新生ヴォーグのキーカラー、ピンクで彩られた、1日限りのダイニングサロン
今年10月号より、ヘッド・オブ・エディトリアル・コンテンツ、ティファニー・ゴドイのもとリニューアルを果たしたヴォーグジャパン。従来のメディアとしての雑誌やウェブサイトに加え、3Dアバターやアパレルライン、イベントなど、ヴォーグの視点をもって、360度体験をもたらすメディアへと生まれ変わった。さらには、ファッションに限らず、広義での日本の“カルチャー”を世界に発信していく。そのひとつが、多様な食文化をもつ日本のフードカルチャーだ。日本は、和食に限らず世界各国の料理が集結し、独自に進化を遂げている稀有な国だ。多様でハイレベルなその“日本の食”が注目を浴びていることは間違いない。
日本が誇る最高の料理、独自の食文化を体感してみてほしい。そこでタッグを組んだのは、一流レストランに特化した予約サービスを行う「OMAKASE byGMO(オマカセ バイジーエムオー、以下OMAKASE)」だ。半年先まで予約が取れない人気店として知られる東京・虎ノ門のレストラン、unis(ユニ)の休業日を特別にオープンし、1日限りのダイニングサロンを開催した。
わずか8席のレストランを1日貸し切り、ランチとディナーの計3回、計24名のみが参加したエクスクルーシブな宴。事前抽選予約により訪れたゲストたちは、この日設けたドレスコード「サムシング・ピンク」を思い思いのスタイリングで纏い、ホリデー仕様に飾り付けをした店内に集まった。また、ディナーの回では、出張帰りのティファニー・ゴドイがサプライズでラウンジに駆けつけ、ゲストたちとの交流を楽しんだ。
テーマはハレとケ。この日だけのスペシャルメニューに舌鼓
ユニはフレンチをベースとしながらも、日本産の食材にこだわりをもつ。薬師神 陸シェフ自ら約700軒もの日本の生産者をめぐり、その時の旬の食材を独自のルートで仕入れ、最高の調理法で提供することをモットーとしている。生産者と料理人という、それぞれのプロが、最高の一皿を作り上げ、それはまさにヴォーグの視点とも交差している。
現在発売中の『VOGUE JAPAN』1月号では、日本の職人というプロフェッショナルの技術と革新にフォーカスした特集を展開。ファッションのみならず、インテリアや伝統工芸など幅広く取り上げている。さらには、日本ならではの日用品に見る“用の美”や、それらの伝統を進化させ、現代の生活に取り入れることによる非日常感に着目した。
そこで設定した今回のコースのテーマは「ハレとケ」。通常、“ハレノヒのためのレストラン”として営業するユニが、非日常と日常が共存し、交差するメニューをこの日のためだけに考案してくれた。
この日のメニューは、たとえば旬の高級食材である毛ガニには、日本の家庭の冬の定番食材、みかんをアクセントに。柔らかで繊細な毛ガニの味わいに、みかんの酸味が爽やかな余韻を残す。そして鱈のコロッケには、濃厚な白子のソースと白トリュフを合わせて。鱈の身とクリーミーな白子が混ざり合い、馴染みのある“コロッケ”も、シェフの手にかかれば贅沢な非日常の一皿だ。
そしてもう一つのテーマは「ピンク」。11品のうち約3分の1をピンク色に染め、華やかなフェスティブムードあふれるコースに仕上げた。ユニのシグニチャーディッシュのひとつ、ブーケサラダには、ビーツで色付けしたショッキングピンクのヨーグルトソースをかけて。ペアリングはユニオン・サクレ ピノ・ノワール2020。サラダに赤ワインという、意外な組み合わせと思いきや、ヤーコンやビーツの根菜の力強さと赤ワインの密かな土の香りが見事にマッチする。
日本の生産者へのこだわりは端々にまで表れている。青森県で飼育される「銀の鴨」のスモークでは、ジビエのような力強い鴨肉に合わせたソースに、カカオパウダーを加えている。それが、エクアドルに移住した日本人、高橋力榮さんが作るカカオだ。また、それぞれのメニューに、メイン食材の産地やファームが記されており、日本各地の多様な食材と生産者の顔が見えるラインナップとなっていた。
ダイナミックなオープンキッチンで対話を楽しみながら
わずか8席のシェフズテーブルの醍醐味は、目の前で繰り広げられるダイナミックなライブキッチンだろう。ゲストの席からすべてが見渡せるオープンキッチンは、さながら劇場のようだ。目の前で次々と美しい料理が仕上げられ、すぐにテーブルに届けられていく。
新しい皿が出されると、薬師神シェフが料理と素材、生産者を紹介する。シェフとの距離が近いため、ゲストたちは、何が入っているのか? どうやって調理したのか? どんなところで作っている野菜なのか? などと、気軽に質問を投げかけ、その料理の裏にあるストーリーが語られる。ペアリングドリンクについても、ソムリエが料理との相性や生産地について会話を繰り広げ、和やかな雰囲気でコースが進んでいった。
音と映像の演出も、ユニならではの非日常感を盛り上げる要素のひとつだ。この日は料理のピンクに合わせた特別な演出を用意。ピンクのソースをかけたブーケサラダを提供すると、壁にピンクが広がり、花々が咲き誇る映像が流れるなど、視覚からも特別感を演出した。
日本の多様な食文化を再発見する、新たなエクスペリエンスの場に
約2時間半の宴の余韻を楽しんでほしいと、帰り際にはお土産として雑誌とピンク色のパウンドケーキが手渡された。
最高の料理と演出を通じて、日本が誇る食文化を体感できる場を設けたいという思いから、OMAKASEとともに新生ヴォーグが始めたダイニングサロン。最先端のシェフが今見ている食の潮流、生産者のこだわりや革新、また器やおもてなしなど、“食”にまつわるカルチャーは幅広い。
ディナーが始まる前、ティファニー・ゴドイは「たくさんの情報があふれる今の世界で、自分の目で、舌で、実際に体験して、日本のカルチャーを感じてほしい」とゲストたちに語りかけた。さて、次はどこで、どう行われるのか? 期待していてほしい。
Photos: Tamon Matsuzono Text: Saori Asaka