FASHION / Editors

忘れられない、俳優としてのデヴィッド・ボウイというアーティスト。(Mihoko Iida)

2016年1月10日に69歳で亡くなったデヴィッド・ボウイは、音楽やファッションの世界はもちろん、映画でも圧倒的な存在感を表現し、私たちを魅了し続けました。そんな彼が演じた忘れらないキャラクターたちをここでご紹介させていただきます。

映画『バスキア』(1996年)では、アンディ・ウォーホルになりきった。

Photo: Best Image/AFLO

1980年代のニューヨークで、アンディ・ウォーホルに見初められて一躍有名になったアーティストのジャン=ミシェル・バスキアの伝記映画『バスキア』(1996年)。アンディ・ウォーホルという奇才を見事に演じきったのがデヴィッド・ボウイだった。白髪のカツラをかぶって、歩き方から喋り方まで、アンディそのもの。同作品には、(右から)デニス・ホッパーやゲイリー・オールドマンなど演技派俳優たちも出演。監督はジュリアン・シュナーベル。バスキア役にはジェフリー・ライト。

映画『ズーランダー』(2001年)では、本人役で出演。

Photo: Photofest/AFLO

2016年には続編『ズーランダー2』が公開される話題作だ。ベン・スティラーが監督、脚本、主演を務め、男性モデルとファッション業界を風刺したドタバタコメディ映画ではある。が、デヴィッド・ボウイが本人としてスクリーンに登場する瞬間、この映画は本当にスゴイかもしれない!とスケールの大きさを感じさせる。そんなボウイの大物スターとしての存在感がこの作品のレベルを上げた、と思う。

映画『ハンガー』(1983年)では元祖美少年ヴァンパイア役でカルト的人気に。

Photo: Everett Collection / AFLO

最近では『トワイライト』シリーズなどで、不老不死な美少年が実はヴァンパイアだった、みたいなストーリー展開は当たり前です。が、その「美少年」の度合いをぐんと引き上げたのがデヴィッド・ボウイが『ハンガー』で演じたヴァンパイアのジョン役なのでは?と私は勝手に思っています。この作品の主演はカトリーヌ・ドヌーヴ。他にもスーザン・サランドンが出演し、カトリーヌとスーザンのラブシーンも当時話題になりました。

映画『ジャスト・ア・ジゴロ』(1978年)でも美男子役を好演。

Photo: Photofest / AFLO

往年の大女優マレーネ・ディートリッヒの遺作となった『ジャスト・ア・ジゴロ』では、謎の美男子役でデヴィッド・ボウイが出演。1920年代のベルリンを舞台に、中年マダム(写真、女優のキム・ノヴァク)のジゴロとして生きるポール役を切なくもはかなく、演じている。1970年代から80年代にかけて欧米では女性が主導権を握る作品が主流だったので、デヴィッド・ボウイがかもし出す繊細で中性的な美男子像は、女性も男性も魅了した。監督はデイヴィッド・ヘミングス。

映画『ラビリンス/魔王の迷宮』(1986年)では魔王役に。

Photo: Moviestore Collection / AFLO

ジョージ・ルーカスが製作総指揮を務め、監督はマペット人形で有名なジム・ヘンソンによる壮大なファンタジー映画『ラビリンス/魔王の迷宮』。主演は当時のイット女優で後にアカデミー賞を受賞したジェニファー・コネリー。ジェニファーが演じた少女サラを「魔王の迷宮」に呼び込むのが魔王役を演じたデヴィッド・ボウイだ。特殊メイクや特撮など、当時の最先端技術を駆使して作られた作品は今見ても楽しめる。何よりも、デヴィッド・ボウイの魔王が本当に怖い!

「ツイン・ピークス」の映画版『ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間』(1992年)にも出演していたデヴィッド・ボウイ。

Photo: Visual Press Agency/AFLO

アメリカの人気ドラマ「ツイン・ピークス」の映画版にも出演していたデヴィッド・ボウイ。映画自体は日本以外では興行的にあまり成功しなかったようですが、いま改めて見てみると、当時のファッションはもとより、デヴィッドが演じる謎のエージェント、フィリップ・ジェフリーズが、ビジュアル的にも忘れられないキャラクターです。監督はデヴィッド・リンチ。主演はカイル・マクラクラン。アメリカで1990年から1991年まで放送された人気ドラマシリーズの前日談として映画化されたレアな作品です。

大島渚監督の名作『戦場のメリークリスマス』(1983年)のデヴィッド・ボウイは永遠です。

Photo: Everett Collection / AFLO

映画『戦場のメリークリスマス』の場面写真を探していたら、撮影現場で大島渚監督とデヴィッド・ボウイの素敵なツーショットがあったので、最後はこの写真で終わりたいと思います。名作『戦場のメリークリスマス』は、観る人によって解釈が違い、何度観ても新しい解釈が生まれるーーある意味、映画としては永遠の作品です。当時もボウイファンだった私は、この映画の日本公開初日に映画館に観に行き、その後、監督と出演者たちが参加したオールナイト討論も見た記憶が今も鮮明にあります。第二次世界大戦中に日本軍の捕虜として捕らわれた英軍将校役を演じているのがボウイ。坂本龍一や北野武も忘れられない役柄で出演しています。国境や性別を超えたところで、常に輝き続けるデヴィッド・ボウイという唯一無二のアーティストに出会えたことを、今改めて、幸せに思います。この作品をまだ観たことのない人は、ぜひ!ご覧くださいませ。

Mihoko Iida