8月30日(月)~9月4日(土)に「Rakuten Fashion Week TOKYO 2022 S/S」が開催された。楽天が日本発のファッションブランドを支援するプロジェクト「by R」では、ホワイトマウンテニアリング(WHITE MOUNTAINEERING)が初めて本格的に取り組んだというウィメンズを披露し、カラー(COLOR)は電車の通路をランウェイにするなど演出の面白さを追求。総勢49のブランドが参加した。今回はその中から、注目の5ブランドを振り返ろう。
デザイナーの岡崎龍之祐は東京藝術大学デザイン科卒。「これまでアートとして発表することが多かった」という作品を初めてファッションショー形式で発表した。テーマは「祈り」。たとえばファッション的な視点で見ると「スポーティなライン」は「現代における祈りの装飾、造形の体現」、「ポップな色柄」は「人もその一部である自然界の表現」といった具合にディテールにはそれぞれ深い考察が宿っている。
これまでもファッション界にはコンセプト重視で奇抜な造形を特徴とするブランドはたくさんあったが、リュウノスケオカザキ(RYUNOSUKEOKAZAKI)はそれらとは違う。今回ファッションをより強く意識した見せ方を試みたせいなのかもしれないが、時代の空気やムードを無視してただ個性を貫いているのではなく、ファッションにおいて重要な、「今」が感じとれるのだ。ただ、世界に通用するパワフルなクリエーションではあるものの、日常に着るには難しい服。ファッションを構成する重要な要素のひとつ、「ビジネス」とこれからどう付き合っていくのか、今東京で一番目が離せないブランドだと言える。
先日、『VOGUE JAPAN』の「編集長×デザイナー対談」で「アートや建築にインスピレーションを得る」と語っていたミカゲ シン(MIKAGE SHIN)のデザイナー進美影が今季テーマに掲げたのは、「分離派建築会」。近代化が進む1920年代に日本で新しい建築のあり方を主張した新星たちの運動に現代の状況を重ね、スーツの要素や大理石の柄、手描きの田園柄の生地、彫刻的な布づかいで”都市と田園“、”彫塑的なもの“という彼らの特徴を表現した。オープニングは男性モデルが飾り、サイズ展開も豊富にしてジェンダーレスなものづくりをさらに加速。リサイクル素材やトレーサビリティ認証を得た素材を使用するなど、引き続きサステナビリティに注力している。
ディーベック(D-VEC)はフィッシングブランド「ダイワ」の技術力をベースとし、2017年にスタートしたファッションブランド。今季はコロナ禍でステイホームが続く時勢も鑑みて「FUSION(境界線をなくす)」をテーマに、オンとオフをシームレスに融合させた素材やデザインを提案した。フィッシングのために開発された撥水加工など、高度なテクニックを駆使。スタイリングはまるでハーネスのような肩掛けタイプの膨張するライフジャケットやボリューミーなブーツなど、デザイン性にも申し分ないダイワのアイテムも使用した。
ハイク(HYKE)は、カメラワークを駆使して服をさまざまな角度から映した映像で発表。いつものようにミリタリーやワークウェアなどをベースとしたクリーンで品格のあるものづくりで、今季は黒やベージュといったシックなカラーパレットに鮮やかなブルーやデニムがポイントとなっている。ビューティフル シューズ(BEAUTIFUL SHOES)やチャコリ(CHACOLI)とのコラボラインは継続しているが、新たにポーター(PORTER)の製品を再構築したヘルメットバッグ2型が登場した。
通常メンズのスケジュールで発表を行っていることから、チノ(CINOH)は今回オンライン発表を選択。デザイナーの茅野誉之は、コロナ禍でさまざまな考え方が渦巻くのを目の当たりにし、「今シーズンは普段よりも平和的で優しさを感じるスタイルを作ろう」と思い立ったという。モード界でも重要な課題となっているSDGsがヒッピー思想と通じ、それが現代のムードにも「ちょうどよい」と感じたことからテーマを“Flower Children”に。デザインや品質に納得のいくものであれば積極的にサステナブルな素材を用い、柄やシルエットで70年代のムードのエレガントな表現をめざした。