歴史が紡ぐ風格と独特の空気を感じて
御花は、7000坪もの敷地全体が名勝「立花氏庭園」に指定されている。なかでも1978年に最初に名勝に指定された「松濤園」は、大小の岩島を浮かべた大きな池の周囲を約200本のクロマツが囲む見事な日本庭園だ。訪れたのは12月だったが、カモたちが池で心地よさそうに戯れていた。毎年決まったように10月頃シベリアから飛来し、3月頃までこの庭で過ごすという。すぐそばにはサギもいて、目の前には日本画の世界が広がっていた。
庭園を愛でる特等席「大広間」も圧巻
この庭園を愛でる特等席は、広さ100畳の「大広間」だ。檜造りの広々とした和の空間は庭園と一体となり、情緒あふれる風景を創り出す。畳を上げると能舞台にもなり、年に1度は能公演が行われる。室町時代から伝わる伝統芸能であり、神事でもある能は、立花家が紡いできた伝統の一つだ。
御花を語るうえで欠かせないのは、400年にわたって家を守ってきた立花家のエピソード。関ヶ原の戦いで領地を手放し、20年後に再びこの柳川に戻ってきた初代柳川藩主・立花宗茂にはじまり、現在の御花の地に屋敷を建てた5代貞俶や自ら庭園を設計した14代寛治など、代々の当主がいかに柳川とそこに住む人々を愛してきたかという逸話にあふれている。そして第2次世界大戦後に華族制度が廃止になっても、この御花だけは手放さずに料亭旅館として商いを始めた16代和雄と文子へと繋がる、その歴史こそが、ここでしか得られない特別な価値を与えているのだ。
御花に滞在して一番の感動は、歴史が紡ぐ風格と独特の空気感。ここに来なければこの特別な雰囲気は味わえないだろう。今年1月にリニューアルオープンを果たし、滞在はさらに快適さを増した。「重要な文化財を後世に残すために、触れずにおくという考え方もあるが、御花ではぜひ触って体験して、人々の生活と共にあってほしい」という18代立花千月香の考えもあって、館内の装飾や調度品は間近に体験できる。
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そしてもうひとつ御花を特別なものにしているのが、水のまち・柳川の水路。市内を網の目状に走り、その総延長距離は930kmにもなる。直線距離にして柳川から横浜に行けるほどの長さだ。有名な川下りは、その水路を船頭が舟唄を歌いながら、巧みな竹棒さばきでゆっくりと舟を進ませる。何とも風情のある特別な体験だ。御花には独自の発着所があり、宿から直接、舟に乗り込んで、秋の月見酒、冬のこたつ舟など、四季折々の川下りを楽しむことができる。
また御花は料亭旅館を名乗るだけあって、食事も魅力だ。夜の会席料理は言わずもがなだが、朝日に煌めく庭園を眺めながらの朝食が何とも素晴らしかった。まずは、寝ている間に失った塩分を補給し、おなかを温める昆布のスープからスタート。地物の焼き魚や目の前であぶって提供する有明海のノリ、明太子、セロリのお浸し、高菜など海山の幸に、炊きたての土鍋ご飯が加わり、満点のラインアップだ。実は、立花家は明治期の農業の発展にも貢献してきた。日本で初めてセロリを栽培し、高菜、早生みかんの生みの親でもあるそうだ。
古き良き日本の結婚式が叶う
国指定の名勝、藩主・伯爵家としての歴史、本物だけが持つ空気感、有名な川下りと、御花にはここにしかない体験が詰まっている。400年にわたって「家」を守り続けてきた特別な場所は、これから新しい人生を紡いでいく二人のセレモニーの舞台にふさわしい。
神前式を選べば、近くの日吉神社で式を挙げて、伝統文化の「花嫁舟」に乗って御花に向かう。鹿鳴館様式の流れを汲む洋建築の「西洋館」での挙式もいいだろう。総檜造りの和室「大広間」は、祝いの場に装いを変える。かつて国内外の要人たちを迎えたこれらの場所が、二人の未来に向けたスタートラインになる。
これから先、次の100年も御花を人々の生活と共に残していきたいという由緒正しき伯爵家は、永遠の愛を誓い合う二人にとっても素晴らしい舞台となるはずだ。
柳川藩主⽴花邸 御花(おはな)
福岡県柳川市新外町1
Tel./0120-336-092(代表)
料金/1人1泊38,700円~ ※2025年2月現在
https://ohana.co.jp/
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