「昨日『オアシスは昔みたいに上手くできるのか? 再結成するバンドはたいてい前より劣るから』なんてとんでもない質問を受けた。だから言ってやった。まあ聴けよ、どんなに調子が悪い日だって、ほかのどのバンドより最高のギグを見せてやるって。BUMBACLART LGx」
2024年11月10日、再結成発表直後に自身の「X」からファンの心配をかき消すメッセージを発信したリアム・ギャラガー。いつもの口癖「BUMBACLART (バンバクラート:ジャマイカのスラングでサプライズなどの意味)」を連発する彼と兄ノエル・ギャラガー、アラン・ホワイト、ポール・ “ボーンヘッド” ・アーサーズ、ポール・“ギグジー”・マッギーガンらオアシスにとって、2024年は奇しくもデビュー・アルバム 『Definitely Maybe』 のリリースから30周年という記念すべきときだったこともあり、再結成のニュースは一瞬で世界を駆け巡った。
2025年7月4日のウェールズ・カーディフのプリンシパリティ・スタジアムからスタートするUK公演を含め、10月25日の東京ドーム公演やアメリカ、メキシコ、韓国などのワールドツアーのチケットは一瞬にしてソールドアウトになったが、ギャラガー兄弟の長年の“殴り殴られの兄弟喧嘩”ヒストリーの影響で、イギリスでは「遂に!」「また喧嘩するかも」「最後まで油断できない」などの声が依然として飛び交っており、彼らを取り巻く状況は俄然盛り上がりを見せている。
「ただ歌い続けるだけ」橋本病との闘い
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「橋本病という甲状腺の病のせいで、声がかすれてしまうんだ。だから痛みを和らげるために温かい飲み物を飲むようにしている。毎日のどがいがらっぽくてむせることもあるんだ。ずっと薬も飲んでいるけど、これ以外に治療方法がないからしょうがない。大丈夫。俺は根っから楽観的な人間だし、毎朝いたって元気だから」
2017年に持病を公表し、現在も投薬治療中の彼が罹患した「橋本病」は、甲状腺機能低下症の代表的な病だ。甲状腺とは、喉仏の下にある蝶のような形状の臓器で、体温調整や全身の新陳代謝を促進する甲状腺ホルモンを分泌する重要な働きをつかさどっている。この甲状腺ホルモン量が過多になると甲状腺機能亢進症の代表的な病である「バセドウ病」となり、「橋本病」はその真逆で甲状腺ホルモンの量が不足することで新陳代謝が低下する。そのため、皮膚の乾燥や抜け毛、メンタル面での無気力感や眠気が多くなるなどの症状が見られるようになる。治療には一般的に不足している甲状腺ホルモンを補う薬が用いられることが多く、効果が出ると日常生活に何ら支障をきたすことはないが、一生付き合わなければならない場合も多い難しい病でもある。
そんな中、シンガーとして致命的な喉に症状が現れているリアムは、闘病の心境について『Far Out』誌にこう明かしている。
「これ以上よくなることはないし、むしろ悪化する可能性がある。今俺はギリギリのところにいると思っているから、キャリアはあと10年と言われたら10年、5年なら5年。確かに、歳とともに声がかなりかすれてきているが、たとえ明日(キャリアが)終わるとしても、このまま気づかないふりして歌い続けるだけ。大丈夫だ」
リアムが語る、“人生最良の決断”
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そんな彼は、2023年夏に「可愛くないから」という理由でわずか生後5カ月でタイのジャングルに捨てられた犬を引き取り、大きな注目を集めた。現在タイで動物保護活動に従事しているアイルランド出身の作家ナイル・ハービソンが運営する保護団体「Happy Doggo」から引き取ったこの犬は、ボート、飛行機、タクシーを使ってタイからアムステルダムを経由し、ロンドンへと30時間の長旅を経てやってきた。同団体はSNSで里親として迎えるまでの一部始終を公表し、リアム自身も25,000ポンド(約480万円)の支援金を集めるなど、ホームレスドッグの啓発に大きく寄与したことから、世界最大の動物権利擁護団体PETA(People for the Ethical Treatment of Animals)より2024年度「Strike the Right Chord for Animals」賞が贈られた。
そして現在、彼の元にはるばるタイのジャングルから引き取られた“娘”のバトンズは、彼のインスタグラムに登場したり、一緒に散歩しているところをメディアに頻繁にキャッチされるなど、幸せな “犬生”を送っている。同時に、バトンズの存在はリアムの人生にも圧倒的な幸福をもたらしているようだ。
「バトンズを救出したことは、俺がこれまでに下した最高の決断だった。 この犬は俺と周囲のみんなを幸せな気分にしてくれる。今ではみんな夢中だから、バトンズと暮らすことができて本当に幸運だと思う。だからもし新しい犬を探しているなら、飼い主のいない犬を引き取ることを強く勧めたい」
一方で、3.8Mのフォロワーを有するXでは、ほぼ毎日ファンとの一言会話を楽しんでいるリアムは、病を抱えながら生きる今後について、その心境を英「ガーディアン」紙にこう明かしている。
「メンタルのコンディションを保つためにも、ランニングは欠かせない。それと、健康とは関係ないが歳を取れば取るほど身なりを整えた方がいいかもしれないと思うようになった。中年になることで一番最悪なのは、若いころに着ていた服が似合わなくなること。スウェットとショートパンツで済ませることができなくなってきたから、最近はジーンズにスエードブーツの組み合わせが多くなったんだ。でも、年をとることは当たり前のことだから、俺はこれまでボトックスを受けたことはないし、むしろしわは多ければ多いほどいいと思ってる。キース・リチャーズを見てごらん。あんなふうにくしゃくしゃになれたら、最高じゃないか」
Text: Masami Yokoyama Editor: Mina Oba