スウェーデンの環境活動家グレタ・トゥーンベリは、10代の頃に2019年の国連サミットで発言し、すべての人に気候危機をもっと真剣に受け止めるよう訴えた。そして世界的な運動へと広がった「FridaysForFuture」の創設者であるグレタが上梓した『The Climate Book』は、ケイト・ラワース、ナオミ・クライン、ミッツィ・ジョネル・タン、ジョージ・モンビオなど、著名な専門家や作家による気候変動に関するエッセイだけでなく、科学的根拠、人類学の観察、思想的作品等を総合的にまとめたものだ。
私たちには時間がない。いつでも、どこでも、どのようにでも、より積極的に気候変動に取り組む必要がある。サステナビリティ・エディターのジュリエット・キンズマンは、今日から始められる気候変動アクションのアドバイスをグレタの言葉や考えとともに紹介する。
気候変動について自分自身を教育する
「気候危機について自分自身を教育することは、私たちにできる最も重要なことの一つです」 グレタは、ロンドンのサウスバンク・センターで開催された書籍の出版発売記念イベントで、聴衆にそう語った。
本を読む前に、まずはグレタがイベントで行ったスピーチを聞いてみるのがいいかも知れない。そうすることで、感情に訴えるストーリーやグラフ、強い印象を残す写真など、5部構成となっているこの本の内容をより深く理解することができるだろう。
作家のマーガレット・アトウッドは「私たちは多くの知識を持っている。問題が何であるか知っているし、それを解決するために何をしなければならないかも、多かれ少なかれ知っている」と本の中で述べている。
生物の絶滅と人間の因果関係を理解する
「サステナビリティの危機は、情報が伝わらないことの危機なのです」とグレタは言う。棚氷が溶けてしまっていること、生物多様性が喪失していること、そしてファストファッションから環境経済学まで、より多くの人に知ってもらい、意識を高めてもらうために、自身の高い知名度とプラットフォームを利用して、グレタは400ページを超えるこの本を世界に広める。
地球温暖化の原因は、人間がもたらしていることは言うまでもない。私たちが排出する過剰なガスが温室効果を引き起こし、大気中にガスが閉じ込められて地球が危険なレベルまで熱くなっている。それにより、熱波による山火事や過去最悪の干ばつ、豪雨による洪水などの異常気象が引き起こされている。また、氷河が溶けて海面は上昇し、大気中に増えすぎた二酸化炭素を吸った海は酸性化が進み、このままではさらに多くの海洋生物を死に至らせてしまう。私たちの地球の機能は、すべて相互に関連している。だからこそ、肥沃な土壌の喪失、大気汚染、水不足などの懸念は、80億人の私たちに関わる大きな問題なのだ。
より良いトラベラーになるための意識
旅に出るなら、より環境に優しい移動手段を検討しよう。車での移動が必要な場合は電気自動車のカーシェアリングがないかを探し、主に電車、路面電車、バス、フェリーなどの公共交通機関を利用するといいだろう。二酸化炭素の排出量の少ない公共交通機関に助成金を国が支払うことで運賃を抑えることができれば、より多くの人が飛行機ではない移動手段を選ぶようになるだろうと、これまでグレタは各国の政府機関に訴えてきた。また、観光産業が世界の二酸化炭素排出量の約8%を占めていることをグレタは強調し、航空業界の全排出量の50%は世界の富裕層によるものだと指摘する。それだけに、私たちが飛行機に乗ることの重大性をきちんと理解し、使用した際には訪問した国の発展につながるようローカルに還元することを意識しよう。
使い捨てプラスチックに依存しない
私たちがプラスチックに依存することは、私たちの首を絞めていることにもつながっている。マイクロプラスチックによる環境汚染は重大問題であり、私たちの体内にも取り込まれている。さらに、プラスチックの原料が石油であることからも、新たに作るのではなく、今あるものをできる限り再利用する必要がある。「長く使えるものを選ぶ」という消費の仕方に戻ることが、サーキュラーエコノミーを実現する上で重要な鍵だ。一昔前までは、多くの国で古いものを長く愛する文化があったが、いつしか捨ててしまうことにあまり罪悪感を覚えなくなってしまった。ものの生産に費やされる天然資源とエネルギーを減らすためにも、使い捨ての製品の購入をなるべくなくして、どんなものでも寿命を延ばしながら使い続けることを意識しよう。
私たちの手で地球を再生することもできる
森林、湿地帯、サバンナ、サンゴ礁など、生態系を回復するために、自然への配慮はいかなるときも忘れてはならない。ときには地球の再生に貢献するようなエコ活動にも参加するといいだろう。こうした心がけは、結果的に大気中に放出された二酸化炭素の吸収につながってくる。
「私たちは、自然に逆らうのではなく、自然とともに行動しなければならない。私たちが生物界に与えてしまったダメージは大きいが、地球を再生する行為を通して修復することもできるのです」と作家のジョージ・モンビオットは本の中に綴っている。
野生生物の保護につながる旅行プランにしよう
先にも触れているが、すべての生態系は相互に関連しており、地球が機能し続けるためには、すべての歯車がかみ合うことが必要だ。だが、無数の動植物種が絶滅の危機に瀕しており、1つ1つの種が失われることで、私たちすべてを支えている生命の網が破壊される一歩手前まで来ている。例えば、旅行やアクティビティを選ぶ際には、それが生態系に悪影響を及ぼしていないか、また、野生生物保護の収益にもつながっているかは大事なポイントだ。気候変動は種の喪失を加速させ、種の喪失は気候変動を加速させる。この二つの問題を同時に解決していかなければ、私たちの生活だって守ることはできない。2021年5月22日の国際生物多様性の日に公開されたグレタの短編映画「#ForNature」は、強力なリマインダーとなっただろう。
所有するものを減らし、シェアリングを増やす
「私たちは、モノやコトへの貪欲な消費から脱却し、個人主義をやめ、生態系への悪影響を減らすために、より責任ある選択をする必要がある」そう力説するのは、『ドーナツ経済学が世界を救う』の著者で経済学者のケイト・ラワース。電化製品を長く使うための工夫や、不必要な新品の服を買わないこと、短距離のフライトを最小限に抑えることなどを本の中で紹介している。そして何より、所有するものを減らし、シェアリングを増やすことを指南する。
動物由来製品の消費を減らす
「ヴィーガンになることで、すべてを解決できるわけではないかもしれない」とグレタはサウスバンクでの講演で肩をすくめた。しかし、研究者のマイケル・クラークは、肉や乳製品の生産が減れば、農業による排出量が大幅に減り、森林破壊から土地を救うことができる、と本の中で指摘する。一人でも多くの人が動物由来製品の消費を減らすことが、環境にとってベターであることは明白だ。
グリーンウォッシングを疑う
環境保護に対する上部だけの約束や宣伝文句を見抜くグレタは、あまりにも世の中に溢れるグリーンウォッシュや偽りの主張にNOの姿勢を示す。特に彼女は、販促をしながら、サステナブルに消費できるという洗脳は危険だと指摘する。何かを購入する際には、サステナブルに見える箇所だけでなく、より全体を俯瞰してみて判断する必要があるだろう。
環境活動家になろう
「物事を変えるには、すべての人が必要です。何十億人もの活動家が必要なのです」とグレタは言う。デモ行進、ボイコット、ストライキに参加し、社会的不公平や不平等について声を上げ、世の中に問いを投げかけることで、気候変動の唱道者になろう。
From: Condé Nast Traveller
Text: Juliet Kinsman Adaptation: Mina Oba
