今は何に対してもコメントで反論できる時代だ。最近、アンジェラ・バセット、ミシェル・ヨー、ジェニファー・クーリッジなど、還暦を過ぎた俳優たちが評価され、さまざまな賞を受賞するのを見て感動したとSNSに投稿したら、ある女性に「彼女たちは有名人だから」と否定された。確かに、彼女たちのサクセスストーリーは、私たち一般人の日常生活からは遠い話に聞こえるかもしれない。それでも、浮世離れしたハリウッドさえも、エイジズムに抗うことはできない。財力や特権で一時的に若さを保つことができたとしても、老いそのものから免れるのは不可能だからだ。それ故に、若くなくても成功できるという言説は、すべての人に関係するものなのだ。
ハリウッドにおける女性とエイジズムをめぐる議論は目新しいものではないが、今年はいつもと違う感じがする。なぜなら、現時点で成功を収めた60過ぎの女性は一人でなく、何人もいるからだ。その全員が、これまでの受賞スピーチやレッドカーペットのインタビューで年齢について言及している。
ゴールデン・グローブ賞で助演女優賞を受賞した64歳のアンジェラ・バセット(同じく64歳のジェイミー・リー・カーティスとともに第95回アカデミー賞で助演女優賞にもノミネートされた)は「忍耐力」が必要だと話し、主演女優賞を勝ち取ったミシェル・ヨーは、60歳になってチャンスが減ってきていることに気づいたと明かした。そして、61歳のジェニファー・クーリッジは、クリティクス・チョイス・アワードの受賞スピーチでこう述べた。「希望を捨てた人たちへ。死ぬまでチャンスは無くならないから諦めないで」
「何かを成し遂げるのに、年齢は関係ない」
私は今、変化が起きていると感じている。エイジズムをめぐる話題は、これまで、単に年齢差別が存在することを認めてもらうことに重きが置かれていた。もちろんそれは必要なことではあるが、そのおかげでいかにして差別をなくし、未来を再構築するかという、本来取り組むべき現実問題に目がいかなくなっていた。また、インスタグラムの投稿では伝わらない、「何かを成し遂げるのに、年齢は関係ない」というメッセージの意味がより明確になってきている。20代と30代が成功の鍵を握り、あらゆる世代が成功できるようなシステムが確立されていない社会で暮らしていたら、多くの人は諦めてしまうだろうし、継続するという選択肢などないものだと思ってしまう人もいるだろう。42歳の私は、すでに自身のキャリアのピークが過ぎてしまったのではないかと考えて心配になることもあるが、自分より年上の女性の活躍を目にすると、自ら自身の輝きを絶つようなことはしたくなくなる。
この業界で働く私がこんなことを言うと驚かれるかもしれないが、私たちは、高齢者はテクノロジーが苦手で、認識力や身体能力が低下していると繰り返し言われる年齢差別の社会に生きている。例えば「年齢を感じさせない人」を単に「素敵」と褒めずに、「年齢を感じさせない」と褒めたりする。職場での年齢差別は実際に存在し、40代前半の女性は同じ年代の男性よりもずっと差別を受けやすくなる。そして、その差別的な言葉や態度を、「自分は無能だ」と信じ込んでしまうくらいまで徹底的に受け入れてしまうこともあるのだ。
いつかあなたの道が正しいと、世界が認めざるをえない日がやって来る
そのため、「自分には無理だ」というネガティブな思い込みと向き合うことが重要になってくる。今ハリウッドで起きていることは、年齢を問わず、時代精神(新旧の思想が混じり合った、時代を特徴づける独特の精神)が加速していることを物語っている。具体的には、40~50代、あるいは60~70代、さらにその上の世代の女性たちが、自分たちの声を聞き入れてもらえるように自らの存在をアピールする動きが広がっている。彼女たちは何歳になってもあらゆる可能性があることを証明するロールモデルとなり、SNSを使って積極的に発信したり、中年期とそれ以降に関する本を執筆したり、ポッドキャストで健康や成功について語ったりと、さまざまな手段で世の中の考えの見直しを迫っているのだ。
テクノロジー、ファッション、アート、SNS、ポッドキャスト、文学など、さまざまな業界の上で生きる私たちは、年齢を重ねることの意味を再定義している真っ最中だ。若者中心のTikTokでさえ、40代~60代の利用者も多く見られ、人生の選択やファッションの定義、あるいは運動能力をめぐるこれまでの決めつけ思考を覆している。重要なのは、若い層に馴じんだり同化したいということではなく、何ができて何ができないかを社会に勝手に判断されることにうんざりしている層が、新しい道を切り拓いているということだ。
ハリウッドで活躍するマチュアな女性たちからのメッセージは、「何歳になっても成功できる」というだけではない。時に反撃し、前進を続け、チャンスをつかみ続けること。そして例え周囲がどう言おうと、決して自分自身を見限らないこと。いつかあなたの道が正しいと、世界が認めざるをえない日がやって来るから──これらこそが、彼女たちが私たちに伝えたい言葉なのだ。
Text: Poorna Bell Translation: Rieko Shibazaki Adaptation: Motoko Fujita
From VOGUE.CO.UK