シプレー 時代を映し出しながら進化し続ける香り
ベルガモットやローズ、ジャスミン、オークモス、パチョリ、ラブダナムの6種の香料がベースとなる、シプレーのアコード。「現在、“モダンシプレー”と呼ばれているものはクラシックタイプと大きく印象が異なります。シプレーのアコードをつくり出す6つの香料のうち、ラブダナムがムスクに置き換わったり、天然香料を使っていたジャスミンやローズなどが合成香料の軽やかなタイプに置き換わり、クラシックシプレーに比べると軽やかで明るい香りだちです」と香りの専門家でありフレグランススクール「サンキエムソンス ジャポン」の代表を務める小泉祐貴子さん。「モダンシプレーは、少し前のフローラル フルーティのように嗜好性の高いもの──つまりみんなが好きと感じるような香りになってきています」。そのモダンシプレーの代表格として挙げられるのが、シャネル(CHANEL)の「ココ マドモワゼル」やディオール(DIOR)の「ミス ディオール シェリー 」(※生産終了)。これらは2000年代はじめ、モダンシプレーの黎明期と言える頃にヒットし、多くの人を魅了した。「核を担う6つの香料の香り立ちをモダンにし、時代が求める香りに進化しているのです」。時代を映し出すものは色々あるが、香りもその一つであり、魅力だろう。
シプレーのもつ香りの表現力
1917年のコティ(COTY)の香水「シプレ」の発表により、多くの人に認知されたこのファセット。小泉さんは、「女性らしく洗練された、ファッショナブルな香り。大胆不敵な感情や贅沢なムードを感じさせます」とシプレーの印象について語る。また最近、シプレー フルーティの香りが数多く発表されている。「日本では特にフルーティノートを感じるものの方が嗜好性が高く、好まれる傾向にありますね」。モダンシプレーの瀟洒な香りは、華やぎと心地よさをもたらし日々を洗練されたものにしてくれる。
※ファセット…香りのタイプのことで全18種ある。同じ分類に属する香料同士をブレンドしてつくられる。
話を聞いたのは……
小泉祐貴子
香りデザイナー。サンキエムソンス ジャポン代表。慶應義塾大学理工学部卒業後、資生堂、香料会社フィルメニッヒを経て、2014年にセントスケープ・デザインスタジオを設立。コンサルティング、香り環境デザイン、香水のプロデュースなどを幅広く手掛ける。近著に『英国王立園芸協会 香り植物図鑑』(Stephen Lacey著 小泉祐貴子訳/柊風舎 刊)。
https://www.cinquiemesens.jp
Text: Akira Watanabe Editor: Rieko Kosai
