同じ日にショーを行うコム デ ギャルソン社の3ブランド。今季は全てオペラ座の近くにある廃墟のような建物が会場となっている。ノワール ケイ ニノミヤは二番手。朝に観たジュンヤ ワタナベとは異なるフロアに案内されると、やや広めのランウェイが用意されていた。
暗い照明の下、不協和音を奏でる音楽と共に登場したのは深海生物を思わせるダークな印象のルック。
以降黒を中心としたルックが続くが、まるでアニメのキャラクターのような白いヘッドピースと引き続きリーボックとのコラボレーションらしいシューズに合わせたフリル付きのソックスがガーリーな雰囲気を醸し出している。
そして、後半からが今季のハイライトだった。音楽とも呼応する不思議なバランスと色使いで、子どもが無邪気に好きなものを寄せ集めたようなルックに不意をつかれる。
テーマは「ファンタジー」。デザイナーの二宮啓によれば、「不思議、非現実的、なんだかよくわからない感じを表現した」のだという。シグネチャーである手仕事を駆使した緻密なものづくりは変わらないが、「幼い頃に遊んだような、チープでキッチュな素材を選び、レジンを使って奥行きを生み出した」ことが特徴であるよう。黒とゴールドのシューズは3シーズン目となるリーボックとのコラボレーションで、ヘッドピースはヘアメイクアップアーティストの小西神士が、音楽は長谷川白紙が手がけていた。
思い起こすのは「Iridescence(虹色、玉虫色)」をキーワードとした2024-25年秋冬で、その時と同様、二宮はバックステージで「ファッションはポジティブなもの、という思いがある」と語っていた。後半の底抜けに明るいムードは、不穏な現実世界の反動かと思わず勘ぐってしまうが、二宮はそうとは明言していない。ただ単に、いろいろと深く考えず、子どものように自由な感性でものづくりに没頭したかったのか。ともあれ、今、現実はそんなに良いものではなく、そこから離れたポジティブな表現が魅力的である、ということは言えるのかもしれない。