ファッション界もクラブハウスに続々進出!
ソーシャルメディア界の新星、Clubhouse(クラブハウス)は、2020年4月のローンチ以来、既に1,000万回ダウンロードされたと推測されているが、この完全招待制の音声アプリがなかったころが遠い昔のように感じられる。“ルーム”に入り、スペースXとテスラのイーロン・マスクが火星での生活について語るのを聞き、リンジー・ローハンとブロガーのペレス・ヒルトンの会話に耳を傾ける前、毎晩どう過ごしていたのか思い出せないほどだ。2021年、Twitterのトレンドでもクラブハウスの音声チャットは日に日に存在感を増している。
このアプリは、シリコンバレーの起業家ポール・ダヴィソンとGoogle元社員のローハン・セスによって発案された。テスト段階のベータ版の時から、インスタグラムに代わって、ロックダウンで退屈しているユーザーたちをトークや議論で楽しませていた。リスナーは、ホストやゲストスピーカーによって作成されたルームに自由に出入りできる。ドレイクのルームにいた次の瞬間に、ヒットミュージカル『ハミルトン』のオーディションに参加することも可能なのだ(ちなみにこれは実話である)。
ファッションに興味のある人なら、このアプリを業界の情報を得るために役立てることもできる。たとえばミラノを拠点とするブランド、ジ・アティコ(The Attico)は、2月23日にクラブハウスデビューした。設立者のジョージア・トルディーニとジルダ・アンブロジオが、ジェンダーレス・カプセルコレクション「Life at Large」について議論しているのを、自宅のソファでくつろぎながら聞くことができたのだ。
まだクラブハウスを使い慣れていないという新規ユーザーのために、アプリでフォローすべきファッション界のビッグネームを紹介しよう。
1.ナオミ・キャンベル/Naomi Campbell(@naomi.e.c)
ロックダウン中、ナオミ・キャンベルはYouTubeチャンネル(登録者数は47万人以上)でセレブリティとのチャットショー『No Filter』をローンチした。そして2月15日、キャンベルはクラブハウス上でフィンテック・アプリ「クラーナ」(Klarna)の戦略責任者を務めるナタリア・ブルゼジンスキーと、この新しいショーについて話している。近いうちにセレブの仲間たちを引き連れ、正式にクラブハウスに参入してくれるだろう。動向を見守りたい。
>ナオミ・キャンベル! 50歳になったナオミが教える8つの人生訓。
US版『VOGUE』のカバースターであり、プラスサイズモデルとしてボディポジティブの潮流を生み出したパロマ・エルセッサーは、11月にクラブハウスをスタート。この記事を執筆している現時点で、彼女はビューティー起業家のシャーマディーン・リード、モデルのクロエ・ヴェロ、ソーシャルメディア戦略家のカレン・シヴィルなど、限られた人のみをフォローしている。まだルームをホストしたことはないが、黒人のビジネスのためのクラブ「Black Dollar Ecosystem」に入会している。
>「太っていることを、恥じなくていい」──ボディポジティブの立役者、パロマ・エルセッサー。
3. タイラー・ミッチェル/Tyler Mitchell(@tylersphotos)
ミッチェルは著名なアメリカ人写真家で、ファッション業界の改革者でもある。代表作は、若干23歳で撮影した2018年9月のUS版『VOGUE』のビヨンセのカバーだ。最近では、ロエベ(LOEWE)の最新フレグランスキャンペーンを撮影している。ミッチェルは同ブランドのクリエイティブディレクター、ジョナサン・アンダーソンにインスタグラムを介して「ジョナサン、いつもインスピレーションを刺激するコラボレーションをありがとう」と感謝を伝えていた。2人が一緒にルームをホストする日も近いかもしれない。
>「どんな状況下にあっても黒人は自由だ」──タイラー・ミッチェルが美しく多様なイメージに込めたメッセージ。
4. イブラヒム・カマラ/Ib Kamara(@ibamara)
カリスマスタイリストであり、UK版『DAZED』の新編集長に就任したイブ・カマラがクラブハウスでフォローするのは、デザイナーのヴァージル・アブロー、ナイジェリアの写真家スティーブン・タヨ、パイヤー・モス(PIYER MOSS)の設立者カービー・ジーン・レイモンドなど、137人のみだ。カマラは黒人のクィアたちが集まりエンターテインメントや政治、ロックダウン後の暮らしについて語り合うクラブ「BLACK BOX」のメンバーでもある。
5. ベサン・ハーディソン/Bethann Hardison(@bethann)
1980年代からランウェイ上のインクルージョンに貢献し、活動家としても長年の功績があるモデルの重鎮、ハーディソンは、10月にクラブハウスに入会した。ジャスミン・サンダーズや前述のキャンベルなど、大勢のモデルが続々とアプリに参加する中、ファッション界のアイコン的存在であるハーディソンが、70年代のモデルの生活について語るルームをホストしてくれることを願おう。
ジャーナリストのスージー・ロウはすでに業界のベテランだ。彼女が高い発信力を誇るブログ『STYLE BUBBLE』を始めたのはもう15年も前のこと。最近、彼女はファッション業界で活躍するアジア系アメリカ人の友人たちと#StopAsianHateのハッシュタグで投稿し、アメリカで増加傾向にあるアジア人を標的にした暴行に対する反ヘイト運動を支援することを、50万8,000人のインスタグラムフォロワーに表明している。さらにクラブハウスでは、デザイナーのフィリップ・リムやプラバル・グルンも参加している、アジア人ヘイトに反対するグループをフォローしている。
7. ダイエットプラダ/Lindswy Schuyler(@diet_prada)
2014年の開始以来、ダイエットプラダとその設立者、トニー・リウとリンジー・シュイラーは、卓越したユーモアとともにブランドを槍玉にあげるインスタグラム投稿で業界に欠かせない存在となった(フォロワー数は250万人にも上る)。2月21日、2人はソーシャルメディアキャンペーン#StopAsianHateの一環として、ファッション業界で活躍するアジア人が受けた人種差別について打ち明けるルームに参加した。
ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)のメンズウェア・アーティスティック・ディレクター(そして自身のブランド、オフホワイト)で知られるアブローは、躊躇することなく先頭を切ってクラブハウスに足を踏み入れた。アブローは7月にアプリに参加し、様々なルームでアフリカンファッションの未来を議論している。さらにアートや文化について幅広く話し合うクラブ「Culture Club」のメンバーでもある。また、2月10日にイーロン・マスクはカニエ・ウェストと合同でルームをホストするとツイートしたが、アブローもこれに参加する可能性も期待できる。
9. カービー・ジーン・レイモンド/Kerby Jean-Raymond(@kerbito)
パイアー・モス(PYER MOSS)の設立者であり、新たにリーボック(REEBOK)のクリエイティブ・ディレクターに就任したジーン・レイモンドは、2020年8月の参加以来7,400人ものフォロワーを集めており、クラブハウスで注目されるアカウントのひとつだ。ランウェイでの#BLM 運動で一躍脚光を浴びた彼のフォロワーには、映画『グローリー/明日への行進』で、アフリカ系女性監督として初めてアカデミー賞にノミネートされたエイヴァ・デュヴァーネイや、クラブハウスの共同設立者ポール・ダヴィソンといった著名なインフルエンサーも含まれる。
>ファッションの力で世界を変えよう! パイアー・モスのブランド生命を賭けた戦い。
10. テルファー・グローバル/Telfar Global(@telfarglobal)
昨年のインスタグラムでは、米国会議員のアレクサンドリア・オカシオ=コルテスからオプラ・ウィンフリーまで、テルファー・クレメンスのあのパステルカラーのハンドバッグを抱えた人を見ない日はなかった。その人気は、2020年9月にCFDA(アメリカファッションデザイナーズ協議会)からアメリカン・アクセサリーデザイナー・オブ・ザ・イヤーを受賞したほどだ。ミレニアル世代、Z世代から愛されてやまないブランドがクラブハウスに参入したのは当然の成り行きと言えよう。
Text: Eni Subair