パリを拠点とする日本人ネイルアーティストの成田恵里さんは、世界を舞台にイノベーティブなネイルデザインとテクニックで活躍中。各国『VOGUE』のカバーなどのエディトリアルシューティング、広告キャンペーン、メゾン ミハラヤスヒロ(MAISON MIHARA YASUHIRO)などブランドのファッションショーなどのネイルデザインを担当。また、今年パリを舞台に開催されたファッションイベント「VOGUE WORLD」では、ランウェイを歩いたモデルたちのすべてのネイルアートを手がけ、話題をさらった。複雑なディテールと大胆な色づかいで業界に新しいトレンドやスタイルを生み出し続ける成田さんに、2024年秋冬シーズンに流行するネイルのトレンドと、デザインのTipsを解説していただいた。
2024-25年秋冬、注目のネイルトレンドは?
「今シーズンは、ファッションの邪魔をしないシンプルなデザインでありながら、ディテールに変化をつけ、新しい感覚で楽しめるネイルがトレンドになっています」(成田さん)
ショートネイルにもロングネイルにもマッチし、ファッションもモノトーンからカラフルまで様々なシーンで合わせることができる「クロームネイル」のほか、定番のデザインとして長年君臨し続けるフレンチやレッドネイルにも色味やシェイプにアップデートが加えられている。一方でデコレーションはよりオピュレントに進化。シンプル好きも、派手好きも楽しめるネイルトレンドが到来している。
TREND 1:反射性のあるクロームネイル
昨シーズンのトレンドにも浮上したクロームネイルだが、今年はメタリック色が強まって再度トレンドイン。シンプルなデザインでファッションの邪魔をせず、ショートネイルにもロングネイルにもマッチする優れものだ。2024-25年秋冬コレクションのランウェイではプラバル・グルン(PRABAL GURUNG)やサリー ラポワント(SALLY LAPOINTE)といったブランドもこのネイルデザインを取り入れていた。
クリアの魅力を再発見! 抜け感クロームネイル by Eri Narita
「これまでのファッション撮影の現場では赤や茶色などのワンカラーが多用されてきましたが、クロームネイルは実際服に合わせてみるとシックに決まるし、最近はスタイリストさんからも人気です。今回、私が作成したデザインは、クリアのフレンチの上にクロームを使用した変形フレンチネイル。クリアを使用することで抜け感を意識しています。クリアネイルと言えば夏のイメージが強いかもしれませんが、最近のトレンドでは夏といえばむしろヌードや白が主流。例えばスタイリッシュなブラックスーツにクリアのチップだけ合わせるなど、秋冬のファッションに取り入れるとモダンな抜け感とエッジィさを添えられます」
TREND 2:最旬のチェリーレッド
セレーナ・ゴメスやゼンデイヤがこの夏もムーディなレッドネイルをした姿が目撃されているが、秋冬シーズンにかけて色味はよりピンク味が増したチェリーレッドにシフトする予感。NYコレクションのキャットウォークではレトロフェット(RETROFÊTE)、プラバル・グルン、クリスチャン コーワン(CHRISTIAN COWAN)、ブロンクス アンド バンコ(BRONX AND BANCO)がチェリーレッドのネイルを採用。今シーズンならではの特徴は、爪を斜めに走るメタリックなライン、通称「キャットアイ」だ。ベースと同系色で塗られるのが一般的でまるで猫の目を見つめる鏡のような効果を生み出してくれる。
マチュアな差し色ネイル by Eri Narita
「チェリーレッド単色でもいいのですが、秋は濃いレッドと組み合わせたフレンチネイルのデザインがおすすめです。また一本だけデコレーションを加えるとさらに抜け感が増して日本人のテイストにもマッチすると思います。私のデザインでは、一指だけ立体的なアートをアクセントとして採用しました。さらにストーンも埋め込みジュエリーのようなイメージで仕上げています」
TREND 3:エクストリームなフレンチネイル
今季は、ひと癖もふた癖もあるひねりの効いたフレンチネイルが散見された。セルジオ ハドソン(SERGIO HUDSON)やティファニー ブラウン(TIFFANY BROWN)のショーでは、ダークカラーやラインストーンのチップを使用したり、極端に長さを出したり、カラーやシェイプ、デザインなどひねりが見られる。
脱クラシカルなマルチカラー・フレンチ by Eri Narita
「6月にパリで開催された『VOGUE WORLD』で、フランスの国旗をモチーフにしたマルチフレンチを自分の爪にデザインしました。70、80年代をフィーチャーした撮影でもよく採用されるグラフィカルなデザインですが、フレンチの幅や先端のシェイプを変えるなどそのときどきのトレンドによってディテールに変化をつけています。今シーズンは、特殊なデザインというよりはベーシックなフレンチネイルに回帰していますが、一方で、セレブたちの間でも流行している、台形のようなコフィン型のシェイプにも注目です。赤などヴィヴィッドなカラーの場合、形がポインティだと主張が強くなり過ぎてしまいますが、コフィン型にすることでそれが少し和らぐ効果も」
TREND 4:ストーンを使ったデコレーション
今シーズンのデコレーションはストーンをふんだんに使用し、大げさに装飾するのがトレンド。セルジオ ハドソン(SERGIO HUDSON)では70年代グラマーがカムバックしたチャンキーなジュエリーネイルが、ルアールではバロック様式にインスパイアされたスーパーロングネイルが印象的だった。
華麗なるグラディエーターネイル by Eri Narita
「先日チェコ版『VOGUE』の撮影ではシンプルなグリーンのワンカラーをベースにレター(アルファベット)チャームを爪先にあしらったネイルデザインが採用されましたし、フォトグラファーのエリザベータ・ポロディーナとの撮影でもオーロラブルーのベースにストーンでデコレーションしたネイルアートを作りました。エディトリアルから広告まで幅広く、装飾的なネイルアートの人気が上がっているのを感じています。個人的にはイスラエルやヨルダンなどエキゾチックなディスティネーションにインスピレーションを受けたものが気に入っています」
Text: Makiko Yoshida Editor: Rieko Kosai

