッチ、プラダ(PRADA)、ディオール、シャネル(CHANEL)といったキーブランドが売上を牽引したのは確かですが、その一方でライフスタイルの一環、言わば社交の一環としてショッピングするカスタマーが多く見受けられました。2022年の前半は、外出自粛などの規制があった時期もありましたが、自由に外出できるようになり、海外渡航も戻りつつある中で、オケージョンに合わせたドレスアップスタイルが重要視されるように。具体的には、ジマーマンや、ロエベの「パウラズ イビザ」コレクション、そしてプラダのクロシェットバッグがよく売れました。

大人数を招いたイベントが開催できない環境の中、誕生日などの小規模の集まりに合わせてドレスアップに投資する人が多かった印象です。特に人気だったのは、オスカー・デ・ラ・レンタ(OSCAR DE LA RENTA)。ドラマ「AND JUST LIKE THAT...(セックス・アンド・ザ・シティ新章)」に影響され、華やかにドレスアップするムードも戻ってきた。映画やエンターテインメントを通して、それまでブランドを発見する機会も増えた印象があります。

リモートワークが一般的になったことがきっかけとなり、仕事用のワードローブを見直す人も多かったように感じます。カジュアルな装いで過ごす時間が増える中で、仕事中に何を着るべきか。その答えの一つが、タンクトップです。特にプラダやロエベは、入荷してもすぐに売り切れてしまうほどの人気でした。

バッグで注目されたのは、トート。中でもジバンシィ(GIVENCHY)とヴァレンティノが人気でした。オンとオフが限りなくシームレスになった、現代のハイブリッドなライフスタイルに完璧にマッチしていたのでしょう。NY発のナゲディ(NAGHEDI)は、手に届きやすい価格も相まって安定した売れ行きをキープしており、ブロンズエイジ(A BRONZE AGE)のクロワッサン型のサテンバッグも好調でした。

着心地の良さは、デイリーワードローブの必須条件。スウェットパンツに代わりる新たなスタンダードとして、プリーツプリーズ イッセイ ミヤケ(PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE)のパンツが大ヒット。カジュアルで着心地がよく、それでいて洗練されて見える。同様の傾向として、シャツはオーバーサイズのものが好まれる傾向にありますね。

同じくワードローブエッセンシャルであるジーンズは、ストレートフィットが主流。ブランドで言えばエージー ジーンズ(AG JEANS)とフレイム(FRAME)が根強い人気です。あっと驚くようなランウェイでモードシーンを席巻したのは、間違いなくグレン・マーティンスによるディーゼル。彼は、ブランドのみならずデニム業界全体を活性化させました。ベーシックなアイテムだからこそ、いかにしてそこに新たな価値を見出し、再構築できるか。彼の動向からは目が離せません。

話題のスキムズも絶好調でした。初めは一部店舗での取り扱いだったのですが、あまりの売れ行きに、次から次へと取り扱い店舗を増やす結果に。入荷する度に完売し、絶えず問い合わせが入るほどの人気ぶりを見せつけました。

ソーシャルメディア、特にTikTokの影響力を見せつけられた一年でもありました。例えばビルケンシュトックの不朽の名作「ボストン」は、ソーシャルメディアでトレンドになったことで、ウェイティングリストが発生するほどの人気に。キム・ジョーンズによるディオールの2022-2023秋冬メンズコレクションで登場した、ビルケンシュトックのコラボシューズは、店頭に並ぶ前に予約分で完売してしまうほどの話題を呼びました。

ブリジット・シャルトラン (SSENSE ウィメンズウェア担当副社長)

ミュウミュウ 2022年春夏コレクションより。

Photo: Filippo Fior / Gorunway.com

リック・オウエンス 2022年春夏コレクションより。

Photo: Alessandro Lucioni / Gorunway.com

ブルマリン 2022年春夏コレクションより。

Photo: Alessandro Lucioni / Gorunway.com

2022年を総括して特筆すべきは、オフィススタイルの復活。リモートワークから、少しずつ対面での仕事が増えたことにより、高い品質、スタイル、そして着心地に良さを兼ね備えたワードローブに人気が集まりました。具体的には、トーテム(TOTEM)や、ザ・ロウ、そして韓国ブランドが高い支持を集めました。アイテムでよく売れたのは、テーラリング、特にブレザー。それ以外で好調だったのは、マリアム・ナッシアー・ザデー(MARYAM NASSIR ZADEH)ミニスカートやロングブーツが好調でした。若手デザイナーも引き続き注目を集めていて、ウクライナ出身のマーシャ・ポポヴァ(MASHA POPOVA)、ロンドンのミミ・ウェイド(MIMI WADE)、アゼルバイジャン出身のフィダン・ノブルゾバ(FIDAN NOVRUZOVA)が注目株です。

かねてから注目していた、ヘリテージブランドのリバイバルも、ここへきて本格的にブームになりつつあります。具体的にはジャンポール・ゴルチエ、アナ スイ(ANNA SUI)、ディーゼル、ブルマリン。同じく2022年に華々しいカムバックを遂げたのは、ヴィヴィアン・ウェストウッド。90年代のノスタルジーを薫らせるアイテムを着ることで、その背景にある歴史をもまとうことができる。若い世代の間で、ファッションの知識に重きを置く人が増えるのは素晴らしい傾向です。

とにかく売れるのは、リック オウエンス。エッセンスではある種“鉄板”のブランドです。リック オウエンスほど、ロイヤリティが高いファンを抱えるブランドはほかに考えられません。どこで着るのかわからないような前衛的なランウェイルックですら、オンラインに入荷したらすぐにオーダーが入る。予算という概念すら超越した、エモーショナル(情緒に訴えかける)ショッピングとでも言いましょうか。ミュウミュウ(MIU MIU)メゾン マルジェラ(MAISON MARGIELA)でも同様の傾向が見られました。これらを鑑みると、例年にないほどドレスがよく売れたことにも説明がつきます。

アクティブウェアの新潮流として注目しているのが、バレエコア。メゾン マルジェラやミュウミュウ(MIU MIU)のバレエシューズ、そしてローファーが好調でした。バッグで人気だったのは、ボッテガ ヴェネタのロングセラー「ジョディ」。新たに仲間入りした小ぶりな「ティーン ジョディ」が大ヒットを記録しました。

サム・ロバン(Nordstrom EVP/GMM アパレル&デザイナー )

アルチュザラ 2022年春夏コレクションより。

Photo: Filippo Fior / Gorunway.com

グッチ 2022年プレフォールコレクションより。

Photo: Courtesy of Gucci

クレージュ 2022年春夏コレクションより。

Photo: Courtesy of Courrèges

2022年のファッションを一言で表すとしたら、絶好調。シャネル、グッチ、ディオール、プラダ、サンローランといったラグジュアリーブランドは、いずれも大きく売り上げに貢献しました。また一方で、控えめかつラグジュアリーなスタイルも人気で、ブルネロ クチネリ(BRUNELLO CUCINELLI)やザ・ロウは衰え知らずの人気でした。

快適さとエレガンスを両立したスタイルという点では、非常に好評だったのはトーテムとイッセイ ミヤケ。アルチュザラ(ALTUZARRA)プロエンザ スクーラー(PROENZA SCHOULER)に代表されるような、ドレッシーでありながら、日常のシーンにも溶け込むようなワードローブの提案も今の時代にフィットしているように思います。ヴェロニカ・ベアード(VERONICA BEARD)、ヴィンス(VINCE)、グッドアメリカン(GOOD AMERICAN)も同様ですね。

ドレスアップするムードは確実に戻ってきていますが、ただ華やかなだけでなく、着心地の良さも重視するカスタマーが多いように感じました。例えばスキムズのストレッチ素材のドレスは、スタイリングによってカジュアルにも着まわせるという点でも評価が高い。堅苦しい伝統的なドレスコードを踏襲するのではなく、いかに自分らしくドレスアップできるかということが重要です。

新しく取り扱いをスタートした、ロロ・ピアーナ(LORO PIANA)とミュグレー、そして毎シーズン高い人気を集めるクレージュ(COURRÈGES)も非常に反響が大きかったです。ティーダブルピー(TWP)、ミャウ(MIAOU)、パロマ ウール(PALOMA WOOL)といった若手デザイナーも引き続き注目しています。

バッグで人気だったのは、マチ&マチに代表されるようなプリント、柄、そしてビジュー装飾。シューズでよく売れたのは、プリンセスライクなボウモチーフのもの。バレエシューズやローファーのトレンドも戻ってきました。ロロ・ピアーナのシューズは、オフィススタイルをグレードアップしてくれる、デイリーエッセンシャルとして人気を集めました。

ソーシャルメディアを参考に買い物をする人も引き続き多く、ポップスターのステージ衣装から、スポーツ選手の私服、メット・ガラ(MET GALA)をはじめとするレッドカーペットまで、セレブリティの影響力はかつてないほど大きく、それが購買意欲にも直接的に結びついているように感じました。

Text: Mark Holgate Adaptation: Shunsuke Okabe
From VOGUE.COM