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4月のアースマンスに観て学ぶ! 気候変動や環境問題がテーマの注目の映画15選

4月22日のアースデイ、4月のアースマンスに考えたい地球のこと。世界が気候危機への対応策を強化し、自然環境や生物多様性へのダメージを防ぐためには、地球に生きる私たちの意識と取り組みが何よりも大切だ。地球のSOSを読み解き、環境問題への理解を深めてくれる珠玉の映画作品を紹介。

1.『Youth v Gov: 私たちの気候変動訴訟』(2020)

Youth v Gov: 私たちの気候変動訴訟』(2020年)は、Netflixにて配信中。Photo:

Courtesy Everett Collection

「未来が怖くてたまらない」──若者の悲痛な声は、国に届いているだろうか。まだ幼さの残る原告のリーバイ・Dは、自身が暮らす街をハリケーンが襲い、頻発する気象災害の恐怖にさらされる経験をし、13歳の原告ジェイデン・フォイトリンが住むルイジアナ州は勢力の強い嵐や洪水に見舞われ、寝ている間に自宅が浸水。ナバホ族の17歳のジェイミー・バトラーの居留地では大干ばつが続き、先祖代々受け継いできた聖なる土地は、変わり果てた姿となってしまった。常に気候変動の脅威にさらされている若者たちは、強い不安と闘っている。

11歳から22歳までの21人の若者が連邦政府を相手取り、気候変動訴訟を起こした「ジュリアナ対合衆国訴訟」を追ったドキュメンタリーは、私たちが政府や企業の責任を問い直すきっかけになるに違いない。温暖化が起きていることを自覚しながらも、政府は化石燃料に助成金をだし、子孫の健康や生活よりも利益を優先してきた。生存権、自由権、所有権などの憲法上の権利を侵害していると主張し、科学的根拠に基づくエネルギー政策を要求する若者たちの声に耳を傾け、今すぐに行動を起こすときだ。しかし、連邦裁判所は若者たちの訴訟を棄却。その際に、たった一人だけ公判に進めるべきだと表明した判事ジョセフィン・スタトンはこう言った──「海が海岸の街をのみ込み、山火事と干ばつが襲う。嵐が大混乱をもたらす。生き残った者は、聞くだろう。なぜ何もしなかったのかと」

2.『キス・ザ・グラウンド: 大地が救う地球の未来』(2020)

農業において耕すという常識が、昨今変わりつつある。温暖化の大きな原因は、化石燃料の使用による温室効果ガスだけではなく、実は土壌を耕すことでも、植物の根や微生物が地中にため込んだ炭素が大量に放出されているという。そして耕すことは土壌侵食の原因のひとつになり、土地の砂漠化をも招いてしまう。そのため、2050年には推定で10億人が砂漠化による難民となると言われている。

そこで世界的に注目されているのが「不耕起栽培」だ。微生物の力を最大限活かし、耕さないでそのまま種をまき農作物を育て、水と二酸化炭素を吸収する健康な土壌を育む。さらに、メタンガスを放出することで知られる牛もまた、実は土壌を回復させる大切な役割を担っているという。こうした家畜を使った対策は、世界の3分の2の地域に応用でき、さらにかかるコストも極めて低い。温暖化対策においては、最新のテクノロジーだけでなく、原点回帰することも実は近道なのかもしれない。土壌を癒すことで、地球を癒すことができる──そんな学びを深め、微生物の力を愛する者にはたまらない作品だ。

3.『ビッグ・リトル・ファーム 理想の暮らしのつくり方』(2020)

本作は、地球は美しくて不思議な場所だということを思い出させてくれる、愛おしい映画だと言えよう。200エーカー(東京ドーム約17個分)もの荒れ果てた農地を買い、本当に体にいい食べ物を育てるために、愛犬とともに郊外へと移り住んだジョンとモリー。苦労しながらも多種多様な植物を育て、ブタやガチョウ、ヒツジなど可能な限りさまざまな動物を農場の構成要員に迎え、自然の営みとも共生していく姿を描く。

害虫や雑草など厄介者とされていた生き物たちも、生態系の中で重要な役割を果たしていること。一つひとつの多様な命が、私たちを豊かにしてくれていると言うこと。そして干ばつに山火事、水害など、こうした自然の脅威からも、自然が守ってくれるということ。自然をじっくり観察し、地球の声に耳を傾けることで、人間にも果たせる役割があるのだと気づかせてくれる感動と希望のストーリー。

4.『その年、地球が変わった』(2020)

パンデミックにより止まった人間活動。それによって、私たちは地球の脅威的なレジリエンスを目撃することとなる。インド北部のパンジャブ州では、大気汚染が大幅に改善したことで200キロ近く離れたヒマラヤ山脈が数十年ぶりに見晴らせるようになり、観光客がいなくなったフロリダの海岸では、ウミガメの産卵成功率が61%に上り過去最高を記録した。船の往来が減り、水中が静かになったことで顕著に豊かとなったクジラやイルカなど海洋生物たちの営み。

日本でもその変化はみられ、鹿せんべいが食べられなくなった奈良の鹿たちは、空き地の草を食べるようになったことで健康状態が改善したという。さらに、60%の縄張りを人間に奪われたアフリカのヒョウは自由に狩りができるようになり、チーターも子育てがしやすくなったことで幼獣の生存率が上昇。動物たちはかつてないほどに自然の恩恵を受けられるようになったと同時に、いかに人間が動物の暮らしと命を奪っていたかも思い知らされることだろう。ナレーションするデヴィッド・アッテンボロー氏の声と映像美に陶酔しながら、自然界について探求できる50分未満の良質ドキュメンタリー。

5.『ザック・エフロンが旅する明日の地球』(2020)

俳優ザック・エフロンの旅番組を観る感覚で観られる本作。環境問題をテーマとした教育的な映画やドキュメンタリーの中でも気軽に観られるのは、おそらくエフロンとウェルネスの専門家ダリン・オリエンの二人が織りなす、明るく楽しげなやりとりが大いに影響しているだろう。アイスランドでは2つの異なる地熱発電所を見学し、その後もフランスやプエルトリコ、アマゾンの熱帯雨林のイキトスなどを訪れ、ウェルビーイングな生活様式について探求していく。

また、世界中をめぐったシーズン1とは変わって、シーズン2では気候変動の影響を受けやすい国であるオーストラリアにフォーカスした8エピソードを展開。先住民のコミュニティを深く掘り下げ、地元の食事や文化、風習を体験しながら保全活動について学ぶなど、シーズン1に比べてより問題と対策を具体的にイメージして観られる内容となっている。

6.『オクトパスの神秘: 海の賢者は語る』(2020)

この映画はただの記録映画ではない。第93回アカデミー賞ドキュメンタリー映画賞を受賞した本作は、映画制作者でダイバーのクレイグ・フォスターとあるタコの種を超えた驚異的な友情をも描いた物語だ。

燃え尽き症候群に陥っていたフォスターは、カメラから距離を置くために海に潜っていた。ある日、偶然1匹のタコに出会う。タコの魅力的な生態に魅了され毎日欠かさず通ううちに、心を通わせ、信頼関係を育み、ときにはタコがフォスターに抱きつくしぐさを見せるまでに。そして1匹のタコの一生を記録した映像とフォスターの言葉は、海の森という巨大な生命体の息遣い、緻密で神秘的な自然の尊さを教えてくれるだけでなく、生き方やメンタルヘルス子育て、人生を生き抜くヒントまでも与えてくれる。

7.『アトランティス』(2019)

戦争は、最大の環境破壊だ。エジプトで開催されたCOP27(第27回気候変動枠組条約締約国会議)の首脳級会合で、ウクライナのゼレンスキー大統領はビデオメッセージを送り、「軍事侵攻が世界的なエネルギー危機を招き多くの国に石炭火力による発電所の再開を余儀なくさせた」と非難し、「平和なくして有効な気候変動対策はない」と強調した。

現在も続くウクライナ侵略戦争を真正面から描き、戦争終結から1年後の2025年を舞台にした映画『アトランティス』(2019)。ヴァレンチン・ヴァシャノヴィチ監督は、戦争がいかに街や大地を破壊し、長期にわたる甚大な被害を及ぼすかを生々しく伝える。石油やガス関連施設、工場などが破壊され、大量の二酸化炭素や有害物質を撒き散らし、水源や大気は急速に汚染されている。埋められた地雷の撤去に数十年かかると言われ、生態系への影響も深刻だ。戦争と環境破壊について改めて考えるのと同時に、自分が無意識に戦争に加担していないか、立ち止まって考えよう。

8.『グレタ ひとりぼっちの挑戦』(2020)

環境活動家グレタ・トゥーンベリの挑戦を追った長編ドキュメンタリー『グレタ ひとりぼっちの挑戦』(2020)は、グレタが2018年8月20日に学校ストライキを開始した日から、2019年9月にニューヨークでの国連気候行動サミットに参加するまでの1年を追う。

スウェーデン・ストックホルムにある国会議事堂前に座り込み、たった一人で始めた気候変動対策を呼びかける運動「Fridays For Future(未来のための金曜日)」は、次第に世界中の若者たちへと広がり、その後の活躍は多くの人が知るところだ。スウェーデン人の監督ネイサン・グロスマンは、これまで誰も知らなかったグレタの素顔を捉え、彼女の考えを正確にヴィヴィッドに伝えることに成功している。彼女の強さや弱さ、葛藤、希望を通して、私たちがこれからどう生きるべきなのかを問いかける。

9.『OUR PLANET 私たちの地球』(2023)

OUR PLANET 私たちの地球』(2019)より。Netflixオリジナルシリーズ独占配信中。Photo: Courtesy of Netflix

Sophie Lanfear / Silverback/Netflix

なぜ自然を守る必要があるのか? このシンプルな問いの根源を正しく理解し納得したい人は、世界的環境保護提唱者であるデイヴィッド・アッテンボローの『OUR PLANET 私たちの地球』(2019)を見るべきだ。全8話からなるNetflixシリーズでは、アフリカのフラミンゴの赤ちゃんが誕生するシーンや、コンゴの低地熱帯雨林のゴリラたちの家族的な生活風景など、神秘的な自然の姿をとらえた映像を盛り込みながら、気温上昇が世界中の野生生物に与える影響を紹介している。

2023年公開されたシーズン2では、気候変動の影響を受けながらも季節の変化にあわせて大移動をする動物たちの姿を追いかける。本作に心打たれた人は、ぜひアッテンボローの前作である『ブループラネットII』(2017)も続けて観ることをオススメする。海洋プラスチックごみと海水温の上昇が、海洋生物を危険にさらしている様子を赤裸々に描いた、環境問題を扱うドキュメンタリーの金字塔的作品だ。

10.『ドント・ルック・アップ』(2021)

ドント・ルック・アップ』(2021)はNetflixにて配信中。Photo: ©Netflix / Courtesy Everett Collection

しつこいようだが、映画という芸術を通して、気候危機の現状をあらゆる角度からオーディエンスに訴えるディカプリオの徹底ぶりに脱帽する。ディカプリオをはじめ、ジェニファー・ローレンスメリル・ストリープケイト・ブランシェットティモシー・シャラメ、マーク・ライランスなど、豪華キャストが出演するアダム・マッケイ監督のSFコメディー超大作は、ブラックユーモアが溢れつつも、世の中の矛盾に鋭く切り込む。

巨大彗星が地球に衝突する可能性を必死に訴える2人の天文学者。だが、情報が氾濫する世界で、誰ひとりとしてその警告に耳を貸そうとせず、事態は思わぬ方向へと転がっていく。そんな話の中に既視感と気まずさを覚えるのは、これまで私たちが気候変動を“見て見ぬふり”をしてきたからだろう。グレタが「科学の声を聞いて」と世界に訴えたように、政治や経済に大転換が求められているように、そして私たち個人がいかに気候変動問題をパーソナルな問題として捉えらるかどうかが問われているように──。観終わった後、本作はオーディエンスに具体的なアクションを促す。

11.『Cowspiracy: サステイナビリティ(持続可能性)の秘密』(2014)

Cowspiracy: サステイナビリティ(持続可能性)の秘密』(2014年)は、Netflixにて配信中。Photo: Alexander Pohl

ヴィーガンになることを選ぶ人は地球規模で爆増しているが、その背景に、気候変動と畜産業との関連があったことは必ずしも明白ではなかった。それを明らかにしたのが、レオナルド・ディカプリオが製作責任者を務めたドキュメンタリー『Cowspiracy: サステイナビリティ(持続可能性)の秘密』(2014)だ。

なぜ誰もこの問題について議論しないのかを強く問う本作は、映画監督のキップ・アンダーセンがメガホンを取り、いくつかの主張を巡る論争を含めて現状をつまびらかにしている。本作は間違いなく、牛肉が環境へ及ぼす影響を人々に意識させるのに大きな役割を果たした記念碑的作品だ。

12.『地球が壊れる前に』(2016)

地球が壊れる前に』(2016年)より。Disney+にて配信中。Photo: JOSE LUIS MAGANA/AFP via Getty Images

『Cowspiracy』から環境問題への警鐘をさらに加速させようと、ディカプリオは2016年に『地球が壊れる前に』をプロデュース。さらに本人が出演することで、広いオーディエンスへの啓蒙活動を展開した。国連ピース・メッセンジャーを務める彼は、2年間を費やし、パーム油産業によるインドネシアの森林破壊からグリーンランドと北極の氷河融解まで、世界中の気候変動の原因と影響をくまなく調査。本作には、その成果が凝縮している。ラストシーンは、2016年のアースデイに開催された国連集会で世界のリーダーたちを前に環境保護の重要性を訴えるレオナルドのスピーチで締めくくられる。

「皆さんが地球最後の希望です。地球を守ってください。さもなければ、私たち、そしてすべての生命が、この地球上から消え去ることになるのです」

13.『不都合な真実』(2006)

不都合な真実』(2006)と『不都合な真実2 放置された地球』(2017)はいずれもAmazon Prime Videoにて配信中。Photo: Paramount Pictures / Entertainment Pictures / ZUMAPRESS.com)

地球温暖化の深刻な状況を初めて世の中に広く知らしめたのが、アル・ゴア元米副大統領のドキュメンタリー映画『不都合な真実』(2006)だ。ゴアは本作を通じて厳然たる事実をありのままに明らかにし、気温の上昇によって洪水や干ばつ、ハリケーン、気候難民の数が増大すると警告した。公開から10数年が経ったいま、彼の懸念はもはや逃れようのない現実になってしまった。気候危機について訴え続ける彼は、2017年に続編『不都合な真実2 放置された地球』を制作。前作に引き続き、地球温暖化の深刻な様相をさらに如実に描き出したとともに、気候変動問題を対処するためのさまざまな取り組みを紹介している。

14.『グリーン・ライ ~エコの嘘~』(2018)

グレタはCOP27に行かないことを表明した際に、「COPは主として、指導者や権力者がさまざまな種類のグリーンウォッシュを使って注目を集めるための機会に利用されている」と批判した。今や「サステナビリティ」を口にしない国や企業はないほどにその言葉は社会に浸透してきたが、同時に、この機運に乗じて環境問題への公共利益を利用し、活動や商品について虚偽的、もしくは誤解を招く恐れのあるマーケティングをする「グリーンウォッシュ」の横行も目立つ。我々消費者が買い物を「投票」と捉える考え方は大切だが、「環境に優しい」「児童労働を無くす」「野生動物を救う」などと謳う商品が、別の視点から見ると気候危機に加担しているかもしれない。

グリーン・ライ 〜エコの嘘〜』(2018)のヴェルナー・ブーテ監督は、グリーンウォッシングの専門家カトリン・ハートマンとともに実態を探る旅に出る。インドネシアのパーム油農園や、ブラジル、ドイツ、アメリカを巡り、業界の実態や痛ましい状況を調べていくと同時に、各地の専門家や活動家なども訪ねる。そのうちの一人が学者のノーム・チョムスキー。ブーテの「私たちはどうグリーン・ライに対処したらいいのでしょうか」という質問に対する、チョムスキーの「価値がある提案は受け入れ、宣伝は拒否しよう」という答えが大いに参考になる。

15. 『ザ・トゥルー・コスト〜ファストファッション 真の代償』(2015)

ザ・トゥルー・コスト〜ファストファッション 真の代償』(2015)より。Photo: Courtesy of True Cost

ドキュメンタリー『ザ・トゥルー・コスト〜ファストファッション 真の代償』(2015)を観れば、ファッション業界と服の生産方法に対する考え方が大きく変わるだろう。

2013年にバングラデシュの商業ビル「ラナ・プラザ」が崩壊し、その建物内に居を構えていた縫製工場の労働者1,134人が犠牲になった。この崩落事故に衝撃を受けた映画監督アンドリュー・モーガンは、バングラデシュ、インド、カンボジアなどの国におけるファストファッションの生産が、環境や人に及ぼす被害の実態を調査しはじめた。ファッション業界には、そのエコシステムの喫緊の変革を訴えるステラ・マッカートニーやリヴィア・ファースといった面々がいるが、本作では、そうした著名環境保護活動家へのインタビューも盛り込まれている。

Text: Mina Oba Editor: Nanami Kobayashi