BEAUTY / EXPERT

vol.14 大人のおっぱいの育て方——“美バスト経年変化”を考える【内なるエロスの高め方】

今回のテーマはバスト——つまり“おっぱい”について。以前より“盛る”ことへの意欲が薄れてきた今の時代にフィットした、美バストの条件や哲学を、美容ジャーナリスト歴30余年の麻生綾が考察する。※前回の「テストステロンはエロスを引き上げるのか?」はこちらより。

大人のためのまじめな“チチ活”

1968年のドラマ「IT RAINS IN MY VILLAGE」より。Photo:

Courtesy Everett Collection

最近あなたはチチ活しているだろうか? 父活=パパ活ではなく、乳のほうではあるけれど。今となっては「いったいなんだったんだ?」のコロナ禍。あれはマスク着用によるファンデーション離れのみならず、我々女性の“オッパイの扱い方”についても一大変革期だったのではないだろうか。在宅を余儀なくされたおかげで、日中の格好も通勤着からゆるっとした部屋着へとスイッチ。となると当然その下はせいぜいブラトップ、ともすればノーブラがデフォルト。あのパンデミックは、「胸を盛る」というある種よそいきの行為からも遠ざかるきっかけをつくったように思う。置き配が可能になったため、たとえノーブラでも突然のヤマトさんや佐川さんに背中を丸めておずおずと応対する必要も無くなったしね。

アンジェリーナ・ジョリーのスーパーボディ。映画『Mr.&Mrs. スミス』(2005)より。Photo: All rights reserved.

20thCentFox/Courtesy Everett Collection

それはさておき、まずは私の約50年にわたるチチ事情を開陳したい。かねがね女性のオッパイに対する向き合い方は、サイズなどの遺伝も含めてそのひとの母親に依存すると思っているのだが、その伝でいくと私の環境はかなり劣悪であった。うちの母はもともと貧乳(捉え方によっては美乳・微乳ともいう)だったからなのか、それとも興味がないから萎むに任せたのか、ていうかそもそも昭和初期とはそんなものだったのか、いまとなってはわからないけれど「ブラジャーをつけない」ひとだった。タンスの中にもレトロなものが2枚くらいしか入っていなかったように記憶する。おかげで中学生になって「体育の時間に恥ずかしい」と大騒ぎするまで「必要ない」の一点張りだったし、「使ってないから私のをあげるわよ」とサイズ感無視で件(くだん)の前世紀の遺物を託されたりもした。そんなわけで私のチチは育つべきときにないがしろにされ、大きくなるタイミングを失ってしまった(ような気がする)。そうそう、ごくたまにいらっしゃる「痩せているのに爆乳」の方。あれはきっとそんな“育ち盛り”において、ご本人はもとより指導者(お母上)の意識が我が家とは全然違ったからでは……などと羨ましく思ったりもする。

ケイト・モスの“繊細バスト”が話題となった90年代。1998AWのカルバン・クラインのランウェイより。Photo: Thomas Iannaccone/WWD/Penske Media via Getty Images

WWD

なので本格的なブラジャーデビューはかなり遅く、社会人になってから。出版社に入社し某ハイエンドマガジンの編集部に配属になったおかげで、今度はいきなり最先端の矯正ブラや超・美麗な下着……ブランドでいえば「オーバドゥ」とかいまはなき「シバリス」とか、各種ラグジュアリーの洗礼を雨あられと浴びることになる。極端すぎる振り幅に翻弄されながらもそこでしかと学んだのは、下着で体型は容易に変わるという事実。ゼロ以下からのスタートだったので、しばらくの間、ランジェリーショップに通い詰めての“チチ活”にがっつりとハマっていた。

オッパイとは本来美しい、愛でるべき造形美の存在

マーレン・アデ監督作、映画『ありがとう、トニ・エルドマン』(2016)のワンシーン。Photo:

©Sony Pictures/Courtesy Everett Collection

さて30代に入り、高価な下着を一巡した後は機能性重視のタームに。嫁入りもしたし(一瞬で出てきたが 笑)洗濯機でとっとと洗える扱いやすいブラが、タンス内での勢力を伸ばしていった。「うっかりすると破けそうな総レースよりシンプルなブラキャミ、なんて楽チンなんだろう! もうこれでいいじゃん」のモードだ。もっともそんなことを言っていられたのは、まだ何の細工をしなくても肌や筋肉にハリがあったからかもしれない。

その後、ブラをはじめとする下着に凝ったり凝らなかったりを繰り返すのだが、当然のことながら加齢により体型は変化、ありとあらゆるパーツが重力で下垂していく。そこへもってきて冒頭で述べたようなコロナ禍の到来。オッパイのカジュアル化が加速し、とりわけ同年代においては「ブラトップ一択」という人々も珍しくなくなった。要はなんというか、皆さん自分の胸に興味を失いつつあるのだ。

スイムウエアを着る季節になる度、バストと向き合う人は少なくないはず。映画『スイミング・プール』(2003)より。Photo:

Focus Features/courtesy Everett Collection

でもでも、いまここにあらためて提言したいのだけれど、大前提としてオッパイとは本来美しい、愛でるべき造形美の存在ではなかっただろうか? お椀形も釣鐘タイプもそれぞれに魅力的。若い頃のパツンパツンに張ったデコルテも眩しいが、ハリをなくして平らに下がった胸元もそれなりにいい感じ……いやむしろエロい。年を取ったら取ったなりにきちんと手を入れて、経年の変化を楽しむものであるような気がする。だからいまこそチチ活を!「いまさら誰に見せるわけでもなし」って? 否。何より誰より毎日の自分に披露しているではないか!

ちなみに私のモチベというか励みになっているのは、7、8年前に取材させていただいた某オッパイ番長さんのお話である。チチ活に全くといって興味がなかったお母上にお手入れの方法を教えたところ、当時50代だったお母上のお胸がみるみる成長、還暦を過ぎてからなんと再婚を果たしたという素敵なエピソード。もちろんお母上の旦那さんというか、義理のお父上はオッパイと結婚したわけではないのだろうけれど、それにしても何とも上向きな気分になるお話ではないだろうか。

映画『マチェーテ・キルズ』(2013)より。Photo: Rico Torres

Open Road Films/courtesy Everett Collection

決して昔のように、寄せて上げてガツガツに胸元をつくり上げたいわけではない。そして昨今はワイヤーなしでも綺麗に整い、ほどよく持ち上がるブラジャーが世の中には星の数である。ご参考までに私個人のいま現在の愛用品は、「ブラデリス ニューヨーク」のブラデリス ME パフューミーブラ 23S1というノンワイヤーのブラ。フィッティング済みでサイズがわかっているので、つい先日も追加を2枚ほどポチッてしまった。シンプルかつカシュクール風のデザインは過不足なく、普段使い用として非常にGOOD。脇から背中にかけてのサポートが幅広めなのも、年齢とともにハリを失っ……否、まろやかになった肌に食い込むことなく、チチ&ゆるんだ背肉を綺麗にしまい込んでくれる。ただのブラトップより背筋も伸びる気がして、こうした書きもの仕事にはもってこい。つくづく女性にとってのブラとはオン・オフ切り替えのスイッチであり、またそれ以上にアイデンティティと思うのである。

本日の“エロスな”リコメンド
オッパイはケアで育つ!?「HACCA」のバストケアクリーム

脂肪細胞の分化と増殖を促すハナスゲ根エキス(ボルフィリン)などを配合した、躯調律矯正サロン「白々華(HACCA)」代表・藤井菜保子さん渾身の一作。ボルフィリンはホルモンではなく脂肪に直接働きかける成分だそうなので、バストものにありがちな副作用の心配はないとのこと。ちなみに白々華オリジナルの施術は「神経はじき」という悶絶ものの痛さだが、痛みの嵐に耐えた後は確実に体形が整う。何より藤井さんのスーパーボディが百聞は一見にしかず&論より証拠。HACCA バストケアクリーム “UP” 80g ¥11,000/白々華(03‒6447‒2636)

バストクリーム、しっかりケアしたくても最近あまりコレという製品を見かけないな……と思っていた矢先に面白い製品のご紹介を受けた。嘘か誠か、塗った部分の皮下脂肪の増加が期待できるというクリーム。ゆえに左右のオッパイの脂肪を増やしたい部分に少し多めにつけるのだが、1本使い切ってみたところ、グンとボリュームアップとまではいかないまでも貧乳がそれなりにカタチを成した気が。塗り込む作業(結果的に毎朝晩、チチを全方位的にマッサージ)も功を奏したのだろうけれど、いずれにしろ手をかけることが大事とあらためて。

Profile
麻生綾 美容編集者歴は30年越え。『25ans』『婦人画報』(ハースト婦人画報社)、『VOGUE JAPAN』ビューティー・ディレクター、『etRouge』(日経BP)編集長を経て、現在はビューティーのエディター、ジャーナリスト、エッセイストとして数々のエディトリアル、広告にて執筆やディレクション等を行う。その豊かな発想力を求め、多くのブランドがラブコール。日々移り変わる美容をかわりやすく噛み砕き、時に新たな発想をあたえる美の伝道師的存在。最近のフェイバリット、というかここ数年不動のフェイバリットなのはサリーハンセンのジェルフィニッシュ トップコート“ユニコーン”。虹色に輝く微細なラメが本当に美しく、手持ちのネイルの表情を思わぬ方向に変えてくれる楽しいトップコート。さらりとした質感で塗りやすく、時間がないときはベースコートの上にさっと重ねるだけでもきちんと感のある指先に。

Editor & Text: Aya Aso Editor: Toru Mitani

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