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ファッションが奏でる「音」は、どっしりした低音で体を揺らすベースのサウンドのように、次から次へと新しいイメージに目を奪われる私たちに刺激を与えてくれます。「Gilded Glamour(金色に飾られた魅力)」という今年のメットガラのテーマを一番見事に表現していたのは誰だったでしょう? ビリー・アイリッシュはサステナブルなグッチ(GUCCI)のコルセット・ドレスで登場し、カーディ・Bはゴールドのチェーンをふんだんに用いたヴェルサーチェのドレス姿で会場を彩りました。4月には、3年ぶりに待望のコーチェラ・フェスティバルも開催され、中国系のデザイナーが手がけるWINDOWSENのエッジィなカスタムドレスをまとったリゾや、ヴァレンティノ(VALENTINO)のランウェイから直送されたショッキングピンクの衣装でパフォーマンスを披露したコナン・グレイなど、ファッションと音楽の豪華な競演のパレードのようでした。
リアーナは音楽×ファッションを体現する唯一無二の存在。
ソーシャルメディアで大量のイメージが消費される中で、カメラ映えするルックの需要は増えるばかりです。こちらのステージでも、最高レベルのパフォーマンスを見せているのがミュージシャンです。毎日のように、ファッション通をうならせるルックを繰り出す必要が生まれる中で、これまで知られてこなかったブランドがスポットライトを浴びる例も相次いでいます。この音楽とファッションの共生関係が強力な後押しとなって、新しい、アバンギャルドな若いスターが多くの人の目に触れるようになり、ウルトラ・クリエイティヴなファッションをめぐる新たなビジネスが生まれるのにも一役買っています。となれば、ここでリアーナに触れないわけにはいきません! 今月号では、音楽界でも屈指のファッショナブルなアーティストとして知られるリアーナの、輝かしいスタイル遍歴を振り返っています(p.084)。
宇多田ヒカルが語る「音楽と私」。
ファッションと音楽がクロスオーバーする祭典、コーチェラ・フェスティバルと言えば、今月号のカバースター、宇多田ヒカルもアジア圏のアーティストを世界へ向けて発信するメディアプラットフォーム、88risingが主催するステージに立ち、そのセットリストでオーディエンスをノックアウトしました。ロンドンでの表紙撮影には私も立ち会いましたが、サカイ(SACAI)のデザイナー、阿部千登勢とカルティエ(CARTIER)によるプロジェクト「TRINITY FOR CHITOSE ABE of sacai」をつけた宇多田さんが、カメラがシャッター音を響かせる中、自ら持ち込んだプレイリストから流れる、ロザリアの曲に合わせて体を揺らしていた姿が印象に残りました。
初となるヴォーグのカバー登場に伴うインタビューでは自身のパーソナルな面についても、とても率直に語ってくれました(p.066)。宇多田ヒカルというアーティストが今を生きるあらゆる日本のミュージシャンに、大きなインスピレーションを与えていることは間違いありません。
Awichが描くクイーンダムの始まり。
日本発の新たな才能をフィーチャーしたポートフォリオでは、サクセスストーリーを現実のものにしたラッパー、Awichが登場します(p.080)。3月に行われた自身初の日本武道館公演ではストリートウェアがメインのスタイルからがらりとイメージを変え、ナイキ(NIKE)のアパレルを素材に、デザイナーの小泉智貴が制作したルックに身を包んで登場しました。
くじら×yama、WurtS、すりぃetc.、“アノニマス”な4人の気鋭が初登場。
また、「Anonymous Musicians」(p.074)では、イマジネーションを何よりも大切にする、日本の才能あふれる若きアーティストを紹介しています。ソーシャルメディアに真剣にノーを唱えるその感性も注目に値しますが、イラストやアニメがまた新たな面から目と耳に刺激を与えてくれるのも、日本独特のものに感じられます。あえて素顔を晒さない姿勢を貫いているところもこうした魅力の要因になっているのでしょう。
そしてもちろん、音楽とファッションが織りなす物語のそもそもの発端は、デヴィッド・ボウイとデザイナーの山本寛斎の、伝説的なパートナーシップです。ボウイの有名なオルターエゴ、ジギー・スターダストも、ここから生まれたものでした(p.064)。日本のファッションデザインは、史上もっとも名高い数々のルックを創り出すのに大きな役割を果たしてきました。そして私たちヴォーグ ジャパンも、ファッション界に羽ばたく、日本の次世代の才能をサポートしていきます。さて、このレターに添えたセルフィーは日本のオフィスで撮影したもの。ついに東京に戻ってきました。これから、私も日本で、新たな才能に出会う旅をスタートします!
Text: Tiffany Godoy Translation: Tomoko Nagasawa