「私がジャズを愛しているのは、この音楽が本物だから」
1 第65回グラミー賞で新人賞を受賞したお気持ちは?
大スターばかりが集まるイベントで受賞できたというのは、今でも圧倒されるような思いです。
2 トロフィーの置き場所は?
まだ手もとにないんです。文字入れをしてから届くことになっているのですが、届いても自分の部屋には飾らない気がしています。
3 新人賞とジャズ・ヴォーカル・アルバム賞を受賞したことで人生に変化はありましたか?
多くの人が私を知ってくれるようになったことでしょうか。ただ、ステージ以外の場所で注目されることにはまだ慣れず、ちょっぴり息苦しいときもあります。
4 日本での初ライブはいかがでしたか?
日本のお客さんはものすごく温かくて気づかいがあり、気持ちよく音楽を感じてくれるので、特別な体験になりました。
5 あなたが感じるジャズの魅力とは?
アメリカ独自のアートをつくり上げたミュージシャンや、歴史に残る豊かな音楽表現を称えるというだけのものではありません。私がジャズを愛しているのは、この音楽が本物だから。このスタイルで歌うことで私は自由を感じ、自分の思いのたけを表現することができているんです。
6 パフォーマンスをする際に最も大切にしていることはなんですか?
ともにステージに上がっているミュージシャンたちとのつながりを大切にしています。
7 自分の歌声が他を圧倒していることに気がついたのはいつ?
わからない……。物心ついたときからずっと歌っていたので、あまり考えたことがありません。ただ、大学で本格的にジャズを学ぶようになってから、歌を仕事にしたいと思うようになったので、自分の声やスタイルを追求する必要があると感じたのは大学に入ってからです。
8 子ども時代の鮮明な思い出を一つ教えて。
毎週日曜日の朝に、弟とテレビのチャンネル争いをしていました。弟は「ドラゴンボール」や「ナルト」を観たがり、私はディズニーチャンネルを観たかったので、二人とも早起きをして、先にテレビの前に座ろうと競っていました。
9 生まれて初めて観たライブパフォーマンスは?
11歳のときに両親と観た、アレサ・フランクリンのライブです。
10 シンガーとして最も影響を受けた人は?
純粋に歌うことだけで言うなら、家族です。家族はみんなシンガーなので、学校へ行く車中では毎日、家族の誰かしらが歌うCDを聴いていました。
アリアナ・グランデやビヨンセの歌まねで、表現力を磨く
11 あなたが感じる音楽業界における最大の変化は?
誰もがSNSだと言うと思います。自分の作品を発表し、プロモートする場が身近になったことは素晴らしいですが、一方で毎日投稿を続けなければ、忘れられてしまうという焦りもある。本来、クリエイションには試行錯誤がつきものですが、世の流れから失敗は許されず、走り続けることを余儀なくされている人たちが大勢いる。成長を続ける音楽業界で、時間がないと焦る人たちを見るのは辛いです。
12 バスタイム中にも歌う?
はい。でもルームメイトがいるので、声量に気をつけています(笑)。
13 シンガーになっていなかったら、今頃何をしていた?
歌手のパーソナルアシスタントのような、音楽業界に近づけるような仕事を選んでいたと思います。あるいはバーテンダーかローラースケーターかな。
14 TikTokで披露しているアーティストたちの歌まねが最高です。最も得意なのは?
自分ではすごく下手だと思っているんですけど、まねをするのが好きなのはレイラ・ハサウェイとスティーヴィー・ワンダー。
15 ほかのアーティストたちの歌まねは、あなたのたぐいまれな表現力のトレーニングになっていますか?
なっていると思います。例えばアリアナ・グランデやビヨンセは、実際に歌ってみることで、聴いているだけでは気がつかない彼女たちの歌い方の違い、表現の違いなどがわかる。そのおかげで、自分のスタイルを理解し、見つけることができていると思います。
16 空欄を埋めてください。「〇〇がないと一日が始まらない」。
ジンジャー・ターメリック・ティー。
17 一番生産性の高い時間は?
早起きは大好きだけど、夜のほうが冴えるし……。昼過ぎから夜の間までと言っておきます。
18 これまでで一番思い出深い都市はどこ?
普通すぎるかもしれませんが、パリ。
19 旅に欠かせないマストアイテムは?
自分の思いや考えを書き出すのが好きなのでジャーナルと、ありとあらゆるガジェットの充電器は必須です。
夢への一歩は、「自分とは何か、そして本当に望んでいるものは何かを知ること」
20 まだ訪れたことのない国で、絶対に行ってみたい国は?
ナイジェリア。
21 声のケアのためにしていることは?
マイクなしで歌えることが大事だと思っているので、毎日欠かさずクラシック音楽で発声練習をしています。
22 最近いちばんうれしかった買い物は?
ドン・キホーテでミルクティー味のお菓子を買ったら、驚くほどおいしくて、一人で全部食べてしまいました。
23 日本滞在中に絶対にやりたいことは?
日本庭園を見たいです。
24 明日は何をする予定?
仕事ですが、休憩時間に街を歩けたらなと思っています。
25 歌以外で得意なことは?
料理。家にいるときはSNSなどをチェックして新作レシピを試しています。
26 苦手なことは?
計画を立てること。
27 最高の休日の過ごし方は?
NYの家族のもとでゆっくりすること。
28 夢を貫くために大切だと思うものは?
自分とは何か、そして本当に望んでいるものは何かを知ることです。もし自分に自信が持てなかったり、気持ちが揺らいでしまったときは鏡を見て、そこに映る人を信じ、愛してあげることが大事だと思います。
29 なくなったら生きていけない溺愛フードは?
カオニャオ・マムアン(もち米とマンゴーのココナッツミルクソースがけ)。
30 日本でおいしいものは食べましたか?
お寿司と焼肉を食べました。
31 甘党? それとも塩派?
甘党。
「宝物は、携帯電話」
32 好きな映画は?
ディズニーの『ヘラクレス』(1997)は物語も好きですが、それ以上にサウンドトラックが大好き。
33 ニューヨークでお気に入りの場所は?
家の近所にあるフォート・トライオン・パーク。敷地内にはメトロポリタン美術館の別館のクロイスターズがある公園です。
34 ダンスは上手?
誰も私が踊っているところを見たことがないので、人からの評価はわかりません(笑)。
35 ファッションにおけるモットーは?
自分の好きなものを着る。
36 あなたのことで、みんなが知らないことは?
実は5人兄弟で、私は下から2番目なんです。
37 あなたを3語で表すとしたら?
ユーモアがあってシャイで楽天的。
38 ステージ上では緊張する?
ようやく慣れて今は緊張しなくなりましたが、ステージ以外ではとても緊張します。
39 宝物は?
携帯電話。必要不可欠であることはもちろん、家族や友人と私をつなげてくれる大切なものだから。
40 あったらいいなと思う特殊能力は?
飛べたらいいなと思います。
過去に乗り越えた、最大のハードルは?
41 ソーシャル・グッドのためにしていることがあれば教えて。
ホームレスに食事を提供したり、健康や経済的な問題を抱えている人たちを支えるNY州の地元団体、また、仕事探しに苦労をしているミュージシャン仲間たちなどに、できる限りの寄付をしています。
42 挑戦したいと思いつつ、未だできていないことは?
ジェット・スキー。でも絶対に一生やらないとも思います(笑)。
43 さまざま楽曲でコラボをされているパスクァーレ・グラッソはあなたの大学の先生だったそうですが、どのようにして意気投合したのでしょうか?
確かに彼は私が通っていた大学で教鞭をとっていますが、ギタークラスを教えているので、私とは教師と生徒の関係ではないんです。私たちはもともと同じ大学に通っていたことで知り合い、その後、彼がNYのクラブでセッションを行うという噂を聴きつけて、私がそこに顔を出してセッションに参加したりして、意気投合するようになりました。
44 最近よく聴いている音楽、またはアーティストは?
同じ曲やアーティストの音楽を繰り返し聴くタイプなのですが、最近よく聴いているのはヴィクトリア・モネ。ベティ・カーターもヘビロテしています。
45 最近イッキ見するほどハマったドラマは?
「The Office (ジ・オフィス)」を職員室に置き換えたような、「Abbott Elementary(原題)」というフィラデルフィアの架空の小学校舞台したコメディです。アメリカでは大変な仕事であるにもかかわらず、薄給で知られる小学校の先生が物語の中心になっているのも好きなポイントですが、なによりも面白いんです。
46 最近言われてうれしかった言葉は?
ひょっとしたらNYでだけ使われているのかもしれませんが、「You’re eating(君、食べているね)」です。「よくやっている」、「頑張っている」という意味なんです。
47 人生で怖いものは?
自分の可能性を最大限に発揮できないこと。
48 手に入れたくても入れられないものは?
VOGUEに掲載されているものです(笑)。全部欲しいけど高級だから。
49 偏愛しているものはある?
TikTok。時間潰しだけでなく、料理のレシピを探したり、東京で訪れるべきスポットもTikTokで調べています。
50 いまに至るまでに乗り越えた最大のハードルは?
大学時代に、クラスメートの方が自分よりも先を行っていて、取り残されている気がしていましたが、内気な性格のため、なかなか周囲に助けを求めることができないでいました。でも、このままではダメだと、勇気を出して先生にアドバイスを求めたり、周りに頼ることをしました。それが一番のハードルだったように思います。
Photos: Akihito Igarashi Text: Rieko Shibazaki