LIFESTYLE / CULTURE & LIFE

2021年はブラックミュージシャンがアツい! プレイリストに追加すべき9人。

2021年は、スターダムにのし上がりそうなブラックミュージシャンが目白押しだ。ドレイクに絶賛されたムスタファから、ルイ・ヴィトンやセリーヌも惚れ込んだルース・アンド・ザ・ヤクザまで、才能あふれる彼らを今すぐプレイリストに追加して。
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今、音楽業界全体ではかつてないほどのカルチャーミックスやコラボレーションが起きている。特にアフリカ音楽が盛り上がりをみせる中、ブラックミュージックの土壌は今までになく豊かだ。

ウィズキッド(WizKid)、ディヴィッド(Davido)、バーナ・ボーイ(Burna Boy)などのアフロビートアーティストが国際的スターの座を獲得し、アフロハウスはエレクトロシーンの中心になりつつある(Black Coffee、DJ Maphorisa、Kabza De Smallなどを考えてみてほしい)。また、へディー・ワン(Headie One)や故ポップ・スモーク(Pop Smoke)など、重いビートに荒いラップを乗せたドリルミュージシャンは、世界中の批評家とビジネスの注目を集めている。

そこで『VOGUE』が注目する、2021年にその名を響かせるであろう新進ブラックミュージシャン9人を紹介しよう。

1. ブリー・ランウェイ(Bree Runway)

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ド派手なスタイルにも注目! 多彩な次なるポップスター。

ガーナ系イギリス人で次のスーパースター候補のブリー・ランウェイは様々な顔を持つ。「All Night」では柔らかな歌声のディーバとして、ミッシー・エリオットが認めた「APESHIT」ではカリスマ・ラップスターとして、最新シングル「LITTLE NOKIA」では華麗なパンクポップ・プリンセスとしての魅力をみせている。

ヴィクシーエンジェルとして知られる、モデルのレオミー・アンダーソンの親友でもあるブリー。ファッション感度も高い彼女が作り上げる華やかなヴィジュアルは、ノスタルジックであると同様にフューチャリスティックだ。2000年初頭に一斉を風靡したセレブ御用達のラグジュアリーストリートブランド、ヴォン・ダッチ(VON DUTCH)に宇宙的なデザインや網タイツ、モヒカン、12cmの長いアクリルネイルを融合したような感じ、といったところだろうか。

「Maliibu Miitch」やEP『Be Runway』、ミックステープ『2000and4Eva』と、デビューから一連のリリースの成功が、彼女が英国で最も多才で、革新的で、働き者の次期ポップスター候補であることを証明している。

2. ルース・アンド・ザ・ヤクザ(Lous and the Yakuza)

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ファッション業界も注目する、ボーダレスな新星。

コンゴ生まれのベルギー人アーティスト、ルース・アンド・ザ・ヤクザ(本名マリー=ピエラ・カコマ)は、2019年にシングル「Dilemme」のミュージックビデオを発表し、彼女の意図を明確に掲げてみせた。見事に融合された歌とラップ、ブラックであることを全面に打ち出したイメージ、そして堂々たる威厳とアンダーグラウンド感のコントラスト。それは当惑と抵抗を引き起こしつつ、すぐに拡がっていった。

以降も、彼女は心を揺さぶる独特の楽曲を発表し続け、エル・グインチョ(スペインの歌姫ロザリアのアルバム『El Mal Querer』のプロデューサー)がプロデュースした輝かしいデビューアルバム『Gore』をリリース。また、クロエルイ・ヴィトンアディダスの顔として抜擢されるなど、華やかなヴィジュアルと確固たる信念を持つ彼女をファッション業界も見逃さなかった。

インスタグラムには約30万人近いフォロワーを持ち、新進アーティストが作品を発表する音楽プラットフォーム「COLORS」にも登場するなど 、「ヤクザ」(ルースのアートコミュニティ名)の支持は広がるばかり。自身が移民であることの幅広い文化的な繋がりを利用し、自己表現のための言語を超越した世界共通語を独自に作り上げている。

3. パ・セリー(Pa Salieu)

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バーバリーを纏った、イギリス在住のアウトサイダー。

イギリスとガンビアをルーツに持つラッパーのパ・セリーの楽曲は、サラウンドスピーカーで大音量でプレイしたくなる。独特な低音で響く頭から離れないメロディーラインと即興のボーカルスタイルで、初めからひとつのジャンルに限定されない作品を生み出してきた。

イギリスのコヴェントリー出身の彼が抱える、よそ者としてのメンタリティーと意欲は、「Dem A Lie」、「Frontline」、「Betty」において、有利に働いたと受け取れる。彼の全身から、複雑な過去(2019年に地元で銃で撃たれて負傷)と未来への大望から生み出された不屈の精神が発散されているようだ。

2020年はバーバリーのキャンペーンを成し遂げ、シングル「My Family」でBackRoad Geeと扇動的なコラボを実現、絶賛されたミックステープ『Send Them To Coventry』は、イギリスで今年最も人気を集めたプロジェクトの1つとなった。彼は2021年にスターダムにのし上がる準備万端だ。

4. ムスタファ(Mustafa)

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ザ・ウィークエンドにも楽曲提供。叙情的に歌い上げる詩人兼シンガー。

ドレイクがSNSで絶賛したことでも話題となった、カナダのトロント出身の詩人でシンガーソングライターのムスタファ。2020年3月に音楽キャリアをスタートさせたばかりだが、既に世界的な注目を集めている。

カナダのクリエイティブシーンで「Mustafa the Poet」(詩人のムスタファ)として有名になり、ヒップホップコレクティブ、ハラール・ギャング(Halal Gang)を共同で設立。その後、作詞作曲に転向し、ザ・ウィークエンド(The Weeknd)カミラ・カベロ(Camila Cabello)の制作者リストに名を連ねている。

デビューシングル「Stay Alive」のプロデュースを手掛けたのは、カニエ・ウェストやドレイク、リアーナなどを手掛けるフランク・デュークスとジェイムス・ブレイク(James Blake)。銃による暴力で亡くなった友人を追悼するために、トロントの低所得者用の公共団地でミュージックビデオを撮影し、カナダのストリートの声を届けた。貧困層の間で起きている問題を広く認知させるとともに、コミュニティの仲間たちに生き続けるよう優しく懇願する。

続いて発表された同じく叙情的な「Air Forces」、そして「Come Back」を披露したジェイムス・ブレイクとの親密なライブセッションからも、ムスタファが現在音楽を生み出している最も貴重な若手シンガーのひとりであることがわかる。

5. ビーム(BEAM)

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経験豊富なプロデューサー上がりの才能あふれるラッパー。

ジャマイカ生まれでマイアミ育ちのラッパー、ビーム(本名:タイシェイン・トンプソン)は、2019年末にリリースされた驚異的なデビューEP『95』でミュージックシーンに登場した。しかし、プロデューサーからアーティストに転向した彼が、ヒップホップ界からの注目を集めたのは、2020年1月の「COLORS」のセッションで披露した、エッジの効いた歌声とカリスマ性あふれる、鳥肌ものの「2x2」のパフォーマンスだった。

その後、米公共ラジオ局「ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)」の「NPR Music's Tiny Desk (home) Concert」では、ラッパーのエム・アイ・エー(M.I.A)とともにミニコンサートを行い、サッカーゲーム『FIFA 21』のサウンドトラックにも選ばれた。

伝説的なダンスホールとゴスペルレゲエのパイオニアであるパパ・サン(Papa San)を父に持つBEAMは、同年代以上の豊かな音楽経験を持つ。トゥー・チェインズ(2 Chainz)からトゥエニーワン・サヴェージ(21 Savage)まで様々な楽曲プロデュースに参加し、コラボ参加したメジャー・レイザー(Major Lazer)の「Rave de Favela」グラミー賞にノミネートされた。

現在、ビームのソロとしての楽曲は、ブロックハンプトン(BROCKHAMPTON)やプレイボーイ・カーティ(Playboi Carti)などのアーティストと同じ、ラフでダークなサウンド分野に部分的に属している。しかし、カリブ海西インド諸島特有の速さでパワーアップし続けている彼が、今後どの方向へ進んでいくのかはまったくわからない。

6. テムズ(Tems)

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パワフルな歌声を響かせる、ナイジェリア発のオルタナティブR&Bシンガー。

ナイジェリア人シンガーのテミレイド・オープニイ、別名テムズが、2019年にデビューしたばかりだとは信じがたい。アリーヤ(Aaliyah)、アシャ(Aṣa)、フランク・オーシャン(Frank Ocean)の音楽に囲まれて育った彼女のサウンドは、複数ジャンルのミックスでありながら、まったく新しい若々しさを感じさせるものだ。自分を見つめながらパワフルに表現するバランスの良さ、引き込まれてしまうような情熱的な歌声には、心を浄化してくれるパワーがある。

挑戦的なシングル「Try Me」で話題をさらい、世界的なメディアの評価を獲得。ナイジェリア最大のカルチャー雑誌『Native』の表紙を飾った。さらには、ナイジェリアのスター、ダヴィド(Davido)と並んで、カリード(Khalid)のリミックス「Know Your Worth」でコラボレーションも果たしている。様々な表現を見せたデビューEP『For Broken Ears』で、テムズは若手ソングライターの地位を確立したといえるだろう。

7. バーウィン(Berwyn)

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デビュー前から話題。BBCが選ぶ2021年のニューカマーに選出!

2020年の初め、イギリスの名門インディー・レコードレーベル「XLレコーディングス」の『EverythingIs Recorded』プロジェクト第2弾の複数の楽曲に参加し、ヘディー・ワン(Headie On)&フレッド・アゲイン(Fred Again)のコラボレーションシングル「GANG」のリミックスにも参加。謎に包まれたバーウィン(Berwyn)の名が話題となった。

その後、ソロとしての一連のリリースと、6月に英BBCの音楽番組「Later… With Jools Holland」でテレビ初出演したことで、その疑問の一部は解消されたようだ。シングル「GLORY」で扇情的なパフォーマンスを見せ、世界中で爆発的に広がる人種問題の議論に対するフリースタイルを披露。真実を伝えるために恐れを知らないミュージシャンだと、世間に印象づけた。

9月には、待望のデビューミックステープ『DEMOTAPE / VEGA』を発表し、大きな注目を浴びることとなった。BBCが選ぶ、2021年ブレイク必至の新人アーティスト<Sound of 2021>では3位を獲得。トリニダード生まれで英エセックス育ちのバーウィンが、2021年に大きな飛躍を期待させる、驚異的なアーティストであることは確実だ。

8. デュア・サレー(Dua Saleh)

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詩人、活動家、役者の顔をもち、『セックス・エデュケーション』に出演決定。

スーダン系アメリカ人の活動家、詩人、そして最近ではミュージシャンとして活動するデュア・サレー。幾重にも重なり広がり続ける重厚なサウンドで、この2年間、熱狂的な音楽ファンベースを確実に構築してきた。

スーダンの内戦から逃れて米国でホームレスとなり、イスラム教徒の家庭でクィアノンバイナリーであることをカミングアウト。サウンドとヴィジュアルは、その内面の強さを醸し出している。一方で、2019年のEP『Nūr』と最新プロジェクト『ROSETTA』では、ロマンティックな出会いと恋愛を鮮やかでポエティックな視点で表現してみせた。

予想外の展開としては、最近、米ラブコメドラマ『GIRLS/ガールズ』の女優ジェマイマ・カーク(Jemima Kirke)と俳優のジェイソン・アイザックス(Jason Isaacs)とともに、Netflix配信のコメディドラマ『セックス・エデュケーション』シーズン3への出演が発表されたことだ。2021年、マルチな才能を見せるサレーの存在感が増すことは間違いない。

9. ムーンチャイルド・サネリー(Moonchild Sanelly)

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ボディポジティブなカリスマラップスターが誕生!

ボディポジティブでセックスポジティブであることを体現するスター、ムーンチャイルド・サネリーは絶対に見逃せない。特徴的なコバルトブルーの髪とエキセントリックなスタイルのラップで、サネリーは南アフリカのハウスシーン、特にダーバンで生まれたハウスとテクノのブレンド「Gqom(ゴム)」のジャンルに置ける中心的存在になった。

カリスマラッパーとしての地位を獲得したサネリーは、ブラーのデーモン・アルバーンらによるヴァーチャルバンド、ゴリラズ(Gorillaz)、イースト・ロンドン出身のラッパー、ゲッツ(Ghetts)、南アフリカのラップグループ、ダイ・アントワード(Die Antwoord)と次々コラボレーションを発表。さらにビヨンセ(Beyoncé)の『The Lion King: The Gift』のトラック「MY POWER」に参加して、ビヨンセにも認められ、このアルバムの楽曲をもとにしたディズニープラス(Disney+)配信の『ブラック・イズ・キング』にも出演した。

最新EP『Nüdes』は盛り上がる楽曲が満載だ。バイセクシュアルからプラスサイズのタイツブランド「THUNDA THIGHTS」まであらゆるものを祝福し、「クソ男から逃げる」ように適切に警告する。信じられないほど才能豊かな彼女だが、幸いなことに今のところ音楽に集中するようだ。

Text: Natty Kasambala