ミッションを原動力に、前に向かって突き進む。
── 仕事と子育てを両立するために工夫していることは?
仕事だけでも、私にはゲラン(GUERLAIN)と自分の会社があり……加えて娘がいて今妊娠中なのでも大変過ぎて、毎日必死なの! ここは嘘を付きません(笑)。心がけているのは、正しいと思うことをひたすらすること。娘の送り迎えもするし、お風呂に入れて食事を作って、寝かしつけてと、全部自分でしています。そして娘はまだ小さいですが、ひとりの人間としてコミュニケーションすることを大切にしています。肉体的には疲れますが、精神は充実しているという状態ね。
── モットーに「The Sky’s the limit(不可能なことは何もない)」を掲げられていますが、仕事のプレッシャーを感じることはない?
どんなに大役を任されても、恐怖や変なプレッシャーを感じるということはないわね。私は少し変わってるのかも(笑)。もちろん、自分のブランドをローンチする前など、不安で死ぬかもしれないと思うこともあります。でも、自分がしたいことは正確に分かっているし、ビジョンもあるし、それに向かって強くドライブがかかった状態で進んで行けば、不可能なことは何もないって思えるようになります。私は非常に頑固だと思うし、「やるときにはやる」という姿勢。周りのことはあまり気にしません。
あなたが世界で一番美しい、と娘にも伝える。
── 自分の美しさを自分で認めることが大事、とお話されていました。娘が自分を肯定するようになるために、母親として心がけていることは?
メイクアップをするときも、ドレスアップするときも、「母は楽しむためにしているのよ」と伝わるようにしています。そして、「あなたが世界で一番美しいのよ、パーフェクトな芸術作品なのよ」と言うようにしています。娘にはアジアの血が流れているので、アジア人がお姫様の絵本を読ませたいのだけれど、フランスでは白人がお姫様のものが多くて少し困っています。
妊娠発覚と同じタイミングでの新しいチャレンジ。
── 2021年にゲランのメイクアップ・クリエイティブ・ディレクターに就任。依頼を受けたときの気持ちは?
この話をいただいたときは自分のブランドがスタートアップの段階で、しかも子どもを出産して間もなかったので、余裕がある時期とはとても言えませんでした。でも、豊かな伝統を持つフランスの象徴的なブランドに携われるのは大変名誉なことで、チャンスだと思ったんです。その後、ゲランの過去と未来の話をディスカッションしていくなかで、決心がつきました。
── ゲランは、10年以上前からサステナブルな開発を企業戦略に取り入れていますね。
ゲランは、エコデザインや生物多様性の保全、気候変動への対応、女性支援など、多角的に環境や社会活動に取り組んでいます。よい会社であるためにTO DOリストをこなしていくというのではなく、地球のために根本的な解決策を探り、実行しているブランドです。その点も、ゲランに参加したいと決めた大きな理由。ブランドをリードする立場になったので、私も活動にコミットして、自分ができることを考えてアクションしたいと思っています。
── 最後にあなたのフォロワーである日本人にメッセージをお願いします。
とにかく日本に行きたいです! 小さいころから、日本文化に恋をしていました。そして、微力ながら、日本の方々に、自分はそのままで美しいのだともっと感じてもらえるようなお手伝いをしたい。自分の外見を卑下することなど全くないのだと気づいてもらえたら、私はいい仕事をしていると言えると思います。
Profile
ヴィオレット
ゲランのメイクアップ・クリエイティブ・ディレクター。フランス出身。2015年から活動拠点をアメリカに移し、ディオールのメーキャップデザイナーを経て、エスティ ローダーのグローバルビューティディレクターを務めた。世界中の様々な雑誌とコラボレーションするほか、自身のブランド「VIOLETTE_FR」を手掛け、登録者数30万人を超えるYouTubeチャネルでも美容情報を発信。2021年から現職。
Text: Kyoko Takahashi Editor: Kyoko Muramatsu