スタイルアイコンとしてのジャクリーン・ケネディのステータスを考えれば、彼女のまばゆいばかりのエンゲージメントリングが長年にわたって数多くの花嫁たちにインスピレーションを与えてきたことは驚くにあたらないだろう。フランスを代表するハイジュエラー、ヴァン クリーフ&アーペル(VAN CLEEF & ARPELS)による「トワ・エ・モワ」は、バゲットカットのエメラルドとダイヤモンドのバンドに、2.88カラットのダイヤモンドと2.84カラットのエメラルドを配したデザインだ。
トワ・エ・モワは、直訳すると「あなたと私」という意味。2つの宝石が並んで寄り添っているのが特徴で、最近ではアリアナ・グランデ、カイリー・ジェンナー、ミーガン・フォックスなどがこのロマンチックなデザインを身に着けており、今年の婚約指輪トレンドとして人気が急上昇している。しかし、この指輪の歴史は何世紀も前にさかのぼり、1796年にはナポレオン・ボナパルトがジョゼフィーヌ・ド・ボアルネにプロポーズした際に贈ったものともされている。
指輪を選んだのは義理の父、ジョセフ・ケネディ
1953年にケネディ元大統領との婚約が発表されたとき、ジャクリーンが指輪をしている写真がなかったというのはかなり異例なことだ。作家のジェイ・マルヴェイニーによると彼女は当時、記者団に「まだ持っていないんです。私たちは何十個も見てまわったのですが、好みじゃなかったり、これといったものが見つからなかった」と話したという。
結局、ニューヨークのヴァンクリーフ&アーペル5番街店で指輪を決めたのは、彼女の将来の義父となるジョセフ・ケネディだった。『ヴァニティ・フェア』誌のエドワード・クラインは、ジャクリーンと知り合いだった宝石商、ルイ・アーペルの妻エレーヌが今や有名な婚約指輪を選ぶのを手伝ったことを紹介している。
歴史上最も記憶されるブライダルリング
ジャクリーンはこのデザインに自分のアレンジを加えることもためらわなかった。彼女は結婚から10年近く経ってからこのリングをお直しし、バゲットダイヤモンドをより華美なマーキスカットダイヤモンドへとアップグレードしたのだ。これについてUK版『VOGUE」のジュエリーディレクター、レイチェル・ガラハンは、「彼女が世界の舞台で果たす自分の役割に対して、自信を深めていることを示すものでした」と述べている。
そして有名なのはこの「トワ・エ・モワ」のリングだけではない。後にギリシャの大富豪、アリストテレス・オナシスと婚約した際に贈られたハリー・ウィンストン(HARRY WINSTON)の「レソトIII」ダイヤモンドリングは40カラット。1996年にオークションにかけられ、260万ドルで落札された。一方、ジャクリーンの「スイミング・リング」は、義理の娘キャロリン・ベセット=ケネディのダイヤモンドとサファイアの婚約指輪に影響を与えたものだ。
それでも、ジャクリーンのエメラルドとダイヤモンドのエンゲージリングは、歴史上最も記憶されるもののひとつであることに変わりはない。「20世紀において、ジャクリーン・ケネディほどブライダルリングに影響を与えた女性はいないでしょう」とガラハンは言い切る。「彼女を永遠に定義する、クリーンでタイムレスなエレガンスを表現していますから」
Text: Emily Chan Adaptation: Motoko Fujita
From VOGUE.CO.UK