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能登半島地震の被災地への思いを、おにぎりに込めて。ミシュランレストラン主催のチャリティイベント「#onigiriforNOTO」

元旦に石川県能登地方を襲った地震。発災から5日後の1月6日、都内のミシュラン二つ星レストラン「NARISAWA」では、募金を呼びかける「#onigiriforNOTO」と題したイベントが開催された。

Photo: Kyoko Nakayama

1月1日、年の初めに能登半島を中心とする地域を襲った震災から1週間が経った。現地では今も余震が続き、救助や支援活動、交通網の寸断やインフラの復旧など今も苦境にさまざまな苦境に直面している。何か支援をしたくても、被災地へと届けたり向かったりできず、もどかしい思いを抱いている人も多いだろう。

そんな中、1月6日、東京・青山のミシュラン二つ星レストラン「NARISAWA」の前で、現地への募金を募るイベント「#onigiriforNOTO」が行われた。1000円以上の募金に対するお礼としておにぎりを渡す形で、NARISAWAの成澤由浩シェフと、WAGYUMAFIAの浜田寿人シェフが共催で、同店のスタッフのほか、呼びかけに応じた飲食関係者、合計30人あまりがおにぎり作りに参加した。

元々はコロナ禍中の医療従事者、そしてロックダウンで食材を出荷できなくなった生産者の支援のために始まったおにぎりを通しての継続的な社会貢献のプラットフォームが「#onigiriforlove」だ。2021年2月、食の力でできることは何かを考え、「美味しいものでホッとしてほしい」と普段店で使う上質な食材を使ったおにぎりを、不眠不休で働く日本各地の医療従事者に届けてきた。「日本に昔から伝わる食事であり、水と米があれば作れること、人の手の温もりが感じられる食べ物である」というのがその理由だ。地元の病院との仲介に立ったのは、両レストランと取引のある、日本各地の酒蔵だった。コロナ禍がある程度落ち着いた後もその活動は継続され、22年4月には、ウクライナの子どもたちを支援するための募金を募る「#onigiriforukrine」が行われている。今回の能登地方へ向けたおにぎりのイベントで25回目となる。

「必要な人たちに一刻も早く届けたい」

Photo: Kyoko Nakayama

今回、さまざまな被災地支援を考えた上で、能登半島地震の発生からまだ間もなくボランティアの受け入れが始まっていなかった時点でできる支援は募金だと話がまとまった。開催の2日前に日時を決定。スムーズな意思疎通は、これまでに何度も各地で支援活動を行ってきたがゆえ。成澤がすぐさま、おにぎり用の米を炊く羽釜を手配し、浜田が東京にある能登半島の米を探した結果、原宿の小池精米店が能登半島の米を寄贈してくれた。釜だきで丁寧に作られている珠洲の塩を使い、被災地への思いも込めた。約2時間半ほどで、4種類のおにぎり、約400個を作成。具材は、赤紫蘇と昆布、神戸牛のビーフシチュー、とろろ昆布と紫蘇ご飯、指宿産鰹節と尾崎牛のホルモンなど、店で普段使っている食材を使った特別なおにぎりが完成した。

おにぎり作りには、もともと店にお客さんとして来ていた、ウクライナ出身の人気ユーチューバー、サワヤン兄弟と、大晦日の試合のためにちょうど来日中だったアメリカの総合格闘家、フアン・アーチュレッタが参加し、ファンに募金を呼びかけた。先頭は朝9時30分から並んだという千葉からやってきた男性をはじめ、開始30分前には80人が長蛇の列を作った。

「現地からの声」に寄り添った支援を

#onigirifornotoに参加した関係者ら。Photo: Kyoko Nakayama

また、現地からの声を共有するため、NARISAWAWAGYUMAFIAのアカウントでインスタライブも開催。七尾市で炊き出しを行っている金沢在住のフードアナリスト、長坂紅翠香と繋ぎ、長坂が付近の被害を歩きながら紹介。「七尾市に電気は来ているが、水が止まっている。明日からは雪の予報で、寒い中なので汁物が人気。ですが水を大量に使う料理なので、水が少ない中たくさんは作れない。また、洗い物もできないのも悩ましいです」と、変わり果てた地域の様子に、涙をこらえながら伝えると、成澤と浜田は「長期的な支援をしていきます、何をすればいいのか、引き続き教えてほしい」と声をかけた。

今回集まった募金は合計48万3514円。食材費や振込手数料なども一切取らず、全額を現地で炊き出しなどを行う飲食店に送る。募金してくださった方々にきちんと責任を持ちたいと、何に使われたのかを両店のSNSで報告していくという。

成澤と浜田は、今後も定期的に今回の震災の被害者への募金を呼びかける#onigiriforNOTOを開催する予定で、詳細な日程は決定次第両店のSNSを通して発表される。

それだけではなく、ある程度落ち着いた段階で、NARISAWAの姉妹店「BEES’ Bar」やWAGYUMAFIAの系列店「照寿司TOKYO」などを被災したレストランに無料で貸し出す予定だという。被災したレストランにとっては、店の再建のための資金を得ることができるのみならず、東京でファンを作ることで、未来の誘客にもつながる息の長い支援にもなるだろう。

炊き出しを行なっている地元の団体への寄付

石川県七尾市で炊き出しを行う、飲食店を筆頭とするメンバー。Photo: Courtesy of Food Japon

避難所にて。Photo: Courtesy of Food Japon

石川県は能登半島地震にかかわる石川県災害ボランティア情報の特設サイトを開設した。多くの地域で災害ボランティアの受け入れ態勢が整っておらず、能登方面へ向かう道路で深刻な渋滞が発生している状況の中、闇雲に個人が向かうのではなく、被災地からの発信を確認しながらの行動が求められている。災害ボランティアは、事前登録制となっているので、希望する人は今登録しておくのも良いだろう。

石川県では現在、仕訳などに手間がかかるため、個人からは義援物資は受け付けておらず、石川県が日本赤十字社石川県支部及び石川県共同募金会と連携して開設した義援金を募集している。今すぐに私たちができることは、義援金や支援金の寄付などを通じた金銭的な援助だろう。今、成澤らのつながりを通して、被災地から支援を求める声が届く中、地元の人たちが行っている活動を直接支援できる団体をいくつか紹介する。

フードジャポン
チャリティイベントでインスタライブにも登場した長坂が、七尾市で行っている炊き出しへの支援。
<銀行振込>
北國銀行 野町支店(ホッコクギンコウ ノマチシテン)
フードジャポン ナガサカ アスカ 普通 0377502

北陸チャリティーレストラン
もともと熊本の震災のときに立ち上げた石川県の飲食店などのグループで、店や自宅など、自分たちも被災した中、地域のために炊き出しを行っている飲食店が所属している。
<ゆうちょ銀行>
記号13110 番号20590611
<銀行振込>
店名 三ーハ(読み サンイチハチ)
店番318 預金種目 普通預金 口座番号 2059061
ホクリクチャリティーレストラン

飲食店と縁深い酒蔵のほとんどが全半壊

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先にも述べたように、これまでコロナ禍の#onigiriforloveのイベントで、地元の病院との仲介に立ったのは、日本各地の酒蔵だった。成澤をはじめ、飲食店関係者らからは能登にある酒蔵への支援にも注目してほしいという声も上がっている。実は、日本の食文化を育んできた日本酒の酒蔵も深刻な被害を受けている。宗玄酒造の浅田星太郎によると、今回、能登にある11の酒蔵のうち少なくとも10蔵が全半壊している。家屋の倒壊や断水が続く富山県氷見市の酒蔵も蔵が傾くなど困難な状況となっている。こうした中、蔵の復興に直接使われるという酒造組合の募金口座も開設された。

【石川県酒造組合連合会】
北國銀行 金沢城北支店 普通預金036977

【富山県酒造組合能登半島地震】
北陸銀行 丸の内支店 店番号107 口座6046799

「落ち着いたらぜひ、被害が大きくない地域を訪れ、地元の経済を回してほしい」との声も被災した地域から届く。きめ細かく現地の状況を汲み取りながら、長期的な視野に基づいた支援を心がけたい。

Text: Kyoko Nakajima Editor: Mina Oba