「より少なく、より良いものを買う」──それはつまり、買う量を減らし、一生ものになるアイテムを何着かだけ賢く購入するということだ。しかし体型が変わってしまったら、長く愛用することを見据えて迎え入れたものはどうなってしまうのか?イギリスのある調査によると、女性は服のサイズが生涯に平均31回も変わるという。長年軽視されてきたことだが、この事実はサステナビリティにとって深刻な課題だ。
私自身もここ1年で体型が変わり、サイズアウトしてしまった服が何枚かあるので、他人事ではない。サイズダウンしたときのために取っておくか、それとも売りに出すか。せっかく吟味して買い、長く大事に着ようと思っていたアイテムたちをどうするか、頭を悩ませている。おまけに20代の頃に着ていた、もう2度と入らないであろう服もいまだに持っていて、これらの貰い手も早急に見つけなければならない。
ロクサンダ(ROKSANDA)とエミリア・ウィックステッド(EMILIA WICKSTEAD)で経験を積んだ後、2023年に自身のブランドEストット(E.STOTT)を立ち上げたデザイナーのエリザベス・ストットも同じ境遇にいる。「子どもを2人産んで体型が変わったので、ワードローブはもうサイズが合わなくなってしまったものでいっぱいです。おそらくもう2度と入ることはない服たちを見ると、心が痛みます」。そう語る彼女が作る服は、縫い代を1センチ余分に用意してあり、必要に応じてサイズを緩めることができる。「私たちの祖父母世代が、当たり前のようにやっていたことですね」
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同じく余裕を持たせたデザインの服を打ち出しているのが、2023年のLVMHプライズでカール・ラガーフェルド賞を受賞したベッター(BETTTER)だ。ウクライナ版『VOGUE』の元ファッション・ディレクターのジュリー・ペリパスが手がける同ブランドは、アップサイクルした古着やデッドストックから製作する、サイズインクルーシブなテーラードアイテムがシグネチャー。そしてエスター マナス(ESTER MANAS)は、サイズの概念をさらに取っ払っている。「体型が変わっても、同じ服を心地よく着続けることができれば、しょっちゅう新しいものを買う必要がなくなるのです」と説明するデザイナーのマナスは、伸縮性のある素材と調節可能なストラップを用いて、真の「フリーサイズ」を追求する。
体型の変化に対応できる服は、サイズ展開の幅を広げてくれる。それを身を持って感じたチョポヴァ ロウェナ(CHOPOVA LOWENA)は、実際に豊富なサイズバリエーションを取り揃えている。「『多くの人にフィットするスカートを作るにはどうしたらいいか』と考えました」と共同設立者のエマ・チョポヴァは振り返る。考えた末にたどり着いたのが、調節可能なベルトを備えたカラビナのスカートだ。今やカルト的な人気を誇るこのスタイルは、UKサイズ6から14、16から26まで対応する2サイズ展開で、通常のキルトも、ベルトを交換することでフィット感を調整できる。「友人や母親などとの間で着回せるデザインになっています。あらゆる人に合うので、気兼ねなく誰かに譲ることもできます」
一方で、SojoやThe Seamをはじめとするプラットフォームのおかげで、服のお直しサービスはより身近になっている。「サイズ直しは、すでに普通のことになりつつあります」とストットは言う。それは、間違いなく地球のためにとっていいことだ。今持っている服をできるだけ長く、大事に着ていける唯一の方法なのだから。
Text: Emily Chan Adaptation: Anzu Kawano
From VOGUE.CO.UK