「末娘のアグネスがさまざまな健康上の問題を抱えていたので、私は彼女と長期間離れたり、飛行機に乗ったりすることがとても怖くなりました。もともと飛行機に乗るのは好きではありませんでしたが、初めて末娘をおいて飛行機で移動したとき、私がいない間に娘に何かあったらどうしよう、という不安でパニック状態になったこともあったほどです」
2022年『The Sunday Times Style』5月号のカバーを飾った俳優のジェニファー・コネリーは、インタビューで自身が長年飛行機不安症と分離不安に悩まされていたことを明かした。1970年12月12日、アメリカ・ニューヨークで生まれ育ち、幼少期にモデルデビュー後“絶世の美少女”として世界の注目を集めた彼女は、1984年にロバート・デ・ニーロ主演のギャング映画『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』で俳優としてのキャリアをスタート。以降『フェノミナ』(1985)、『ラビリンス/魔王の迷宮』(1986)などのヒット作に恵まれ、大幅に体重を落として麻薬中毒患者を熱演した映画『レクイエム・フォー・ドリーム』(2000)で、それまでの清純派のイメージから脱却し、実力派俳優として広く認知されるようになった。
プライベートでは当時交際していたデイヴィッド・ドゥガンとの間に生まれた第一子のカイに続き、2003年に結婚した俳優のポール・ベタニーとの間に生まれたステランとアグネスの3人の子どもの母親でもある彼女は、前述の飛行機恐怖症について、さらにこう続ける。
「飛行機嫌いとはいえ、不思議なことに帰りの飛行機の中では不安に苛まれることはまったくなかったのです。飛行機に乗ると、いつも何か良くないことが起きるのではないかと心配しすぎてしまう。でも帰りは、もうすぐ家だという安心感があるからかもしれません」
飛行機恐怖症を解決してくれたトム・クルーズ
だが、その後この飛行機恐怖症が彼女のキャリアに大きな影を落とすこととなった。それが、彼女の出世作の一つとなった『トップガン:マーヴェリック』(2022)で、トム・クルーズが操縦するP-51の飛行シーンの撮影だ。この時のことを、彼女は後にアメリカのメディア「Toronto Sun」にこう明かしている。
「P-51 はヴィンテージの小型飛行機で、キャノピーも頭上ギリギリ、コックピットも前で操縦桿を握るトムの背中に私の膝がつくほど狭くて小さいものです。空中ではまるで大きなガラスの泡の中にいるようで、このシチュエーションが私の飛行機恐怖症をさらにあおったのです」
実は撮影前に、実際に“飛ぶ”ことを知らされていなかったというジェニファーだったが、トムの邪魔になるのが怖くて、終始自身の飛行機恐怖症を彼に打ち明けることなく撮影に臨んだ。“問題のシーン”を無事に撮り終え、続けざまにトムが運転する高速バイクのタンデムシーンをこなしたのち、自身のキャリア史上最もタフな“スタント”を演じた経験をこんなふうに振り返っている。
「『飛行機恐怖症だって聞いたんだけど、なぜ事前に僕に言ってくれなかったの?』と撮影後トムに聞かれました。だから私はこう言ったのです。『あのトム・クルーズに、そんなこと言えるわけないでしょ』と(笑)。実は、アクロバット飛行も高速バイクも、どちらも不安を感じることはありませんでした。それは多分、トムのスキルについて一瞬たりとも疑うことがなかったからだと思います。そして本当に不思議なのですが、信頼する有能な人が操縦しているとわかると、私の飛行機恐怖症が和らぐのをはっきりと感じたのです。トムじゃなかったら、恐怖心が勝ってあのシーンは絶対実現しなかったはず。当然ながらあの飛行シーンを見た私の家族は、皆悲鳴をあげていましたが(笑)」
運動と食事のバランスで体重をコントロール
「私は長いことヴィーガン生活を送っていますが、時折魚を食べることはあります。長いこと週数回のランニングやヨガも続けていて、特にランニングやワークアウトはほんの数分でも実践すると体中にエネルギーが湧き、血流が良くなるのを感じます」
以前、アメリカのメディア「NewBeauty」に自身の美の秘訣をこう語ったジェニファーのトレードマークといえば、いつ見ても均整のとれたスレンダーなプロポーションだ。それはまた、毎日のシンプルで健康的な食事と定期的な運動の継続など、長年食事と健康のバランスを重視したアプローチを続ける彼女の努力の賜物とも言える。しかし俳優である以上、キャリアの中で役づくりのために大幅に体型を変えなければならないこともあるのも事実だ。
「2014年に夫のポール・ベタニーの監督デビュー作『Shelter』で、ホームレスの麻薬中毒者ハンナを演じたとき、役作りのため短期間で約12kg近く体重を落としたことがありました。このエクストリームダイエットが成功したのは、撮影に間に合うように研究に研究を重ねて、ゆっくりと体重を減らした結果です。急激に体重を落とすのは、本当に危険ですから」
美の源は、揺るぎない自分
当時パパラッチが捉えた彼女の痩せこけた姿は連日タブロイド紙を賑わせ、その姿はもはや演技を超え「本当に拒食症になってしまったのではないか?」と世間から心配されるほど鬼気迫るものだった。だがジェニファーはそんな世間の噂を尻目に、演技派として開眼した同作品での役作りについて、さらにこう続ける。
「私は、実生活ではハンナとは真逆の生活を送っています。だからドラッグも知らないし、ホームレスの経験もありません。ですから役を作り込むにあたり、まずはホームレスの生活がどういうものなのか、そして麻薬中毒患者は実際に針などの道具をどう使うのか、体重を減らしながら同時に習得していきました。いくら役作りとはいえ、その頃の私は本当に世間から心配されていたようですから、俳優としてはある意味成功したと言えるでしょうね(笑)」
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撮影終了後は野菜や豆、穀物、魚、ナッツ、果物などの自然食品を摂りながら、ランニングなどの運動と並行して徐々に体重を元に戻していったというジェニファー。そんな彼女は、54歳を迎えた今日も相変わらずの健康的でバランスの良いプロポーションを保ち続ける秘訣をこう明かす。
「女性も男性も外見の美しさと若さを同一視されがちですが、これはとても悲しいこと。男性の場合は年上でも受け入れられることはありますが、多くの人は年上女性の美しさを理解し、受け入れることに抵抗があるのも悲しいことです。ですが、いくらシワが増えようと、私は自分の顔に刻まれた歴史を消し去りたくありません。それはきっと、これまで社会的に美しいとされる美の基準に合わせようと、無理なダイエットや美容整形で自分自身を苦しめてきた人たちをたくさん見てきたから。私にとって一番大切なのは、“健康と幸福”で、これまでもこれからも変わることはない──そう断言できます」
参考文献:
https://torontosun.com/entertainment/movies/top-gun-maverick-star-jennifer-connelly-reveals-how-tom-cruise-helped-her-get-over-fear-of-flying
https://www.businessinsider.com/jennifer-connelly-fear-of-flying-top-gun-maverick-tom-cruise-2021-4
https://www.newbeauty.com/jennifer-connellys-biggest-beauty-secrets
https://www.dailymail.co.uk/tvshowbiz/article-2196491/Has-Jennifer-Connelly-taken-extreme-exercising-training-far-Actress-seen-looking-scarily-skinny-goes-run.html
https://www.prevention.com/fitness/a44299822/jennifer-connelly-toned-abs-black-bikini-instagram-photo
https://celebwell.com/news-top-gun-star-jennifer-connelly-reveals-fitness-secrets
Text: Masami Yokoyama Editor: Rieko Kosai
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