2月1日の国会審議会で岸田文雄首相が「家族観や価値観、そして社会が変わってしまう課題なので、社会全体の雰囲気のありように思いをめぐらせた上で判断することが大事だ」と発言してから早1カ月が経った。その後も、荒井勝喜首相元秘書官が「見るのも嫌だ」と記者団に語り、岸田政権への批判の声は日本だけでなく世界にも一気に広がった。
国会ではLGBT理解増進法案に向けた動きがありつつも、2月28日にまたしても首相は「少なくとも同性カップルに公的な結婚を認めないことは、国による不当な差別であるとは考えていない」と、同性婚の法制化に関して従来通りの解釈を改めて強調した。でも実際には、同性カップルが法的な結婚の必要性を訴えていて、子どもを産み育てている家族はたくさんいる。異性カップルは結婚ができるのに、性を理由に結婚できない人がいることについて、何をもって「差別ではない」と言い切れるのだろうか。G7で唯一導入されていない差別禁止法や同性婚の法制化は急務だ。
LGBTQの親と暮らす子どもたちが送る、総理への手紙
こうした中、子育てをするLGBTQの家族をサポートする団体「にじいろかぞく」は、「#岸田総理に手紙を書こう!プロジェクト」を開始した。ことの発端は、政界の差別的な発言を聞いたLGBTQの親をもつ子どもたちからの、素朴でストレートな質問からだった。
「ぼくらは普通に暮らしてるだけなのに。どうしてそんなことを言うんだろう? 」
「日本にも、私たちみたいな家族がたくさん暮らしてるんだってことを、総理は知らないから心配しているのかな?」
そこで、ひとつのアクションとして、岸田首相へ手紙を書くことを親が子どもたちに提案したところ、子どもたちがイラストや自分たちの思いを綴ったハガキを岸田首相宛てに投函。次第に賛同者が増え、プロジェクトへと発展した。小学生の姉妹のハガキには、自分の家族を描いたイラストとともに、こんなメッセージが書かれていた。
「ママたちにけっこんさせてあげたい。なんで女どうしはけっこんできないのですか? べつにけっこんをしても ただけっこんをするだけで それいがいがかわるわけじゃないのに」
一人ひとりの声が、大きなうねりに
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首相官邸宛に届いた手紙は、一般的に担当部局や内閣官房で読まれ、適宜対応されることになっている。実際に、首相から返事がくるケースも過去にはある。一人ひとりの声が集まって大きなうねりになることを願って、プロジェクトに参加してみよう。LGBTQの当事者だけでなく、理解・支援するアライの人も、子どもも大人も、誰でも参加できる。
【参加方法】
1. 岸田首相への要望などを、ハガキや便箋に書く。
2. スマホでハガキの写真を撮影。
3. ハッシュタグ「#岸田総理に手紙を書こう」「#LGBTQsファミリー」「#にじいろかぞく」「#結婚の自由をすべての人に」などをつけてSNSで投稿。他の投稿も是非リツイートを!
4. ハガキの裏面にあて先(〒100-8981東京都千代田区永田町2-2-1 衆議院第1議員会館1222号室 内閣総理大臣 岸田文雄様)を書き、63円切手を貼ってポストに入れる。
4月22~23日に開催される東京レインボープライド2023会場でも、にじいろかぞくの運営するブースのほか、賛同した他のブース内でもお手紙を書けるコーナーを設ける予定だ。また、Twitterやインスタグラムのハッシュタグ「#岸田総理に手紙を書こう」を検索すると、賛同者たちのハガキや手紙を見ることができる。
「にじいろかぞく」共同代表で、「結婚の自由をすべての人に」(同性婚)訴訟東京原告のひとりでもある小野春は、今回のプロジェクトと同性婚の法制化について、こんな思いを語ってくれた。
「自然発生的に始まった今回のプロジェクトを通して、改めて子どもたちの真っ直ぐで核心をついた質問に、問題の本質をよく理解していることを感じました。そして親にとっても、子どもたちの考えを聞くチャンスになり、嬉しい機会でもありました。
訴訟を開始してからの4年間、変化を肌で感じています。現在、差別禁止法はなかなか通らず、理解増進法も危うい状況にあることに危機感はありますが、政府や法律が追いつけていないだけで、世の中は同性婚やLGBTQの権利を自然に受け止め、社会はアップデートされている段階にあると感じます。また、先日は超党派議連の総会に出席し、野党や公明党は基本的に賛成を名言し、自民党の中にも個人的に賛成意見を示す議員も現れ、大きな前進を実感しています」
Text: Mina Oba
