アメリカ原住民オセージ族の居住地で起きた連続殺人事件を描いたマーティン・スコセッシ監督の『キラー・オブ・ザ・フラワームーン』。主人公アーネストを演じ、本作のプロデューサーも務めるレオナルド・ディカプリオがアドリブを際限なく続けることに、スコセッシ監督とおじ役のロバート・デ・ニーロはうんざりしたそうだ。
本作は、デイヴィッド・グランのノンフィクション『花殺し月の殺人 インディアン連続怪死事件とFBIの誕生』を原作にしたサスペンス西部劇超大作。オセージ族は19世紀終わりに居住区で石油が発見されたことで富を得たが、白人による搾取が横行し、1920年代には彼らの持つ石油の“均等受益権”を狙って連続殺人事件が起こる。ウィリアム“キング”ヘイル(デ・ニーロ)は甥のアーネストを使い、彼らに近づき富を狙うが、一筋縄でいかない複雑な人間性が浮かび上がる。
スコセッシ監督は「テレグラフ」紙のインタビューで、ディカプリオとデ・ニーロの役へのアプローチ法はまったく異なったと明かす。ディカプリオがアドリブを「際限なく続ける」のに対し、「ボブ(デ・ニーロ)は話すのを好まなかった」そうだ。ディカプリオがあまりにアドリブを繰り広げるため、2人は辟易したと振り返る。「時々、ボブと僕は顔を見合わせてあきれ顔をしたよ。そして2人で、『そのセリフは必要ない』とレオに言った」
これまでアカデミー賞にノ6度ミネートされ、『レヴェナント 蘇えりし者』(2015)でついに主演男優賞を獲得したディカプリオは、アドリブを駆使することで知られ、『タイタニック』や『ウルフ・オブ・ウォールストリート』、『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』など、彼の代表作でも見せてきた。また、本作の映画化権を所有する彼の一声で、当初FBIの視点で描こうとしていた脚本をオセージ族内部の視点から描くように提案し、方向転換したこともスコセッシ監督が明かしている。
Text: Tae Terai
