LIFESTYLE / CULTURE & LIFE

一人でも、二人でも。自立した女性の生き様を捉えた7作品。【美しき愛を描くロマンス作品 vol.6】

女優エマ・ワトソンの発言を機に、世界中に広まった「セルフ・パートナー(自分自身が恋人)」という概念。たとえ一人でいようとも、誰かと一緒であっても。自らを認め、愛して、己の足で凛と進みつづける姿に生きる勇気をもらえる作品たちをピックアップした。
一人で立ち上がろう。中途半端でも。

Photo: IFC Films/Courtesy Everett Collection/amanaimages

映画『フランシス・ハ』 ノア・バームバック監督(2012)

モダンダンサーを目指す27歳のフランシスは、親友とのルームシェアを優先し、恋人と別れた矢先に同居を解消され、人生を迷走中。友人たちは次々と身を固めているが、人生設計ができるほど器用じゃなく、夢みがちなフランシスはあてもなく走っては転んでを繰り返す。現実を受け入れ、中途半端な自分の足で歩き出せるまで。

好きのものにこそ福がある。

Photo: © KIM Cho-hee ALL RIGHTS RESERVED/ReallyLikeFilms

映画『チャンシルさんには福が多いね』 キム・チョヒ監督(2019)

長年支えてきた映画監督が急死し、40歳で失業したプロデューサーのチャンシルさん。気がつけば家もなく、恋人も子どももいない彼女が、ないものばかりに目を向けたら恋の予感がやってきた。けれど、ないものを見ていたって結局は孤独に取り込まれるだけ。本当に望むものの中にこそ福はあるのだ。

別れが導いてくれた自己愛。

アルバム『Brightest Blue』Ellie Goulding/Polydor UK Photo: Shinsuke Kojima

シングル「New Heights」 エリー・ゴールディング(2020)

ハスキーでありながら、透明感をたたえた特別な声の持ち主、エリー・ゴールディング。真夜中、一人の時間にそっと寄り添ってくれるようなこの曲では、「あなたといること」で満たされていると思っていた主人公が、本当に欲しいものは何者も介入しない愛、すなわち「自分自身への愛」だったと気づくまでをドラマティックに綴る。

自由とは、どんな時も人生楽しめること。

Photo: Shinsuke Kojima

小説『言い寄る』 田辺聖子著/講談社(2010 ※初版は1974)

女性が自立して生きていくことを真っ先に肯定してくれたのはこの作家ではないか。30代のフリーランスデザイナー、乃里子を主人公にした三部作は、もはや古典的バイブルと言ってもいい。イケメンでお坊ちゃんの剛と、渋い中年男の水野。二人の間で揺れる傑作恋愛小説。切なくて泣きたいときでも、人生は楽しめるということを教えてくれる。

レシピ本『自炊。何にしようか』 高山なおみ著/朝日新聞出版(2020)

料理のつくり方が載っているが、ただのレシピ本ではない。4年前、東京から神戸に引っ越して、ひとり暮らしを始めた著者のドキュメンタリーのようなこの本は、日常という手ごわくて愛おしいものといかに向き合うか、その秘訣が詰まっている。一人の食事が侘しくならないこと。人はいつでも新しく人生を始められる。自炊とはその極意でもある。

小説『わたしのいるところ』 ジュンパ・ラヒリ著、中嶋浩郎訳/新潮社(2019)

ローマと思しき街で暮らす一人の女性の日常が、46の短い章を積み重ねるように描かれていく。彼女は40代後半で大学の講師をしている。離れて暮らす両親との葛藤。かつて同棲していた恋人。とりとめのない想いが、彼女の現在地を照らし出す。失ったものも、彼女の今をつくっている。孤独とは、こうして自分は生きてきたということなのだ。

夫婦は共同経営責任者。

Photo: © TBS

ドラマ「逃げるは恥だが役に立つガンバレ人類!新春スペシャル!!」(2021)

雇用主と従業員という関係で契約結婚し、同居を始めたみくり(新垣結衣)と平匡(星野源)。価値観をすり合わせる中で愛情が芽生え、家庭の共同経営責任者として、夫婦の性別役割分業に縛られず、話し合いながら模索しようと決意した最終回から4年。二人のその後に出会える。

Text: Harumi Taki(Book), Tomoko Ogawa(Movie&Drama), Masami Yuki(Music) Editor: Airi Nakano