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カール・ラガーフェルドのクリエイションを刺激してやまない歴代ミューズたち。

36年に渡ってシャネル(CHANEL)のデザイナーを務め、世界中からリスペクトされるカール・ラガーフェルド。ファッション業界に君臨する帝王がショーやキャンペーンなどに起用するのは、世界でも指折りのモデルだけだ。9月10日の誕生日を祝して、イネス・ド・ラ・フレサンジュからカーラ・デルヴィーニュまで、彼の歴代ミューズたちを振り返ろう。

時代を映し出すミューズ起用の先駆者。

クロエ(CHLOÉ)のデザイナーを務めていた当時のカール。イネス・ド・ラ・フレサンジュをモデルにフィッティング中。1983年。Photo: Pierre Vauthey/Getty Images

あまたのスーパーモデルの中でも、シャネル(CHANEL)フェンディ(FENDI)を牽引するカール・ラガーフェルドのクリエイティビティを触発しつづける女性は、ほんの一握りだ。彼に起用されるということは、ファッション界における最高の地位を約束されたことを意味し、外見の美しさだけではない独自のスタイルを持つ女性のみに許される特権だ。歴代ミューズを務めてきた女優、ミュージシャン、モデル、親しい友人、時に男性たちは、カールが解釈するその時々の時代精神、美意識やムードの代弁者となって、さまざまな場所で表現してきた。

こうした「ミューズ」の存在をファッション業界にもたらしたのは、ほかでもないカールだ。今では恒例になりつつあるが、カールは1980年代初期のイネス・ド・ラ・フレサンジュを皮切りに、ミューズとクリエイティブ・パートナーを結ぶ先駆者となった。イネスが起用されるや否や、彼女は単なるマネキンでもキャンペーンモデルでもなく、彼のスタジオのクリエイティブ・パートナーとして、新作デザインに影響を与えるまでになった。そして、ブランド初となるオフィシャル・アンバサダーとしての役割も務めるに至ったのだ。2011春夏コレクションでは、約20年ぶりにランウェイに復帰したのも記憶に新しい。

そして、イネスとのパートナーシップ以降、クリステン・マクメナミーリンダ・エヴァンジェリスタクラウディア・シファーステラ・テナントケンダル・ジェンナーといったスーパーモデルたちが、カールのミューズとして、コラボレーションを果たしてきた。

「人生と仕事とは、我を忘れること」

2016年3月、2016-17秋冬コレクションのショーにて。ハドソンの父親は、世界で最も美しい男性TOP100に選出されたトップモデル、ブラッド・クローニング。両親の遺伝子を受け継いだ、堂々としたウォーキングもお見事。Photo: Dominique Charriau/WireImage

カールはまた、いわゆるモデルだけでなく、ハリウッドを象徴する女性たちにも賛美を惜しまなかった。ダイアン・クルーガージュリアン・ムーアティルダ・スウィントンクリステン・スチュワートたちが、カールのデザインを纏い、そのデザイン哲学を体現してきた。

彼には、類稀なる先見の明があったのだろう。過去10年間には、リリー・アレンマイリー・サイラスウィロー・スミスなどを才能を見出している。また、カールが名付け親まで務めた10歳のハドソン・クローニングは、シャネル(CHANEL)のショーに幾度となく登場し、カールと手を繋いでフィナーレに登場するのが今やお決まりだ。その他、帝王が「私のもう一つの目」と賞賛したクリエイティブ・コンサルタントのアマンダ・ハーレックなども、彼のミューズとして欠くことのできない存在だ。

カールはかつて、スージー・メンケスとのインタビューで次のように語っている。

「人生と仕事とは、我を忘れること」

カールは決して過去を振り返らない。常に前を見つめて前進する彼の創造性に対する執着が、新時代の顔となる女性たちとの出会いを呼び寄せ、ともに新たな文化を生み出し続けるのだ。

85歳にして最前線を突き進むカールの誕生日を讃えて、時代を映してきたミューズたちを振り返ろう。

1990年、パリのパーティーに現れたカトリーヌ・ドヌーヴと。Photo: Foc Kan/WireImage
〈左から〉1990年に撮影された、リンダ・エヴァンジェリスタカール・ラガーフェルドカーリーン・サーフアナ・ウィンター。アナとカールは、長きに渡って公私ともに深い親交を育んできた。Photo: Ron Galella/WireImage
シャネル(CHANEL)のショー直前に、クラウディア・シファーのスタイリングを最終チェック。1992年。Photo: Ian Cook/The LIFE Images Collection/Getty Images
シャネル(CHANEL)1996-97年秋冬オートクチュールコレクションにて、ステラ・テナントと。Photo: Stephane Cardinale/Sygma via Getty Images
1997年、クリステン・マクメナミーの結婚式では、彼女の手を取ってヴァージンロードを歩いた。Photo: Dave Benett/Getty Images
1996年からシャネル(CHANEL)のクリエイティブ・コンサルタントを務めるミューズ、アマンダ・ハーレックと。Photo: BILLY FARRELL/Patrick McMullan/Getty Images
2009年、ケイト・モスと。時代の変化に敏感なカールは、早くからケイトを起用したデザイナーのひとり。Photo: Stephane Cardinale/Corbis/Getty Images
カールをして「ファッションリーダー」と言わしめた、アレクサ・チャン。写真は、2010年にパリにて。Photo: Michel Dufour/WireImage
2011年のMETガラには、女優ブレイク・ライブリーとともに出席した。Photo: Kevin Mazur/Getty Images
シャネル(CHANEL)2012年春夏コレクションのショーのフィナーレは、フローレンス・ウェルチと連れ立って現れた。Photo: Dominique Charriau/WireImage
シャネル(CHANEL)2012年クルーズコレクションのショー会場にて、ティルダ・スウィントンと。Photo: Pascal Le Segretain/Getty Images
1990年代から幾度となく広告キャンペーンに抜擢されている、ダイアン・クルーガーと。2012年。Photo: Michel Dufour/WireImage
クリステン・スチュワートは、2014年にシャネル(CHANEL)の新しい顔に選ばれた。Photo: Bertrand Rindoff Petroff/Getty Images
2013年、ヴァネッサ・パラディと。1991年にフレグランス「COCO」のキャンペーンモデルに選ばれて以来、深い親交を持っている。Photo: Bertrand Rindoff Petroff/Getty Images
2009年に、シャネル(CHANEL)のハンドバッグのキャンペーンモデルに抜擢されたリリー・アレン。以後、新曲のヒットのたびに、自分へのご褒美としてシャネルのハンドバッグを購入するそう。Photo: Bertrand Rindoff Petroff/Getty Images
10年以上にわたり、フレグランス「ココ マドモアゼル」の顔を務めているキーラ・ナイトレイ。2014年。Photo: Michel Dufour/WireImage
ジュリアン・ムーアは、2015年アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した時、カールがデザインしたシャネル(CHANEL)のドレスを纏って授賞式に臨んだ。Photo: Stefanie Keenan/WireImage
新たなモデルの起用にも積極的なカールは、2015-16年秋冬オートクチュールコレクションで、ケンダル・ジェンナーとフィナーレを歩いた。Photo: Stephane Cardinale/Corbis/Getty Images
強い個性の持ち主であるカーラ・デルヴィーニュも、カールのお気に入りのひとり。2016年。Photo: Rindoff/Le Segretain/Getty Images
2016年に新アンバサダーに就任した、俳優ウィル・スミスの愛娘、ウィロー・スミス。Photo: Rindoff/Le Segretain/Getty Images
2017年1月に開催された2017春夏オートクチュールコレクションのフィナーレには、ヴァネッサ・パラディジョニー・デップの娘、リリー=ローズ・デップとともに登場。Photo: Stephane Cardinale - Corbis/Corbis via Getty Images

Text: Kasia Hastings