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80年代カルチャーを知るために観るべき映画15選。(Mihoko Iida)

発売中の『VOGUE JAPAN』5月号で、アンディ・ウォーホルが創刊した米カルチャー誌『インタビュー』の元編集長で小説家でもあるクリストファー・ボレンに、「80sカルチャー」について伺いました。彼に「観るべき映画リスト」をお願いしたところ、この15本を推薦。80sを知らない人はもちろん、知っている人も楽しめる、永久保存のリストをここでご紹介します。

『フラッシュダンス』(1983)

Photo: Album/AFLO

ダンサーを夢見る少女アレックス(ジェニファー・ビールス)をまるでミュージックビデオのようにカメラが追う撮影手法も当時話題に。ダンスウェアとストリートウェアをミックスさせたファッションも一世を風靡。アイリーン・キャラが歌った主題歌「Flashdance...What A Feeling」も大ヒット。

監督:エイドリアン・ライン 出演:ジェニファー・ビールス、マイケル・ヌーリー

『ワーキング・ガール』(1988)

Photo: AFLO

ビッグヘアにビッグショルダーなスーツを着こなし、マンハッタンをスニーカーで闊歩する主人公テス(メラニー・グリフィス)の成功物語。主題歌はカーリー・サイモンが作詞作曲した「Let the River Run」。その年のアカデミー賞主題歌賞を受賞しました。

監督:マイク・ニコルス 出演:メラニー・グリフィス、ハリソン・フォード

『ウォール街』(1987)

Photo: Moviestore Collection/ AFLO

1980年代を象徴する映画のセリフの中には、こちらの『ウォール街』の主人公ゴードン・ゲッコ(マイケル・ダグラス)が発する「Greed is good (強欲は善だ)」というフレーズがあります。お金のためには何をやってもいいという考え方を美化してしまったのも残念ながらこの時代だ、とクリストファー・ボレンも指摘しています。

監督:オリバー・ストーン 出演:マイケル・ダグラス、チャーリー・シーン

『セント・エルモス・ファイアー』(1985)

Photo: AFLO

青春スターたちが大勢出演する青春映画がたくさん公開された1980年代。『セント・エルモス・ファイアー』は大学を卒業したばかりの若者たちが、社会の厳しさとどう向き合っていくかを描いている。ジョン・パーが歌った主題歌「セント・エルモス・ファイアー」も当時大ヒット。ちなみに、同曲を作曲したデヴィッド・フォスターはジジとベラ・ハディッドの継父だったことも。

監督:ジョエル・シューマッカー 出演:ロブ・ロウ、デミ・ムーア、エミリオ・エステベス

『卒業白書』(1983)

Photo: AFLO

トム・クルーズを大スターにした映画『卒業白書』。高校3年生の主人公ジョエル(トム・クルーズ)は、両親がいない間にとんでもない騒動を起こし、それを「ビジネス」にまでしてしまう......という物語。1980年代の「お金のためなら何でもアリ」という風潮はここにも表れていました。

監督:ポール・ブリックマン 出演:トム・クルーズ、レベッカ・デモーネイ

『アリス』(1990)

Photo: Photofest/ AFLO

ウディ・アレンのミューズだったころのミア・ファロー主演映画『アリス』。何不自由なく暮らす裕福な主婦アリスが、ひょんなことで魔法のようなハーブティーを飲んで、これまで見えなかったことがどんどん見えてきて人生を変えていくという不思議な物語。作品自体は90年の公開なので、80年代的な価値観がアリスを通じて変わりつつあることを示唆しているようにも見える、80年代版「不思議の国のアリス」です。

監督:ウディ・アレン 出演:ミア・ファロー、アレック・ボールドウィン

『マドンナのスーザンを探して』(1985)

Photo: Everett Collection/AFLO

歌手としては圧倒的ナンバーワンの存在であったマドンナにとっての初のメジャー映画出演。主演は平凡な主婦ロバータ(ロザンナ・アークエット)ですが、彼女が謎の女性スーザン(マドンナ)にオブセッションを感じ、スーザンを探し続けるという内容。ニューヨークを舞台に偶然とチャンスを探すというのは、無限の可能性を秘めた80年代ならではのテーマです。

出演:スーザン・シーデルマン 出演:マドンナ、ロザンナ・アークエット

『プリンス / パープル・レイン』(1984)

Photo: Photofest/AFLO

プリンス主演の映画で、伝説のサントラ盤「パープル・レイン」を世に送り出した作品。衣装をはじめ、ライブ映像や演出などは、あの時代ならではのパワーが。 映画の物語は、プリンスというアーティストの自伝的な内容であることも当時話題になりました。

監督:アルバート・マグノーリ 出演:プリンス、アポロニア・コテロ

『殺したい女』(1986)

Photo: Everett Collection/ AFLO

歌手であり女優でもあるベット・ミドラー主演の映画。 遺産相続をするつもりで結婚をした夫(ダニー・デヴィート)が妻(ベット・ミドラー)を消してもらおうと画策するなど、こちらも当時の「お金のためなら何でもアリ」的な考え方を、ドタバタコメディにしたためた作品。

監督:ジム・エイブラムズ、デヴィッド・ザッカー、ジェリー・ザッカー 出演:ベット・ミドラー、ダニー・デヴィート

『ワンダとダイヤと優しい奴ら』(1988)

Photo: Album/ AFLO

ダイヤモンド強盗を企てた詐欺集団の話だが、それぞれの物語が複雑に絡み合い、宝石の所在などをめぐってなかなか一筋縄ではいかない英米コメディ映画。主演はそのナイスボデイが武器の女詐欺師、ワンダ(ジェイミー・リー・カーティス)。お金に目がくらんだキャラクターたちの「その後」の描写も必見です。

監督:チャールズ・クライトン 出演:ジェイミー・リー・カーティス、ジョン・クリーズ

『大逆転』(1983)

Photo: Everett Collection/ AFLO

ひょんなことで、ホームレスな詐欺師(エディ・マーフィ)と会社経営者(ダン・エイクロイド)が入れ替わってしまうーーという物語。1980年代は、過度に金銭的価値や、社会的地位などがクローズアップされた時代だったので、もしもその立場が逆転してしまったら?という視点を風刺コメディで表現。ここにもジェイミー・リー・カーティスが出演しています。

監督:ジョン・ランディス 出演:エディ・マーフィ、ダン・エイクロイド

『ナインハーフ』(1986)

Photo: Everett Collection/AFLO

まるでミュージックビデオのような撮り方で、ニューヨークを舞台に男女の恋愛を9.5週間にわたって追う幻想的な作品。監督は映画『フラッシュダンス』と同じエイドリアン・ライン。離婚したばかりのエリザベス(キム・ベイシンガー)が、謎の男性ジョン(ミッキー・ローク)にどんどん惹かれていく。SMっぽいシーンなども当時話題に。

監督:エイドリアン・ライン 出演:キム・ベイシンガー、ミッキー・ローク

『レス・ザン・ゼロ』(1987)

Photo: Everett Collection/ AFLO

1980年代の若者カルチャーは、可能性に満ちたバブリーな輝き放っていた一方で、ドラッグによる影の部分もありました。なかでも、裕福で恵まれているはずの若者たちが退廃的な生活を送っていたことが小説や映画の中でよく描かれ、ブレット・イーストン・エリスのデビュー小説『レス・ザン・ゼロ』はそんなテーマを題材に。映画版はロバート・ダウニー・Jrなどが出演して話題になりました。

監督:マレク・カニエフスカ 出演:アンドリュー・マッカーシー、ロバート・ダウニー・Jr

『ニューヨークの奴隷たち』(1989)

Photo: Shuttershock/AFLO

映画スチールがないのが残念ですが、映画『ニューヨークの奴隷たち』は当時の文芸界の若手スターと呼ばれた作家タマ・ジャノウィッツ原作の映画化。そして映画の監督は意外にも『眺めのいい部屋』や『ハワーズ・エンド』などを手がけたジェームズ・アイヴォリー、そしてプロデューサーはイスマイル・マーチャントという、「アイヴォリー・マーチャント」コンビです。主人公のエレノア(写真、バーナデット・ピーターズ)は、ニューヨークで成功するためには考えられないほどひどい男性と付き合うなど、ある種の「奴隷」になっていることに気づくというストーリー。今思うと、同じようなテーマを扱った人気テレビドラマ「セックス・アンド・ザ・シティ」の1980年代版とも言えそうです。

監督:ジェームズ・アイヴォリー 出演:バーナデット・ピーターズ、クリス・サランドン

『メトロポリタン』(1990)

Photo: Shutterstock/ AFLO

こちらも映画スチールがないのが残念ですが、『メトロポリタン』は(写真の)ウィット・スティルマンが監督と脚本を手がけたインディーズ映画です。アメリカの上流社会の若者たちの人間関係を見事にとらえた伝説の作品は、お金がすべてとなりつつあった1980年代以降の新たな「階級社会」への警鐘を鳴らしていたのかもしれません。映画公開25周年には、ヴォーグと同じ会社が発行する『VANITY FAIR』誌が当時のオリジナルキャストを撮影したのも話題になりました。ちなみに、スティルマンの脚本はその年のアカデミー賞脚本賞にノミネートされました。

監督:ウィット・スティルマン 出演:クリス・エイマン、キャロリン・ファリーナ

Text: Mihoko Iida