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Netflixドラマ「アドレセンス」で世間に衝撃を与えた15歳の新星、オーウェン・クーパーがその先に見つめるもの

3月13日(現地時間)に配信が開始され、瞬く間に話題となったイギリスのNetflixドラマ「アドレセンス」。クラスメイトの殺人の罪に問われる、わずか13歳の少年を熱演し、デビュー作とは思えぬ実力と存在感を見せつけた主演のオーウェン・クーパーに、UK版『VOGUE』がインタビュー。
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Photo: Stefan Bertin

Netflixの新ヒット作「アドレセンス」の第1話を観た後、私は息子の寝室に行った。息子はベッドの中で太陽系についての本を読んでいたが、おかまいなしにその横にもぐり込んだ。ドラマでは、1人の少年が気づかぬうちに「マノスフィア(男らしさを追求し、女性を軽視する反フェミニズム主義の男性中心のオンラインコミュニティ)」の最も闇深い部分へ堕ちていく様子が描かれている。その様子に、親である人はおろか、心ある人なら動揺しないわけがない。息子を持つ親としては、弱い立場に追いやられた気がした。自分の子どもを守らなければとも思い、それゆえに観終えると彼のそばに行ったのだ。現代の男らしさとは何か。子どもをどうすれば正しく守れるのか。

本作でブレイクを果たした主演のオーウェン・クーパーは、私のような視聴者の思いをどう受け止め、クリエイティビティについて、どんなことを語ってくれるだろうか。

「誰にでもクリエイティブな一面はあるはずです」とクーパーは言う。とある金曜の夜。滞在先のホテルからクーパーは取材に応じてくれた。「(僕みたいに)演劇のレッスンなどを受けて、自分の限界を押し広げようとする同年代の子はあまりいないです。でも大切なのは、自分で自分がどうなりたいかを決めることです。周りに合わせて、当たり障りのない人間になるのか、それとも自分のやりたいことをやるのか」。ドラマでも、アートはソーシャルメディアの重圧から気を紛らわす術として、それとなく描かれていると感じる。クーパーにそう伝えると、「間違いなくそうですね」と同意する。「(自分を表現することが)不安で、恥ずかしいと感じるかもしれないですが、恥ずかしさを知らない人なんていないんです。恥をかくのを怖がっていたら、今の僕はありません。今の道は、一切開けなかったでしょうね」

心理療法士ブリオニー・アリストンを演じるエリン・ドハーティは、第3話でのクーパーの演技を絶賛。

Netflixシリーズ「アドレセンス」は独占配信中。

イースト・ロンドンの公営住宅団地で育ち、クーパーと同様に労働者階級出身の私の夫は、少年時代にアンナ・シャー劇場に入団した。それも、演技ではなく、スタントを習いたかったからだそうだとクーパーに伝えると、「スタントはぜひやってみたいですね」と応じてくれた。近いうちに、アクション大作での活躍を見られるのだろうか。「トム・クルーズみたいなものはできないと思いますが」と彼は微笑む。「ジェットコースターでさえ怖いのに、ましてや飛行機にぶら下がるなんて。でも、崖から海に飛び込むことくらいは、多分僕にもできると思います」

「アドレセンス」に主演してからというものの、クーパーは俳優として軌道に乗っている。すでに年内にBBCで放送予定のコメディ・シリーズ「Film Club(原題)」に出演しており、現在はエメラルド・フェネル監督映画『嵐が丘』の撮影の真っ只中だ。(クーパー曰く「フィルムクラブ」で主役を務めるエイミー・ルー・ウッドは、『今までで会った中で、おそらく一番面白い人』だそう)。「今週は4つのホテルを転々としました。今泊まっているところが多分一番いいですね。テレビにネットフリックスが入っているし、枕もすごく高級な感じです」

クーパーのことを、若いレオナルド・ディカプリオに例えている人がいると言うと、彼は喜んだ。「レオナルド・ディカプリオが歩んでいるようなキャリアを歩みたいです。ロバート・デ・ニーロにも憧れますね。あとアル・パチーノにも。『タクシードライバー』(1976)『グッドフェローズ』(1990)『ゴッドファーザー』(1972)などが公開されたとき、僕はまだ生まれていませんでしたが、『ウルフ・オブ・ウォールストリート』(2013)、『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)『インセプション』(2010)、『シャッター アイランド』(2010)とかはリアルタイムで知っています。多分レオナルド・ディカプリオが出ている映画で、ハズレ作はないです」

「ジェイミーはごく普通の子どもです。彼の身に起こったことは、誰にでも起こり得ます」

「アドレセンス」での演技が評価され、クーパーはすでに英国アカデミー賞(BAFTA)の有力候補と目されている。

Photo: Stefan Bertin

「アドレセンス」が注目を集めている理由は、その内容だけではない。撮影の技術的な素晴らしさも話題を呼んでいる。約1時間のエピソードはすべてワンカットで撮影されており、まるでドラマがリアルタイムで展開されている臨場感がある。つまり、視聴者に気が休まる暇を一切与えない。軽く参考書1冊分くらいはあるであろうあの膨大な量のセリフを、クーパーは一体どうやって覚えたのだろう。「正直なところ、どうやって覚えたのかいまだに不思議です」とクーパーは明かす。「台本を覚えるための期間は2週間あったんですけれど、毎日自分の部屋にこもって、ただひたすら台本に向き合っていました。マーカーを引いた部分が多すぎて、セリフがほとんど読めませんでした」

ジェイミー・ミラーという少年を演じるにあたって、クーパーは自分なりに役柄のバックストーリーを考えたりしたのだろうか。何が起こったのか、なぜ起こったのか。あの圧倒的な演技をするために、自分なりに仮説を立てたりしたのだろうか。「スティーヴンとジャックは、ジェイミーをごく普通の子どもとして見事に描いてみせました。だってそうじゃないですか。家族も何もかもが普通で、どんな人でも変えてしまう力が、ソーシャルメディアにはあるということが伝わってきます。社会的地位や見た目は関係なく、(ジェイミーの身に起きたことは)誰にでも起こり得るんです。ジェイミーはソーシャルメディア上で嫌がらせを受ける普通の子どもで、それで思考があらぬ方向へどんどん行ってしまったんです。自分や家族、周りの人の人生を永遠に変えてしまう、とんでもなく恐ろしい行為を犯してしまいます」。私たちはスマホとの関わり方、特に若者とスマホの関わり方を考え直すべきなのだろうか。クーパー自身は、その点についてどう思っているのか尋ねてみた。「7歳からスマホを持つ子もいます。僕がスマホを持ち始めたのは、たしか11歳か12歳のときでした。でも、本当にスマホに依存し始めるのは中学にあがってからですね。いつも制服のブレザーに入れているので」

ジェイミーの父親役を演じた共同制作者のスティーヴン・グラハムは、500人以上の応募者の中からクーパーをキャスティング。クーパーの生まれながらの才能は、若き日のジョディ・カマーを彷彿とさせるという。

Netflixシリーズ「アドレセンス」は独占配信中。

子育てのアドバイスなど、金曜の夜にZoomで15歳の少年に求めるようなことではないが、クーパーは紛れもなく、思いやりのある冷静な人だ。そんなわけで、思い切って聞いてみた。「息子を優しい、誰にも危害を加えない人に育てるために、私にできることは何でしょうか?」「幸せになってもらうためには、どうしたらいいのでしょうか」、と。

「常に子どもを監視することはできません」とクーパーは答える。「だから、子どもが大きくなるまで、そして推奨されている利用年齢制限の要件を満たすまではソーシャルメディアを使わせないこと。あとは、ソーシャルメディアをチェックし、子どもが何を見て、どんな人とやり取りしているのかを確認した方がいいです。見るからに、色々な犯罪やトラブルがイギリス全土で起きていますからね。これが、僕からの世の親御さんたちへのアドバイスです」

Text: Nell Frizzell Adaptation: Anzu Kawano
From VOGUE.CO.UK

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