クリス・ヘムズワースが、『アベンジャーズ』シリーズで演じたソー役に対する複雑な思いを明かした。2022年に公開されたタイカ・ワイティティ監督作『ソー:ラブ&サンダー』は、コメディ色が強い作品となり、雷神ソーの背負う悲喜をうまく調合したと称賛された一方で、内輪ウケが過ぎるとの指摘もあり、評価が二分した。カバーを飾った『ヴァニティ・フェア』のインタビューで、クリスは「即興とエキセントリックの渦に足をすくわれて、自分自身のパロディになってしまった。うまくこなせなかった」と振り返る。
2011年の『マイティ・ソー』から10年以上にわたって演じたソーだが、ソーのキャラクター自体にもフラストレーションや不満があるそうだ。「ときどき、自分を(アベンジャーズ)チームのセキュリティガードのように感じる。他のメンバーのセリフの方が、ずっとカッコいいし、ずっと面白い。僕のキャラクターはと言うと、ウィッグと筋肉、コスチューム、ライティング、それだけ。アベンジャーズの一員だったけれど、誰でも良いような存在だった」
これに異を唱えるのは、シリーズでアイアンマンを演じたロバート・ダウニー・Jr.だ。「まず、ソーというキャラクターは実写化がとても難しい。見えない制限がたくさんある。だけど、クリスと(『マイティ・ソー』の監督)ケネス・ブラナーはそれをものともせずに、現実味がありながらも神らしいキャラクターに作り上げた。僕の意見では、ヘムズワースはアベンジャーズのメンバーの中でもいちばん複雑な精神構造を持つ人だ。彼にはウィットと重みがあって、抑制が利くのに爆発力もある。それに加えて穏やかさまであるんだ」
『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015)の前日譚となる最新作『マッドマックス:フュリオサ』で、ウォーロード・ディメンタス将軍役を演じたクリスは、これまでの停滞感を払拭するような経験だったようだ。「リハーサルに参加してすぐに、すべてが高揚した。すがすがしい気持ちになった。大義のない苦しみは辛いけれど、確かな目的があれば、苦しみも活力を再び取り戻す糧になる。このところ自分に飽き飽きしていたけれど、キャラクターに没入することができた」。そして今、クリスは次の作品について考えると、『ソー:ラブ&サンダー』に続く、新しい『ソー』を観客に見せる責任があると考えているそうだ。
Text: Tae Terai