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東京からパリへ。ケンゾーがFutura 2000と誘う、列車での東西横断の旅【2025-26年秋冬 メンズコレクション】

1月24日(現地時間)にエッフェル塔を望むシャイヨー宮で披露された、ケンゾーKENZO)の2025-26年秋冬メンズショー。アメリカ人アーティストのFutura 2000をイメージとアイコン制作に迎え、列車での東西横断の旅へと誘うコレクションを展開した。
Photo: Isidore Montag / Gorunway.com

コラボレーションが目立つ今シーズン、今日のショーも例外ではなかった。ジュンヤ ワタナベJUNYA WATANABE)やウィリー チャバリアWILLY CHAVARRIA)の例を追って今晩披露されたのは、NIGO®率いるケンゾーKENZO)の2025-26年秋冬メンズショー。ルイ・ヴィトンLOUIS VUITTON)でのファレル・ウィリアムスとの共同デザインに続き、NIGO®はケンゾーでのコレクションに友人でありニューヨークのグラフィティ界のレジェンドであるFutura 2000を迎え、コラボレーションの波を加速させた。

NIGO®がFutura 2000と出会ったのは1996年。彼はショーの前に当時をこう振り返る。「彼の大ファンだったんですよ。東京で初めて会ったとき、彼は私のデザインした服を着ていましたね。袖が取り外せるウインドブレーカーでした。その頃から私たちはコミュニケーションを取るようになって。彼に会いにニューヨークへもよく行ったし、彼も私に会いに日本まで来てくれました」。会場には、Futura 2000本人も駆けつけていた。

NYのグラフィティアーティスト、Futura 2000とのコラボレーション

Photo: Isidore Montag / Gorunway.com
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Futura 2000のアトムモチーフはケンゾーを象徴するボケの花と組み合わされ、ブルゾンやボマージャケット、チェック柄のカフスのついたワイドパンツなどに配されていた。また、インディゴブルーに染まった着物風のセットアップには、スプレー缶で描かれたようなモチーフも。小物で言えば、ショッピングバッグやフラワーホルダー、バゲットホルダーといったアイテムにケンゾーのアイデンティティを示すFutura 2000のカリグラフィーが描かれている。この一連のアイテムには「ワレモノ注意」と書かれたタグも付いており、これは1990年にFutura 2000がTシャツに使っていたもので、当時日本で流行っていたデザインを参照したのだという。絶え間ない文化交流を通じて何かを再解釈するというこのスタイルは、ケンゾーの精神の根底にもあるように思えた。

Photo: Isidore Montag / Gorunway.com

ニットの装飾はパチンコ台から着想を得たもので、ガムソールのローファーやメリージェーンシューズは、彼が17歳のときに欲しかったというパトリック・コックス(PATRICK COX)にインスパイアされている。一方、今シーズンの人気モチーフである薔薇を用いた理由について、NIGO®はこう語っている。「14歳のショーン・レノンがポール・マッカートニーに初めて会ったとき、ポールは薔薇のデザインのTシャツを着ていたそうですね。 私はこのエピソードがすごく好きだったので、それにオマージュを捧げたいと思いました」

Photo: Isidore Montag / Gorunway.com

もうひとつのコラボレーションと言えるのが、ケンゾー自身とのものだ。列車の窓からのぞく富士山とパリの街のグラフィックは、1998-99年秋冬の「トレイン・ショー」へのトリビュート。これは、この先数シーズンにわたって継続される予定であるまた新たなコラボレーションにも通じているそうだ。

コレクションをまとめ上げた新デザインディレクター、ジョシュア・ブレンの存在

Photo: Isidore Montag / Gorunway.com

このコレクションは、デザインディレクターとして最近メゾンに加わったジョシュア・ブレンがNIGO®のもと初めて制作したもの。9年前にNIGO®と出会い、いつか一緒に仕事をしようと話していたというブレンは、直近ではジバンシィGIVENCHY)、その前はストーンアイランド(STONE ISLAND)にいたベテランデザイナーだ。

彼はNIGO®とともに1998-99年秋冬コレクションの大胆な色使いを参考にし、ラペルにコントラストを効かせたモヘアスーツや、アウターウェアなどの素晴らしいシリーズへと昇華させた。

アーカイブデザインのペイズリー柄があしらわれたスマートなワークウェアや、ケンゾーらしいジャケットのディテールを取り入れた美しい風合いのデニムルックもあった。デニムのバックポケットに施された富士山のようなシルエットの縫い目は今シーズンの新作かどうかはわからないが、ここで特に際立っていたのは確かだ。流れる景色を想起させるストライプ柄のダブルブレストジャケットは、そのプロポーションに加え、パンツや1920年代スタイルのベースボールキャップとのスタイリングにも細やかな工夫が光った。

NIGO®は、ケンゾーのコレクションを監修するためにいつもパリにいるわけではないのだが、それでも経験豊富なブレンが加わったことで、ラインナップはしっかりとタイトにまとまっていた。