7月7日(日)七夕の日に行われる、東京都知事選挙。2020年7月5日に行われた前回の選挙から約4年が経ち、私たちは新型コロナウイルスや気候変動による異常気象、円安による影響や、進行する都市開発などさまざまなことを経験した。
今回の選挙には、現職で3期目を目指し自民党、公明党、国民民主党、都民ファーストの会の支援を得る小池百合子。立憲民主党、共産党、社民党の支援を受ける参議院議員の蓮舫ほか、石丸伸二や田母神俊雄などが立候補を表明。20日の告示日時点では過去最多の50人以上が立候補をする可能性が報じられた。
低空飛行を続ける投票率
1947年に初めて行われた、東京都知事選挙。それ以来からこれまでで、計21回の選挙が行われてきた。投票率が最高を記録したのは1971年の72%で、平成に入ってからは50〜60%ほどを行き来しており、ときには40%台という半数以下の低い数字に突入してしまうことも。
世代別で見てみると、過去3回の選挙で最も投票率が低いのは21〜24歳(私と同世代…)で、40%にも満たない。最も投票率の高い70〜74歳と比較すると、その割合は常に半分ほど。ただでさえ少子高齢化で若者の人口が少ない今、この投票率の低さでは次の世代の声を政治に届けることが困難になっている。私たちは投票に行くことで、まずは政治に意思を伝える練習をしなければならない。
選挙をクリエイティブに盛り上げる
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そんな状況を打破するような、希望を感じる動きももちろん存在する。選挙に行くことを気軽に呼びかけ、拡散ができるイラストやポスターがソーシャルメディアを中心に投稿されているのだ。
周りの人に送ったり、ポスターとしても飾りやすいポップな雰囲気でありながら、選挙に行くために必要なものや期間などの詳細や、「生活と政治は地続き」といったメッセージがしっかりと込められている。候補選びの前に、投票率の低さ自体が長らくの課題であるからこそ、クリエイティブな方法で政治参加を促し、選挙を盛り上げていくことにはさらなる可能性を感じる。
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神宮外苑の再開発が争点に
過去に『VOGUE』でも取り上げたことのある、神宮外苑再開発。これも今回の選挙の争点となっており、19日に行われ、小池都知事や蓮舫を含めた候補者4人が参加した、日本記者クラブ主催の共同記者会見でも議論に上がった。これまで小池都知事は中心となって、神宮外苑の再開発を積極的に進めてきた。そんななか6月18日に公約を発表した蓮舫は、「神宮外苑の再開発を見直して、大切な緑を守ります」と発表。さらに、「都心の緑を切るような開発は必要なのかと問いたい」「神宮外苑再開発は1度、立ち止まるべきと思っている」と述べ、大きく対抗する形となっている。
神宮外苑再開発には、2023年に亡くなった音楽家の坂本龍一や小説家の村上春樹らも反対の意思を表明し、それに伴う抗議運動も行われた。東京に住むなかで課題だと感じるのが緑との共生、そして日々どこかしらで目にする街の再開発。気候変動で夏の異常な気温上昇が深刻化するなか、特に都心は熱をため込むアスファルトやコンクリートに覆われた地面の増大により、ヒートアイランド現象が起こっている。命を守るための熱中症対策や暑さ対策を行うのはもちろんだが、長期的な解決に向けて自然とどう付き合っていくかを考え直すべきではないのだろうか。
例えば、土や緑地が残っている場所には降った雨水が溜まり、晴れて気温が上昇すると地面や空気の熱を奪いながら蒸発することで温度を下げる。また河川があればその水が蒸発する際に、空気の熱を奪い気温を下げてくれる。
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マイノリティのための政治でいられるか
今、どんな東京に住みたいだろうかと考えてみる。私は緑や土、虫や生き物と共生しながら、安全な水を飲める東京がいい。ほかにも、開発されたビルやチェーン店が軒並みならぶような街よりは、ユニークさを残した個人店が残り続ける場所であってほしい。性別や人種、職種などでの格差をなくし、それによる困窮が起こりづらい仕組みを求めているし、税金を“暮らし”のために使ってほしい。考え出したらいくつも出てくると同時に、当たり前に、その望みは各々がおかれた状況や世代によっても異なってくる。子育て、気候変動、ジェンダー平等、介護、労働環境、財政、医療……、それぞれの暮らしに今必要なトピックについて、身近な人と話してみてもよいかもしれない。
「誰のための政治なのか」それを問うたとき、私は「マイノリティのための政治」であってほしいと願う。声をあげても届きづらい場所にいる個人を政治が支え、街全体が手を差し伸べるような構造が今必要なのではないだろうか。
さらに東京は日本最大の都市として、全国に大きな影響力を持っている。日本のさまざまな発電所で作られた電力の多くを東京で消費しているという事実もその一例だ。国政に影響を与えることだってあるだろう。東京の変化はときに日本全体への変化へとつながる。
「どんな東京に住みたい?」さらには「どんな日本にしたい?」と、自分に問いかけながら、選挙に足を運んでみることが、社会とつながり、社会を変えるアクションになる。期日前投票は6月21日(金)〜7月6日(土)まで約2週間と長いので、日々に追われている人でも投票ができる機会はみつけられるはず。家に届く入場券を忘れても、身分証さえあれば投票はできるので、お出かけのついでに投票所へ足を伸ばしてみてほしい。
Text: Nanami Kobayashi