7年前、私はアナ・ウィンターにつく3人のアシスタントの1人として『VOGUE』で働き始めた。私たち3人は、それぞれ明確に決められた責任を負っていた。エグゼクティブ・アシスタントのコリーヌがスケジュール調整と出張を担当し、セカンド・アシスタントのジャスミンが招待状や各種チケットの管理をしている間、私の仕事はウィンターの愛犬たちが元気で過ごせるようフォローすることだった。
ペットフードを注文し、獣医の予約をとり、一向に機能しないペットトラッカーのカスタマーサービスと何度も電話した。ウィンターのドッグウォーカーであるオラセニ・オルコグボンとも頻繁に連絡を取り、彼の出勤時間やトレーナーが来る予定日などを確認していた。
簡単な業務ですべて順調だったが、もっと犬たちと一緒に過ごせたらよかったとは思っていた。ウィンターの家に荷物を届けるとき、オレンジ色の頭と揺れるしっぽが、ほんの少し見えることがあった。でもそれ以上はわからなかった。 私は知りたいと思っていたのだ。アナ・ウィンターの愛犬たちは、どんな存在なのだろう、と。
だから今回、9歳のラドリー、8歳のハーパー、そして最後に群れに加わった5歳のフィンチを、フォトグラファーのOK・マッコースランドともに撮影するチャンスがやってきたとき、私はかなりうれしかったのだ。
平日の午後、オルコグボンに手伝ってもらいながら行われた撮影は順調で、3匹ともカメラの前では自然体だった。トライベッカにあるドッグサロン、PupCultureで毛並みを丁寧に整えてもらったばかりだったため(毎週予約を入れている)、柔らかな香りが漂っていた。少し“おしゃべり”することはあったが、3匹ともプロフェッショナルな仕事ぶりだった(フィンチは演出について芸術的観点からさまざまな意見を持っていたようだ)。
グラマラスなアンバーカラーのラドリーは午後の間ずっと、お姉さんモード全開だった。聞き分けがよく平然としていたが、最初の数回の撮影後は、少しお疲れ気味だった (オルコグボンが「気分屋のティーンエイジャー」のようだと言うのも分かる)。
愛らしいハーパーは、おすわりをしたり“待て”をしたり、階段を駆け下りたりなど、喜んで要求に応えていたが、少し眠たそうだった。
フィンチは、真のお調子者だ。吠えたり、列を乱したり、お腹を触ってと仰向けに寝転がったりした(『欲望』のヴェルーシュカさながら)。『ゴールデン・ガールズ』のドロシー、ローズ、ブランチにも引けを取らない3匹は至上の存在だ。
以下、ウィンターと娘のビー・カロッツィーニの助けを借りながら、オルコグボンが『DOGUE』のインタビューに答えてくれた。
──犬たちのフルネームは?
ブー・ラドリー、ハーパー、アティカス・フィンチです。
──星座は?
ラドリー:おひつじ座。
ハーパー:おうし座。
フィンチ:おうし座。
──お気に入りのおもちゃは?
ラドリー:テニスボール。
ハーパー:耐久性のある噛むおもちゃ、特に咥えて放り投げられるロープのおもちゃが好きです。
フィンチ:マルチペット(MULTIPET)のラムチョップのぬいぐるみ。
──好きな食べ物は?
ヒューマングレード(人間が食べられる品質)のペットフード。
──犬たちの悪いクセはありますか?
ラドリー:かなり“かまってちゃん”なところ。
ハーパー:歩道に落ちている珍しいもの(割れたココナッツなど)に吠えること。
フィンチ:リスをストーキングします。
──変なクセは?
ラドリー:よく小突いてくること。
ハーパー:私がソファに座るたび、膝の上に乗せてと鳴きます。そのまま膝に乗せるか(私のそばを離れないので)、別の場所に座るかしか選択肢はありません。
フィンチ:珍しいものを持ってきては隠す傾向があります。 鍵をケージの中に隠したこともありました。1時間以上探しましたよ。
──もし話せるとしたら、犬たちのキャッチフレーズは何だと思いますか?
「位置について……よーい……ドン!」
──犬たちのいちばんの長所は?
3匹には、さまざまな素晴らしい資質があります。離れるのを嫌うほど、皆強い絆で結ばれています。繋がりが強いのです。忠誠心があり、いつも互いを守れるようにしています。そして驚くほど愛情深く、賢い。新しい芸もたいていすぐに覚えます。
注目されたいあまり、少し強引な一面もあります。まるで自分が世界の中心だと主張するかのよう……たとえあなたの心の準備ができていなくてもね。あとは、犬の友だちに会うと信じられないほど喜びます。フレンドリーで社交的な性格です。
──犬たちが映画に出るなら、誰に声優を担当してほしいですか?
ラドリー:ニコール・キッドマンかイザベル・ユペール。
ハーパー:タイラかアイオウ・エディバリー。
フィンチ:エイミー・ポーラー。
──犬たちの変なニックネームはありますか? その由来は?
ラドリー:「気分屋のティーンエイジャー」。劇的な気分の浮き沈みと、ひょうひょうとした態度が典型的なティーンエイジャーを彷彿とさせるからです。
ハーパー:「ハーパー先生」。公園のベンチに座って、厳しい先生や評論家のように他の犬を批評するのが大好きだから。
フィンチ:「外交官」。というのも、フィンチはニューヨークでは真剣に言うことを聞いてくれるけれど、田舎にいるときは耳を貸さない場面があるからです。どの事柄にかかわるべきかを選んでいるみたい、フィンチは外交家です。
──犬たちを連れて行きたい場所はありますか?
犬は字が読めないから、映画館で『アラバマ物語』を観せたいですね。フィンチの名前の由来(主人公のアティカス・フィンチ)を、映画鑑賞を通じて共有できたら最高です。
──最も「人間っぽい」「犬っぽい」犬たちの行動は?
ドッグランで人と一緒にベンチに座って、ほかの犬が走り回っているのを眺めている様子は人間っぽいと思います。参加するより、行動を観察するほうが好きなんだと言わんばかりです。最も犬っぽい行動は、車に乗るのが大好きなこと。車に乗るときに使う専用のリードを認識していて、(そのリードを見ると)大興奮して走ってきます。
Text: Marley Marius Photography: OK McCausland Translation: Rikako Takahashi Adaptation: Mamiko Nakano
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