自身を肯定的に捉え、ありのままの“私”を愛するセルフラブ。2020年頃から自己肯定感という言葉が広がり始め、世の中においてもセルフラブの意識が一般化しつつあるが、いざ自分に目を向けると、日々の業務に追われ、自身を置き去りにしてしまっている……という人も多いだろう。そこで改めて注目したいのが、朝、夕方、夜という時間軸に分けて取り入れるセルフラブ美容だ。ビューティーは、外見を整えることで自己肯定感が高まるだけでなく、見て、触れて、香って、自身の五感を満たすことで、忘れがちになっていた内なる気持ちにフォーカスするきっかけにもなる。安定したマインドを保つために深く関係する自律神経のバランスを整えるという意味でも、美容は有効なのだ。朝の気だるさを吹き飛ばしてくれるツールや洗顔などで交感神経をオンにし、忙殺された夕方はリフレッシュさせてくれる香りや日中用ミストでひと呼吸、疲れきってしまった夜は、フル回転した体を清涼感あるアイテムでクールダウンして副交感神経を優位にしてから眠りにつく、というように。どうせやらなくてはいけない美容なのだから、その力を上手に借りてセルフラブも実践できる習慣を身につけたい。
AM7:30 キレイを育む、朝美容
その一方で、この言葉が負担に感じるという人もいるだろう。それは一種のブーム化してしまった弊害なのかもしれない。『美容は自尊心の筋トレ』の著者である美容ライターの長田杏奈さんはこう答える。「最近は、自己肯定の意識が他の概念とミックスされ、少しだけ歪んで伝わっている傾向も。私はその点において3つのポイントに注目しました。一つ目は、トキシックポジティビティ。いつも笑顔でご機嫌、とにかく前向きでいればオールOKという思考は、問題を先送りにするだけです。また、“自分がいい子にしていたら自分を愛してあげる”という限定的な愛し方に結びつきやすい。二つ目に、自己責任論。自分を愛しましょうと簡単に言っても、さまざまな背景や生い立ちによってその“種”が少なく、育みづらい人もいます。そういう人に対して、自己肯定ができてないからダメなんだ!とアドバイスするのは非現実的です。三つ目は、資本主義論。セルフラブ=富めるものだけが、堪能できるラグジュアリーな自分へのご褒美ではありません。呼吸を見直す、散歩したり日記をつけるなど日々の習慣の中で、自身にフォーカスすることこそがセルフラブと言えます。私自身はXをやめたことが、ここ最近で一番の変化でした。こういった“歪んでしまった自己肯定論”に惑わされず、自分が居心地よくいられる状況をそれぞれに見つけることが、大切だと考えます」。
セルフラブとは、個人の気質や抱えているテーマ、ライフステージによって変化する。だからこそ、ビューティーにおいても他者と比較するのではなく、自分軸で美しさを捉えてほしい。その前提のもと、長田さんが実践している朝、夕方、夜のセルフラブ美容について尋ねてみた。「朝は眠さの中でも手軽に使えて、むくみやだるさをパッと一掃してくれる血行促進アイテムが効果的。また、ある程度のルーティンを決めてそこになぞらえながら次第に自分自身を整えていくのもいいでしょう。例えば、起きたら窓を開けてベッドメイクをし、ブラッシングや洗顔&保湿をしたら、いつもの朝食をセットする。玄関先では、UVアイテムや香りを纏って出かけるなど……。イプサの研究では、脳内にある気持ちの安定に関わるセロトニン分泌や幸せホルモンといったオキシトシン受容体に関わる部位の活動が、愛着あるスキンケアをセルフタッチで塗布することで、高まると証明されています。ルーティンによって得られる心地よさや安心感が気だるい気持ちを吹き飛ばし、前向きな思考へのスイッチとなります。私は起き抜けにスチーマーで肌を目覚めさせるのが好き。気持ちいいだけでなく、寝ている間の汚れをふやかすことで洗顔の負担も減ります」
話を聞いたのは……
ANNA OSADA
長田杏奈。美容ライター。雑誌やWebで美容に関する記事を数多く執筆。2019年には著書『美容は自尊心の筋トレ』(Pヴァイン)を上梓。雑誌『エトセトラ』(エトセトラブックス)では「私の私による私のための身体」というテーマで責任編集を務めた。
問い合わせ先/アディクション ビューティ 0120-586-683
イプサお客さま窓口 0120-523-543
ウカトーキョーヘッドオフィス 03-5843-0429
花王 0120-165-691
カネボウ化粧品 0120-518-520
シャネル カスタマーケア 0120-525-519
ドランク エレファント お客様窓口 0120-050-529
プラダ ビューティ 03-6911-8440
レインメーカーズ 0120-500-353
Photo: Isac Styled: Yuusuke Ishii Model: Marina Manicurist: Yuka Text: Sachico Maeno Editor: Risa Yamaguchi
※『VOGUE JAPAN』2024年8月号「肌と心に効く最旬自己愛ビューティー」転載記事。
READ MORE