『戦場のピアニスト』(2003)以来、およそ20年ぶりに『ブルータリスト』でアカデミー賞主演男優賞を獲得したエイドリアン・ブロディが、史上最長スピーチのギネス記録を樹立した。3月2日(現地時間)、ハリウッドのドルビー・シアターで開催された第97回アカデミー賞の授賞式で、受賞スピーチの45秒という制限時間をオーバーして話し続けた彼は、『ピープル』によると1943年にグリア・ガースンが記録した5分30秒を更新し、5分40秒の新記録を生んだ。
エイドリアンは、持ち時間の終わりを告げる音楽が流れると、「もう終わります。お願いです、どうか、どうか音楽を止めてください」と求め、「初めてではありません。前にも経験があるので大丈夫です。短くまとめます。無茶はしません。約束します」と続けた。そしてアカデミーや映画関係者に感謝を述べてから、自身の境遇に言及。「私は幸運だと思います。俳優とは、とても儚い職業で華やかに見えて、実際にそうであるときもあります。でも、ここに戻ってくるという特権に恵まれた私は、ある視点を得ることができました。キャリアのどんな段階にあろうとも、何を成し遂げようとも、すべてを失う可能性があるのです」
「今夜が特別なのは、愛する仕事を今も続けられていることを自覚し、感謝しているからだと思います。このような賞を受賞することは目的地であり、私が演じた役どころが映画で示したことでもありますが、私にとっては、キャリアにおけるハイライト以上の価値があります。これは再出発のチャンスであり、人生の次の20年も、私がこうした意義深く重要な役どころに見合う俳優であると証明し続けるチャンスであってほしいと願っています」
そして、恋人でマルケッサ(MARCHESA)のデザイナーであるジョージナ・チャップマンに感謝を伝えた。「この賞を私の素晴らしいパートナーとシェアします。彼女は私に自尊心を取り戻させてくれただけでなく、私の価値観や僕自身の価値を取り戻させ、そして彼女の美しい子どもたちであるダーシュとインディアのエネルギーを共有させてくれました。ジェットコースターのようでしたが、君の人生に僕を受け入れてくれてありがとう。可愛い子たち、勝者として僕は家に帰ります」
元夫ハーヴェイ・ワインスタインとの間に2人の娘をもうけている彼女は、アワードシーズンを通じてエイドリアンをサポートしてきた。最後に自身もユダヤ系であるオスカー俳優は、両親を称え、こう締めくくった。「私は今、再び戦争や構造的対立、反ユダヤ主義や人種差別による影響や癒えないトラウマを代弁するために、ここに立っています。より健全で幸せ、そしてより包括的な世界を信じ、祈っています。そして我々は、ヘイトを野放しにしてはいけないと歴史から学ぶことができると信じています。正しいことのために闘いましょう。笑顔を絶やさず、お互いを愛し続けましょう。共に再建しましょう。ありがとう」
Text: Tae Terai