ニューヨーク、アートとファッションの発信地に新旗艦店をオープン
1993年に誕生したプリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ(PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE)は、ファッション業界に革新をもたらしたブランドとして知られている。機能的でありながらアート的な要素が感じられるそのデザインは、時を超えて愛され続けているが、ここ数年ニューヨークの感度の高い女性たちの間で再び注目を集めている。
そんな中、2024年12月12日に、プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケがアートやファッションの発信地である、ニューヨークのノリータ地区に新しい旗艦店をオープン。三宅一生が深い交流を持っていた安藤忠雄の建築においてニューヨーク初となるビルの1階に位置し、日本のMOMENT事務所によって設計された。
天井のスチールメッキのライティングレールと壁に連なるホワイトのパネルが「プリーツ」を彷彿とさせ、服の魅力をより引き立たせる設えに。以前ソーホーに構えていた店舗のサイズより数倍広くなり、訪れる人々にブランドのアイデンティティを一層強く感じさせる空間となっている。
手軽さとスタイリング力を求める世代のニーズを満たす
この都市のダイナミックなファッションシーンで注目される理由は何だろうか?
「人々はデザインに妥協することなく、自分のライフスタイルに沿った服を切望しています」と話すのは、女性たちの等身大の姿を記録する人気オンラインマガジン「パサーバイ(PASSERBY)」のファウンダーでありフォトグラファー、クレマンス・ポレス。10点以上のプリーツ プリーズ イッセイ ミヤケのアイテムを愛用している彼女は、その魅力を「多用途性」にあると感じている。
「オフィスでも、買い物でも、ギャラリーのオープニングでも、飛行機の中でも着られます。何を着るべきか迷った時でも、サッと着るだけで、快適かつスタイリングにまとまりが生まれる。毎日の生活のためにデザインされていることを実感します。また、どのアイテムも組み合わせやすく、例えばカーディガンは簡単にベルトやスカーフとして着ることも可能。誰かがプリーツ プリーズ イッセイ ミヤケのパンツをスカーフとして使っているのを見たこともあります!」
イッセイ ミヤケの「プリーツ」は、「一枚の布」という三宅の思想を体現するものだ。従来のプリーツを作るプロセスとは反対に、熱収縮を考慮して生地を最終的な形の数倍の大きさに裁断・縫製した後、「プリーツ」を施す技法を開発したことから、1993年に独自のブランドとしてスタートした。
ポリエステル素材を使用するため、洗濯機で洗えて、丸めて収納しても形が崩れず、取り出すと元の形に戻る。20世紀初頭のオートクチュール、マリアノ・フォルチュニのプリーツドレスとは対照的に、手入れが簡単で、普遍的なデザインだ。さらに、ベーシックなタンクトップが2万円ほどで購入できる価格設定も魅力のひとつだろう。
“アーカイブファッション”の影響
また、世界中にある店舗やeコマースサイトで直接購入する人もいるが、セカンドハンドで購入する人も多い。ブルックリンのヴィンテージショップ「ソボーラズ(SORBARA’S)」のオーナー、キャスリーン・ソボーラは、“アーカイブファッション”が関係していると語る。
「プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケやイッセイ ミヤケ(ISSEY MIYAKE)は、日本のファッションやリセールサイト、1970年代から1990年代のデザイナーズのアーカイブアイテムへの関心の高まりとともに改めて注目されています。地球温暖化や政治変動の中で、消費者はお金の使い方に慎重になり、ファストファッションを避け、よりサステナブルな選択肢を探しています。ひとつは、セカンドハンドのデザイナーズアイテムを購入すること。もうひとつ新たに見られるアプローチは、上質なデザイナーズアイテムのみを揃えた『カプセルワードローブ(少数精鋭で何度も組み合わせて使える、実用的でスタイリッシュな衣服コレクション)』を作ることです」
イッセイ ミヤケとの相乗効果
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核となるブランドであるイッセイ ミヤケのデザイナーに近藤悟史が就任したことで、新たな風が吹き込まれていることも触れずにいられない。2020年春夏シーズンにパリで発表したデビューコレクションでは、異なるプリーツのテクニックを用いたドレスを着たモデルたちが上下に飛び跳ね、リズミカルに揺れる演出が大きな反響を呼んだ。そのショーは「プリーツ」の永遠の新しさ、そして服をまとうことのピュアな歓びを具現化していたと記憶する。
また、三宅はその時代の才能豊かなアーティストたちと協働してきたが、近藤もまたイギリス人のトップフォトグラファーのジェイミー・ホークスワースにビジュアルイメージを依頼し、スタイリングには業界で最も評価されているブライアン・モロイを起用することにより、モダンでリアル、感情に訴えるアプローチを巧みに融合。今の空気感を取り入れた新しいビジュアルは、イッセイ ミヤケ全体のフレッシュなイメージへとつながり、この変化に感度の高い女性たちはいち早く反応している。
キャスリーンは、プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケの服に袖を通すと自然と自信を感じられると締めくくる。「『プリーツ プリーズ イッセイ ミヤケがお客様に似合うかどうか』ではなく、『どのようにお客様にフィットするか』が大切だと考えています。控えめでありながらセクシー。それは身に着けたときにお客様が感じる内面性から滲むものなのです」
独自の美学と革新性がますます深みを増すプリーツ プリーズ イッセイ ミヤケ。まるで永遠に進化し続けるアートのように、その魅力は輝きを増すばかりだ。
Text: Maki Saijo
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