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ディズニー最新作『白雪姫』が公開。プリンセスの吹替に挑んだ吉柳咲良にインタビュー

ディズニーが実写映画化した『白雪姫』が、3月20日より公開される。プレミアム吹替版で主人公・白雪姫の声優を務めたのは、NHKの連続テレビ小説「ブギウギ」を筆頭に非凡な歌唱力で注目を集める才華、吉柳咲良(きりゅう さくら)。名作ミュージカルへの出演経験もある彼女に、声の演技や表現で心がけたこと、白雪姫役のレイチェル・ゼグラーやミュージカルならではの魅力を聞いた。
吉柳咲良 ディズニーの実写映画『白雪姫』吹き替え

1937年、ディズニーが世界初のカラー長編アニメーションとして製作した『白雪姫』。そのミュージカル版でタイトルロールを演じるのは、スティーヴン・スピルバーグ監督の『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)で繊細な演技と伸びやかな歌唱を披露したレイチェル・ゼグラーだ。彼女が演じる白雪姫のプレミアム吹替版声優を担当した吉柳咲良が、可憐で内なる強さを秘めたディズニープリンセスの白雪姫、そして実写映画化された本作の見どころを語ってくれた。

雪のように純粋で美しい心をもつ白雪姫

2025年3月20日より全国公開。

Photo: © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

──これまでアニメーション映画『天気の子』や『かがみの孤城』で声優を務めていますが、『白雪姫』では実写映画の吹替に初挑戦されました。どんな違いがありましたか?

これまで経験したアニメーションの声優とはまた違った難しさがありました。今作ではレイチェル・ゼグラーさんが演じていらっしゃる白雪姫を大切に、ニュアンスすら損なわないよう声を当てることを心がけていました。声と表情がちぐはぐにならないよう、自分が演技するという意識より、いかに彼女の思いを汲み取るかを第一に考えました。さらに声のボリューム、スピード感、相手がいる場合の距離感を声だけで表現しなければならなかったので、そこも大変でした。いかにバランスよく声を乗せていくか、とても慎重に作業を進めました。

──先日もアカデミー賞の授賞式でプレゼンターを務めるなど、主演のレイチェル・ゼグラーは注目されています。彼女が演じる白雪姫は、どんなところが魅力的ですか?

とにかくかわいらしい白雪姫なんです。キュートで、愛らしくて、少女みたいに無邪気で純真で、笑顔がたまらなく愛おしくて。お話が進むにつれ、どんどん虜になっていくと思います。

──どんな現代版の白雪姫になっているのか、気になっている人も多いと思います。

基本はアニメーション版からそのまま、よりストーリー性が強くなっている印象を受けました。本当に思慮深くて、心から優しいプリンセスである白雪姫が成長していく過程がとてもリアルに描かれています。彼女の行動一つ一つにちゃんと理由があって、「なるほど…!」と納得しながら話が進んでいきます。これまで知っていた『白雪姫』の物語の見えていなかった裏側、気づかなかった背景がどんどん明らかになってきて、改めて素晴らしいお話だなと気づかせてくれるのが、この映画です。

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──プリンセスの役柄ですが、特に難しかった台詞や場面などはありましたか?

自分が普段、喋っている声の感覚で話してしまうと、まず画に合わないんです。プリンセスですから、相手に声や感情がクリアに届くよう、伝えるという意識で話さないといけません。私自身は早口だと言われることが多いのですが、そのスピードで流れるように話してしまうと、口先だけで話しているようになってしまいます。特に日本語は一気に話しても通じるようなところがありますが、当然、それではダメです。一つ一つの母音がはっきり聞こえるように語尾まで気を抜かず、一音、一音を丁寧に発音し、時間をかけて、ゆっくり話すイメージでした。もちろん、言い回しも美しいんです。それでいて、レイチェルさんが話している姿のイメージを崩さないような加減でやらなければならないので、バランスを見極めるのには苦労しました。

──アニメーション版『白雪姫』も参考にされたのでしょうか?

アニメーション版で使われている昔の日本語は美しい単語が多く、言い回しも素敵なので、そこはより丁寧に発するよう、意識しました。レイチェルさん自身が、原作を体現されているところがたくさんあったと思います。白雪姫の優しさや相手を気遣う気持ちが感じられる場面では、より繊細さの精度を強めてみたりするなど、様子を見ながら、ちょっとずついろんな成分を調合していくような感覚で仕上げていきました。

──ミュージカル版だからこそ素晴らしかった、心を奪われたシーンを教えてください。

感動的なシーンが多くて選ぶのに困るのですが、特にアニメーションで記憶に残っていた「ハイ・ホー」のシーンを目にしたときは、“こんな風になっているんだ!”と衝撃を受けました。7人のこびとがとにかく愛らしいので、白雪姫と出会うシーンにも心踊りました。「口笛ふいて働こう」というアニメーション版にもある楽曲を歌わせていただいたのですが、そのシーンは動物たちも一緒にいて、とても印象的な場面になっています。映像の美しさに加え、動物たちの存在がリアルで、アニメーションで観た場面がここまで立体的に描かれているとは、と観れば観るほど感動します。もちろん、林檎を持った老婆が登場する名シーンは一気に緊張感が走り、展開にメリハリがあって楽しい。何より、私のお気に入りはラストシーンですね。見終わったときの充足感がとんでもなくて、もし舞台だったら、絶対にスタンディングオベーションしていると思います(笑)。

──「口笛吹いて働こう」もそうですが、劇中では「夢に見る ~Waiting On A Wish~」など、見事な歌声を披露されています。昨年、アーティストとしてデビューを果たしましたが、役として歌うのはどんな感覚ですか?

お芝居をずっとやってきたおかげだと思うのですが、役として歌う方がより感情を入れやすいような気がします。日頃から、ストーリーを自分なりに解釈して、役がどういうことを思って、どんなときに歌うようにしています。役として歌うほうが自分には慣れているのかもしれません。特にミュージカルが好きなので、同じような感覚で歌っています。

──ミュージカル「ピーター・パン」や「ロミオ&ジュリエット」で培った経験が吹替に生かされることがありましたか?

生かされていると思います。特にジュリエットを演じたときは、令嬢としての佇まいをかなり研究したんです。楽曲のキーも高かったので、普段の自分が話す声よりもだいぶトーンを上げた発声を心がけていました。そのおかげで、今回の『白雪姫』の楽曲も無理なく声が出せました。これまで舞台で培ってきたものが実際に活きています。

──俳優業でインプットして、アーティスト業でアウトプットできて、とてもいいバランスのように見えます。

自分の状態をちょうどよく保っていられるのは、そのおかげもあると思っています。自分でいる時間より、役でいたほうが楽だと思ってしまうぐらい、自分を否定していた時期もありました。アーティスト業という自分を表現しなければいけない機会をいただいたことで、自分が感じてきたことをしっかりアウトプットすることができるようになりました。俳優とアーティストの両方の側面があることで、自分の2本の足でしっかり立てているという感覚を持てるようになりました。徐々に地盤が固まってきた感じがしています。

時代とともに進化を遂げる“ディズニープリンセス”

Photo: © 2025 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

──改めて作品に触れたことで、「白雪姫」のキャラクターやストーリーにおける新たな発見はありましたか?

初めてアニメーションの『白雪姫』を観た頃は幼かったこともあり、そこまで深く考えていなかったように思います。かわいいなとか、7人のこびとと歌っているシーンが楽しそうだなとか。彼女が夢見る姿に共感したり、プリンセスのはかなさ、しおらしさみたいものに憧れていたようなところもあったと思います。ところが観返してみると、白雪姫って意外と大胆なんです。柔らかな口調ではあるんですけど、しっかり自分の意見を言います。

例えば、7人のこびとと一緒の場面では、おこりんぼがよく不平をこぼすのですが、うまくいなしてやりこめてしまいます(笑)。お姉さん気質もしっかり持ち合わせているプリンセスだったということに今回、改めて気づきました。本作は白雪姫のキャラクターがより立体的に楽しめるよう、構成されています。白雪姫の柔らかさに加え、歴代のディズニー・プリンセスが持っている凛々しさみたいなものが垣間見られて、とても魅力的なプリンセスになっています。

──歴史あるアニメーションが実写映画化されるということは、やはり愛され続けている理由があるからだと思いますが、今作からどんなメッセージを受け止めましたか?

この作品に触れ、一番に思ったのは、他者を思いやる気持ちの大切さです。白雪姫が成長していく物語ではありますが、それは誰かが差し伸べてくれる救いの手があってこそ。改めて、人は一人では生きていけないのだなということを感じました。実はディズニーの歴代のプリンセスを見ていると、それぞれが生まれた時代の背景がよくわかるんです。作られた年代によって、プリンセスのイメージがちょっとずつ違います。求められる女性像がその時々で変わっていっていることが見え隠れしています。

ディズニー初のアニメーションである『白雪姫』と、初の3Dで描かれた『塔の上のラプンツェル』では、同じプリンセスでも雰囲気、喋り方……まるで違います。もちろん、白雪姫はどの時代の誰もが憧れてしまうほど、申し分ないプリンセスですが、今回は1937年にアニメーションが作られたときの白雪姫のよさに、今という時代に公開するからこそのよさが加えられています。そんなふうに考えて観ていただくと、より一層、作品を楽しんでもらえるのではないでしょうか。

──今後の目標や理想像などを教えてください。

将来、自分の人生を振り返ったとき、「考え抜けるところまで考えた」と納得できるようでありたいと日頃から思っているんです。考えることは絶対に止めたくありません。一つの価値観にとらわれたくないので、どんな意見も受け入れられる耐性を持ち続けたいと思っています。柔軟にいろんな方の意見を聞いて、さまざまな言葉に触れていたい。どんなジャンルの作品にも挑んで、多面的な角度から物事を見ていたいです。

新しいことをどんどん知ることができるから、私はこの職業に就いているのだと思います。一つの作品を乗り越えたら、また次が待っていて終わりが見えない、モチベーションを保つのが難しいときもあります。それでも、新しい見解に触れ続けられる面白さは、魅力的でワクワクします

ほかの仕事では充足できないほどです。自分ではない、誰かの考え方について熟考したり、深めれば深めるほど奥が深くて、探究心がとめどなくあふれてきてしまいます。

これからも一つの思考に凝り固まることなく、疑問を持ち、考え続けたいです。同時に限りなくある判断基準の中で、自分がどんな選択をして進んでいくのかということも真剣に見つめていきたいです。どんな意見も理解できないからといって、簡単に突き返すことだけはしたくないですし、いろんな物事を受けいれられる人でありたい。もっと大人になって、いつか家庭を持つようになったら、家族の味方でありたいです。誰かの信念を否定しない、いつも優しい人でありたいと思っています。

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『白雪姫』
監督/マーク・ウェブ
音楽/パセク&ポール
出演/レイチェル・ゼグラー、ガル・ガドット、アンドリュー・ブルナップほか
プレミアム吹替版声優/吉柳咲良、河野純喜(JO1)、月城かなと ほか
https://www.disney.co.jp/movie/snowwhite-movie

Photos: Akihito Igarashi Styling: Naomi Banba Hair & Makeup: Eri Orihara Interview & Text: Aki Takayama

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