LIFESTYLE / CULTURE & LIFE

エリザベス女王の人生を編んだポップなドキュメンタリーほか、個人史を描いた秀作を厳選。【今月のプロ押し映画!|立田敦子】

壮絶すぎる物語ゆえに実写ではなくアニメ化され、今年のアカデミー賞で注目を浴びた話題作『FLEE フリー』や、エリザベス女王の人生を貴重なアーカイヴ映像で編んだ『エリザベス 女王陛下の微笑み』など。映画ジャーナリスト立田敦子が「時代に翻弄された個人史から学ぶこと」をテーマに3作品をチョイス。

『FLEE フリー』

ヨナス・ポヘール・ラスムセン監督/公開中 アフガニスタンで生まれたアミンの壮絶な半生を綴る。第94回アカデミー賞で国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞、長編アニメーション賞に同時ノミネートの快挙を達成。Photo: Final Cut for Real ApS, Sun Creature Studio, Vivement Lundi!, Mostfilm, Mer Film ARTE France, Copenhagen Film Fund, Ryot Films, Vice Studios, VPRO 2021 All rights reserved

今年のアカデミー賞で注目された『FLEE』は、あまりにも悲惨な描写ゆえに、実写ではなくアニメーションとして製作された異色のドキュメンタリーだ。アフガニスタンからロシアを経て、北欧へ渡るまでの壮絶な亡命の旅、同性愛への偏見に対する恐れなど、デンマークで研究者として生きる青年アミンが、恋人の男性にも打ち明けられなかった、20年以上胸に秘めた過酷な半生を語る。監督は自身も迫害から逃れるためロシアを離れたユダヤ系デンマーク人ヨナス・ポヘール・ラスムセン。

『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』

ドミニク・グラフ監督/公開中 ナチスの影が忍び寄る1931年のベルリン。作家を志すファビアンは、不穏な時代の中で行き場を失っていた。Photo: © Hanno Lentz / Lupa FilmPhotos:

『さよなら、ベルリン またはファビアンの選択について』は、『飛ぶ教室』などで知られるエーリヒ・ケストナーの小説の映画化。1931年のベルリンを舞台に、混迷する時代の中で自らの生き方を模索する青年の姿を描く。主演は『ある画家の数奇な運命』のトム・シリング。

『エリザベス 女王陛下の微笑み』

ロジャー・ミッシェル監督/公開中 25歳で英国君主の座に即位したエリザベス2世。その波乱に富んだ半生を、貴重なアーカイブ映像や証言とともにひもとく。Photo: ©Elizabeth Productions Limited 2021

『エリザベス 女王陛下の微笑み』は、在位70周年を迎えた英国のエリザベス2世を描いた初の本格的な長編ドキュメンタリー。監督は『ノッティングヒルの恋人』や『ゴヤの名画と優しい泥棒』などで知られる英国のロジャー・ミッシェル。従来のドキュメンタリー作法にとらわれず、アーカイブ映像を多用し、英国ロックをちりばめながら斬新で唯一無二の“ポートレイト”を完成させた。王室ファンならずとも必見!

Text: Atsuko Tatsuta Editor: Yaka Matsumoto