
カール・ラガーフェルド──頻繁に内装を変えた男の、美しすぎる13軒の邸宅
アールデコから超モダンなスタイルまで、多彩なインテリアで知られるカール・ラガーフェルドの美しすぎる13の邸宅を収録した本、『Karl Lagerfeld: A Life in Houses(カール・ラガーフェルド:邸宅での生活)』が刊行された。「頻繁に内装を変えた 」男の、インテリアスタイルを探る。
ラガーフェルドの洗練された審美眼
「カール・ラガーフェルドは、自身のイメージ 以上に頻繁に家の内装を変えた」。パトリック・モリエスは新刊著書『Karl Lagerfeld: A Life in Houses(カール・ラガーフェルド:邸宅での生活)』の序文で、こう記している。 確かに、この新刊(テムズ&ハドソンより刊行)で紹介されているシャネルの元クリエイティブ・ディレクターだった故ラガーフェルドの13の邸宅は、1970年代のアールデコ調のパリのアパルトマン、1980年代のメンフィスデザインで統一されたモンテカルロの邸宅、ビアリッツにある控えめながらも豪華な週末の隠れ家など、その美的センスのふり幅が際立っている。ラガーフェルドは、ドン・ファンが征服を重ねるのと同じように、インテリアを収集していたのだ。
しかし、ラガーフェルドがインテリアデザインに精通していたこと以上に印象的なのは、コレクターとしての手腕だろう。数十年にわたり彼は絵画、家具、装飾品など、目を見張るような価値のある品々を収集してきた。パリのユニヴェルシット通りにある物件にはマン・レイのペンダントライトや、イタリアのモダニスト・デザイナーであるジョエ・コロンボのアームチェア「エルダ」が置かれていたが、これはコロンボの名がメジャーなる以前に購入している。本書の共著者であるマリー・カルトは、モリエスとともにこう述べている。
「ラガーフェルドはさまざまスタイルを試行するという領域を超え、比類なきコレクションを築きあげることを目指したのです」。そしてカルトは続ける。「彼は巨匠が手がけた絵画や、一流メーカーの印が刻まれた家具(ルイ10世時代の美しい曲線が特徴的なロココ様式と、ルイ16世時代の直線と均衡を重んじる新古典主義を組み合わせたスタイルを特に好んだ)、歴史的にも貴重なオブジェを収集し、たえずそれらを配置換えしていたのです」
一方、2008年10月号のVOGUEに掲載されたパリ左岸、ケ・ヴォルテールにある近未来的な隠れ家では、マーク・ニューソンによる「クロムチェア」やジャスパー・モリソンによる「3脚スツール」が際立っている(実際、本著に掲載されている写真の多くは、コンデナストのアーカイブに所蔵されており、VOGUEは34年以上にわたって計8回もラガーフェルドの物件を撮影している)。
本著は博学だったラガーフェルドの多岐に渡る才能を視覚的に証明するだけでなく、クリエイティブなマインドと知識がどのように結びついているのか、その相互関係を垣間見ることのできる魅力的な1冊でもあるのだ。
Text: ELISE TAYLOR Adaptation: Rieko Shibazaki
From VOGUE.COM