LIFESTYLE / GOURMET

ワイン造りの世界を変えていく新世代のワインメーカーたち【未来を切り開く女性たちvol.3】

近年、ワインの世界において、女性の醸造家たちが新風を巻き起こし、活躍の場を広げている。緻密で丁寧なワイン造りにも、カーボンニュートラルや生物多様性にも、女性ならでは視点で取り組む注目のワインメーカー3名をフィーチャー。

【セシ​​リア・レオネスキ&カスティリオン・デル・ボスコ】サンジョヴェーゼの複雑さと繊細なニュアンスに魅了されて

40ヘクタールの広大なブドウ畑と糸杉の道。トスカーナを象徴する美しい風景だ。

Photo: Charlie Dailey

イタリア3大ワインのひとつ、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノの産地として知られるトスカーナ州のモンタルチーノ。人口6千人ほどの小さな町に、フェラガモ一族の三男、マッシモが創設したホテル、プライベートゴルフコース、ワイナリーなどからなる自然に包まれた美しいリゾートがある。そのワイナリー「カスティリオン・デル・ボスコ」の醸造責任者を務めているのがセシ​​リア・レオネスキだ。

セシ​​リア・レオネスキのブルネッロ・ディ・モンタルチーノはDWWA 2021で最優秀賞受賞。

Photo: LUCA FARINI

イタリア中西部マレンマのワイン生産者の娘として生まれたセシリアは、大学でブドウ栽培と醸造学を学び、名門アヴィニョネージなどを経て、2003年にこのワイナリーに参加。以来、イタリアを代表するブドウ品種で、気候や地形、土壌に非常に敏感なサンジョヴェーゼの醸造と熟成のテクニックを磨き続け、2021年には、彼女が醸したブルネッロ・ディ・モンタルチーノが世界最大のワインコンテスト「デキャンター・ワールド・ワイン・アワード2021(DWWA2021)」において、最高レベルの賞を獲得した。

伝統的なブルネッロ・ディ・モンタルチーノの醸造だけにとどまらず、2016年からブドウ畑のオーガニック認証も取得。

Photo: Charlie Dailey

ワイナリーはビジターにも開放されていて、ブドウ畑やセラーの見学、地元産のチーズやオリーブオイル、蜂蜜と共に楽しめるワインの試飲など、多彩なワインツアー&テイスティングを提供。毎年9月には2週間限定でブドウ摘みも体験できる。

カスティリオン・デル・ボスコ(Castiglion del Bosco)
Località Castiglion del Bosco, 53024 Montalcino (Siena), Italy
Tel./+39-0577-1913750
https://wine.castigliondelbosco.com/

【ナタリー・クリステンセン&イーランズ・ワイン】サステナブルなワイン造りに情熱を燃やす

ニュージーランドワインの8割以上を生産するソーヴィニョン・ブランの名産地マールボロ。

「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2023(IWC2023)」で、12個のメダルと1つのトロフィーを獲得したイーランズ・ワインのチームを率いたのは、チーフ・ワインメーカーのナタリー・クリステンセン。ニュージーランド人としては、実に15年ぶりにホワイト・ワインメーカー・オブ・ザ・イヤーも受賞した。

フランス、スペイン、米国でワイン造りを経験。2019年にチーフ・ワインメーカーに就任したナタリー・クリステンセン。

Photo: Jessica Jones Photography Ltd

ニュージーランド南島の中心都市、クライストチャーチで育ったナタリーは、コントラバス奏者として音楽の道を志したが、思うような機会に恵まれず、兄からブドウの収穫を手伝わないかと誘われたことをきっかけにワインの世界に足を踏み入れることに。国内の名醸地マールボロを皮切りに、ボルドー、米国のオレゴン、スペインのリアス・バイシャスでワイン造りの経験を積み、2015年にイーランズ・ワインのチームに加わった。イーランズは、2008年の設立初日からカーボンゼロ認証を取った世界初のワイナリーであり、ナタリーは今後30年を見据えて、生物多様性の保護とサステナビリティの向上に情熱を注いでいる。

強い風が吹き、味わいの凝縮したブドウが育つマールボロが生んだイーランドのシングル・ヴィンヤード・ソーヴィニヨン・ブラン。

Photo: Jessica Jones Photography Ltd

テイスティングルーム「セラードア」では、アワード受賞作を含むワインが試飲でき、「ホワイトロード」と名付けられた散策路を通って、美しい海岸沿いのブドウ園を巡るセルフガイド・ツアーも好評だ。

イーランズ・ワイン(Yealands Wines)
Corner of Seaview and Reserve Roads Seddon, Marlborough 7285, New Zealand
Tel./+64-3-575-7618
https://www.yealands.co.nz/

【エイミー・サンセリ&ニュー・クレールヴォー・ヴィンヤード】トラピスト会の伝統を守り、細心の気配りでワイン造りに励む

スペイン原産のアルバリーノ、イタリアの主要品種トレッビアーノなど、多彩なブドウを栽培。

「インターナショナル・ウイメンズ・ワイン・コンペティション2023(IWWC 2003)」で最優秀女性ワインメーカーに選ばれ、注目を集めたのが、エイミー・サンセリだ。カリフォルニア州でニチェリーニとボーガーという2つのワイナリーを経営する一家に生まれ、大学でブドウ栽培と醸造学を専攻した後、実家から車で2時間半ほど離れたニュー・クレールヴォー・ヴィンヤードのメンバーに加わった。

エイミー・サンセリが手がけた「プティットシラー2020年」は、IWWC2023で最優秀赤ワインに選ばれた。

トラピスト会の修道院の一部であるというユニークなワイナリーで、エイミーは、カルフォルニアで主流のカベルネ・ソーヴィニョンやピノノワールではなく、アルバリーノ、トレッビアーノ、プティットシラーなど多彩なブドウを育て、細心の醸造プロセスでワインのクオリティを高めることに精力を傾けてきた。2009年にはニチェリーニ・ワイナリーの5代目リード・ワインメーカーにも就任し、2つのワイナリーでブドウ栽培から瓶詰めまでの全工程を監督している。

労働と学習を重んじるトラピスト会の教えに従い、院内でブドウ栽培も行っている。

ニュー・クレールヴォー・ヴィンヤードは、カリフォルニア州の北部にあり、サンフランシスコからは車で4時間ほど。テイスティングルームやギフトショップは毎日オープンしていて、予約なしでも見学や試飲が可能だ。

ニュー・クレールヴォー・ヴィンヤード(New Clairvaux Vineyard)
26240 7th Street, Vina, CA 96092, United States
https://www.newclairvauxvineyard.com/

Text: Yuka Kumano