CELEBRITY / VOICE

G-DRAGONの現在地──「これからも音楽を作り続けるつもりです」

2006年にBIGBANGとしてデビュー以来、KING OF K-POPとして君臨し続けるG-DRAGONシャネル(CHANEL)を身にまとい、かぐわしい花々と交わる姿をパリで撮影した。クォン・ジヨンというひとりの人間、そしてG-DRAGONというアーティストの“今”に迫ったインタビューを全文公開。
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15回にわたる航海──G-DRAGONは、これまで15回も韓国版『VOGUE』の誌面を飾ってきた。初登場は2013年、パク・スジュ、キム・ソンヒ、パク・ジヘがメジャーブランドのショーでランウェイを闊歩し、ファッション界がアジア系モデルに熱視線を送り始めたころだった。その後、15年1月には、ベルギー人スーパーモデルのハンネ・ギャビー・オディールとともに本誌の表紙に登場。パリで撮影されたカバーフォトは、ボヘミアンでクールなたたずまいが際立つものだった。さらに翌16年の表紙撮影では、BIGBANGのフロントマンとして、カリスマ性とリーダーシップにあふれたオーラを放ってくれた。同じ年に刊行された韓国版『VOGUE』の20周年記念号ではカール・ラガーフェルドが撮影し、パク・スジュ、ソラ・チョイ、シン・ヒョンジを含む6人の韓国人トップモデルとともに、カメラに収まった。同誌とG-DRAGONのコラボレーションでは、往々にして最上級や強調語が多用されがちだ。だが、それらは決して誇張ではない。

G-DRAGONは未知の事態にひるまない。新しい世界に果敢に飛び込み、必ず自らが望む成果を手にして戻ってくる。性別、人種、体のサイズなど、既存の社会規範と結びついたカテゴリーを軽やかに乗り越えていく姿は、見ているだけで元気が出る。G-DRAGONは今もこれからもスターであり、ファッション界のアイコンとして、時代の精神を形づくってきた。世界が新型コロナウイルスのパンデミックに襲われた20年9月号では、当時26の国と地域で刊行されていた全世界の『VOGUE』が「Hope」という共通のテーマのもと一致団結した。これに際し、韓国版の表紙を飾ったのは、G-DRAGONによる光のアートだった。

G-DRAGONはBIGBANGの一員だが、同時に本名のクォン・ジヨン名義で活躍するソロアーティストでもあり、ファッションブランド「PEACEMINUSONE(ピースマイナスワン)」も手がけている。21年、韓国版『VOGUE』編集部は彼のプライベートスタジオを訪れ、表紙撮影に臨んだ。さらに20周年記念号でG-DRAGONは、「シャネルというブランドを再解釈し、さらに進化させるためにもっともイノベーティブな方法は?」という問いを、当時シャネルを率いていたカール・ラガーフェルドに投げかけた。「カイザー(皇帝)」の異名をとるカールはこれに対し、「現代の世界をまるごとデザインに取り込むこと」と答えた。

そして22年に入り、G-DRAGONは今回の撮影場所にもパリを選んだ。その表紙撮影から1カ月が経ったある夏の日、私たちは、G-DRAGONにインタビューを行った。

シャネルが表現する自由とスタイル、アイデンティティが教えてくれたこと。

His Own Room

VOGUE(以下・V) シャネルの22/23年クルーズ・コレクションをモナコで発表した際、アーティスティック ディレクターのヴィルジニー・ヴィアールはこう語りました。「モナコはさまざまな感覚を呼び覚ましてくれる場所です。テラスにバルコニー、大きなアンブレラ、バスケットに盛られた花々──美に満ちあふれています」。あなたはこのショーに、ゲストとして参加されましたね。モナコで、ヴィルジニーが話したような体験はできましたか?

G-DRAGON(以下・GD) モナコ訪問は今回が初めてでしたが、この国についてヴィルジニー・ヴィアールが絶賛する気持ちがよくわかりました。モナコはとても美しく、ちりひとつない場所だという印象を持ちました。僕たちが泊まっていたホテルは丘の上にあって、ベッドに横たわると、窓の外を流れる雲を眺めることができました。雲の上にいるような気分でした(笑)。街はどこをとっても美しく輝き、同時に温かみもあって、まるで夢の中にいるようでした。

V このコレクションで発表されたスポーツウェアはビーチにぴったりで、メゾンの「自由」に対する解釈が、さらに一歩進んだ印象を持ちました。このコレクションのインスピレーションやオマージュをどう思いましたか? また、シャネルのブランドアンバサダーを務めていかがでしたか?

GD スポーティなビーチリゾートというテーマを体現した、屈託のないムードに感銘を受けました。しかもその表現は、とても上品でした。いつもとは異なる会場でシャネルのコレクションを見るのは、僕にとってこれが初めてでした。ビーチを眼前に望む屋外に設えられたキャットウォークとステージは、本当に素晴らしかったです。ファッションショーというより、カジュアルで都会的なムードが際立つプレゼンテーションだったと感じました。より自然に近い環境で、美しい服やアクセサリーを身につけた素敵なモデルを見る機会に恵まれ、すべてがとても新鮮でした。モナコにはここにしかない独特のヴァイブがあり、このコレクションはそれを実にさりげなく取り入れていました。まるで壊れたレコードのように同じ話を繰り返していると思われるかもしれませんが、シャネルはスタイルというものを、実に見事に捉えています。実際、初めて触れたときから、シャネルは僕にとって自由を体現するブランドでした。もちろん、シャネルには独自のアイデンティティがありますが、僕は若いころから、パジャマでもかっちりとしたスーツでも、自分が着る服にシャネルのピースを合わせてきました。また、シャネルへの憧れが、ファッションを勉強したいという気持ちの原動力になりました。ファッションはその人を表現する、独自の言語になり得ます。シャネルのブランドアンバサダーとして、学ぶこと、刺激を受けることはあまりにも多い。シャネルは常に、大きな喜びをもたらしてくれるのです。

スペースというものの役割と価値、そして、クリエイションの身体的側面。

The Red Night

V ちなみにこのインタビューはオンラインで行っていますが、あなたは今、どこにいるのでしょう? 周囲の雰囲気についてお話しいただけますか? 音楽が流れていたりするのでしょうか?

GD 僕が今まさにいる場所は、ソファの上ですね(笑)。ここは温暖な気候の、居心地がよく気持ちのいいところです。雰囲気はメロウですが、気持ち的には、少しざわざわとしてもいます。これはもしかすると、自分が今、このインタビューを受けながらシャネルのコレクションを振り返って、その思い出にふけっているからかもしれません。音楽は何もかかっていません。インタビューに集中したいですし、自分の声が音楽に埋もれてしまうといけないと思ったので。だから今、この空間を占めているのは僕だけです。

V あなたにとってプライベートスタジオが持つ意味とは? その空間をどう表現しますか?

GD 生活するスペースには、それぞれに目的がありますよね。例えば自宅の中でも、ベッドルームにはベッドルームの目的があります。僕のスタジオも、そうしたスペースのひとつです。スタジオは僕にとって好きなことができる遊び場であり、レコーディングルームでもあります。何かに縛られたり、制約を受けたりすることなく、興味を持っていることに100%集中できて、満足がいくまで思考や感覚を探求することができる場所ですね。僕にとっては、特にしっくりくるスペースだと言えると思います。

V ミュージシャンのスタジオと聞くと、まったく新しいものが生み出される謎に満ちた場所を想像する人も少なくないかもしれません。小説家、村上春樹の有名な言葉に、「小説家というのはとてつもなく個人的で、なおかつ身体的な活動だ」というものがあると記憶しています。確かに、クリエイティブな仕事の身体的な側面は、決して看過されるべきではないと私も思います。丈夫な体や健康を維持するために、あなたはどんなことをしていますか?

GD 僕には、毎日のルーティンがあるんです。とはいえ実は、そう言えるものができたのは、つい最近のことなんですが(笑)。心身の健康は、あらゆる活動のベースになるものなので、定期的に運動も始めました。日々のルーティンとしては、食事をとる時間やランニングに出かける時間などをきちんと決めて、なるべく規則正しく行っています。

V 最近あなたが聴いた新しい音楽の中で、もっとも興味をそそられた作品や、斬新だと感じられたものはありますか?

GD いつも、世界中のアーティストのクリエイションを聴いては感嘆しています。そうした機会を持てるのはとても恵まれていると思いますし、何より聴いていて、すごく楽しいんです。これまでに出合った音楽の中から、新鮮で興味深い作品をひとつピックアップするのは無理ですね。素晴らしいと思うものが多すぎますし、それぞれにいいものばかりですから。音楽に限らず、新しい言葉の使い方からネット上で人気のミームまで、あらゆるものに魅力を感じるんです。

Piercing Love

V アーティストとして、あなたが自身の興味が向かう対象について、公の場で語ることはあまりありませんね。本や映画、アート作品など、最近夢中になったものは何ですか?

GD 最近は、たくさん本を読んでいます。それと、少なくとも1日に2本は映画を観ていますね。本を読み、新たなインスピレーションを得るのが本当に楽しいんです。ほかの人たちは、僕が何に興味を持っているのか気になるのかもしれませんが、実は僕自身も同じ気持ちなんです(笑)。好奇心は僕という人間の大切な一部分ですし、この世界には興味深いことがたくさんあります。時が経つにつれ、自分の興味の範囲がどんどん広がり、アートについての考えも、より多面的になってきたと感じています。

創作活動の原動力となる大切なものと、コラボレーションの価値。

Sitting Class

V ひとりの人間として、そしてミュージシャンとして、あなたの生きがい、あなたを動かす原動力は?

GD その時々で変わる、としか言いようがないんです。でも、クォン・ジヨンというひとりの人間として、僕は、夢と価値観によって動かされている、と言えると思います。そしてG-DRAGONというアーティストとしては、ファンによって力を与えられ、育てられています。僕は音楽を通じて今の場所にたどり着きましたし、これからも音楽を作り続けるつもりです。それは、あらゆる人が、僕の努力に愛を返してくれたからです。僕には揺るぎない基準、核となる価値観、そして心から大切に思う人たちがいます。日々の生活の中で、これらの要素を大切にしようと努めていますし、ディテールに気を配り、常により良くし続けるための強さを持てるのは、こうした心がけのおかげです。

V あなたは以前、今人気のあるもの、みんなが夢中になっているものへの目配りを欠かさない、とおっしゃっていました。あなたの思考のプロセスについて、ここで解説してもらえないでしょうか?

GD 僕はポップ・ミュージシャンなので、ポップ界のトレンドに注目するのは当然のことです。とはいえ、ここではっきり言っておきたいのですが、僕が気にかけているのはトレンドというよりも、ファンのみんなが今、何に夢中になっているのか、ということです。ファンとの対話を通じてヴァイブを共有していくんです。ポップの世界の流行にはアンテナを張りめぐらせていますし、今、盛り上がっているものを意識し、学ばなくてはならないと思っています。そうやってモチベーションを維持し、さまざまな影響を吸収していくことができています。純粋に、今ここで起きていることに興味があるんです。幸い、僕にはそもそもトレンドや時代のヴァイブを読み取る能力が備わっていましたが、それが今では、すっかり体に染みついているのだと思います。

A Life Uninterrupted

V PEACEMINUSONE、そしてファッションブランドとのコラボも、あなたの自己表現の中で大きな部分を占めているように見えます。ご自身が大事にされているものにおいて挑戦を喜んで受け入れ、ほかの人たちとともに追求していくことの醍醐味を教えてください。

GD 以前に手を組んだことがある人なら、またいつか、それぞれの道が交わることもあると思っています。こういうやり方が好きなんです。もちろん、今までにコラボしてきたみなさんが、本当に最高な人たちだというのも理由のひとつです。みんな僕が愛してやまないクリエイターたちですし、この世界でともに働く仲間なんです。一緒に何かをするとき、何よりも大切なのは信頼です。作品に真摯に取り組み、努力を注ぎ込み、責任を引き受け、お互いに支え合って、愛を広めていく。そこには、単にやるべき仕事という以上のものがあります。僕たちを結びつけるのは、お互いの胸の内を打ち明け、それぞれの価値を認め合うという行為です。今後も、こういうやり方を続けていきたいと思っています。このインタビューを読んで、世界の優秀な人たちが、もっとたくさん僕とコラボしたいと思ってくれたらうれしいですね(笑)。

花がもたらしてくれるパワーと、G-DRAGONを動かすドライブについて。

Paris by Night

V あなたは以前、花は美しくもあるが悲しくもある、と表現していましたね。4年前には、BIGBANGが「FLOWER ROAD」というシングルをリリースしています。そして今年に入り、新曲「春夏秋冬(Still Life)」がドロップされました。アートワークに加えて、歌詞の中でも「花」というテーマが繰り返し現れます。あなたは、花のどういうところに感情移入しているのでしょうか。そして、あなたにとって花の魅力とは何なのでしょう?

GD 僕の花を賛美する気持ちは、昔からずっと変わりません。花は美しくて、同時に痛ましいものだと思います。ひとつの花だけで、さまざまな感情を伝えることができます。ときには僕の思いが、花に投影されることもあります。若いころから花が好きだったんです。インスピレーションをくれることもあれば、心を鎮めてくれることもありました。花を見つめていると、さまざまな感情が湧き上がってきます。その一方で、頭を空っぽにして禅の境地に至るのを助けてくれるときもあるんです。集中しているときも、チルしているときも、花はその時々にふさわしい暖かさと香りを運んできてくれるように思います。

V 今、あなたがもっとも価値を置いていることは?

GD 過去に持っていた価値観を大切にしていくことでしょうか。そして今、自分が手にしているものから、さらに新しい価値をつくり出していくことです。このふたつを区別したくないんです。とくに最近は、幼いころから変わらない、無垢な心が抱く価値観について考えることが多くなりました。それと同時に、人生を通じて築き上げていく、何ものにも代えがたい価値観というものもあるはずです。そのひとつひとつが、僕にとっては等しく大切なんです。

Photos: Hee June Kim Styled: Gee Eun Makeup: Hyekyung Lim Hair: Taehyun / Mizangwon Fashion Editor: Kihoh Sohn Feature Editor: Sohyun Cho Production: Woori Bae Translation: Tomoko Nagasawa